香港・黒社会を生き抜く5人のプロフェッショナルたち。彼らを縛る組織の掟と友情との狭間で、寡黙に任務を遂行する男たちを描き香港・台湾の映画賞を総ナメし、昨年秋の香港映画祭での上映時にも大評判となった“スタイリッユ・ハードボイルド”『ザ・ミッション/非情の掟』が、いよいよ9月1日からロードショー公開が始まる。
 本作のロードショー公開に先立ち、劇中で現役の黒社会の殺し屋ロイを演じ台湾金馬奨最優秀主演男優賞を受賞したフランシス・ン(呉鎮宇)さんが初来日を果たし、8月29日の夜に新宿武蔵野館で開催されたプレミアで舞台挨拶を行った。この日朝から発売された整理券付当日券は、立ち見分も含め早々に売りきれ満員札止めになるなど、初来日にもかかわらず既に香港映画界の実力派としての高い人気をうかがわせた。午後9時30分、『ザ・ミッション〜』のテーマソングが流れ、女性ファンの歓声の中ンさんが舞台に登場した。










 スクリーン前に設置された舞台に立ったフランシス・ンさん、「最初にお詫びをしなければなりません。他の仲間達は残念ながら忙しくてこれなかったため、私が一人でやってきました。出演者・スタッフ一同に代わって皆さんにお礼を申し上げたいと思います」と作品内容と同じく、現場でもそれぞれが親密な信頼関係で結ばれていたことを感じさせる挨拶からスタートした。
 劇場内の通路にまで多くの立ち見が出ている場内は、圧倒的に女性ファンの姿が多い。「びっくりしてるよ。映画の5人はジャッキー(・ロイ)以外は皆それほどハンサムではないからね(笑)。僕の香港でのファンは、トラックの運転手さんとか、刺青している人とか、上半身裸で街の中を歩いてるような男性が多いんだ。だから、こんなに沢山の女性の皆さんに来ていただけて嬉しく思います」と、会場に向かって悪戯っぽい視線を投げかけながら語るンさん。時には会場の一角を見ながら、「あそこに、アンソニー(・ウォン)に似てる人がいるよ(笑)」などと場内を沸かせる。
 本作は、『ロンゲスト・ナイト』などダークな犯罪映画を撮っているジョニー・トー監督作品だが、寡黙な男のドラマでありながらこれまでの作品とは一味違うものになっている。「監督が私達に求めていたものも変っていましたね。この作品自体は脚本がなく、監督がストーリを説明し、それに基づき僕たちが理解したことをアドリブを交えつつリハーサルを行い、それを見て取捨選択を経て撮影したんだ。こういう撮り方は、監督も僕たちも初めてでした。トー監督の演出現場をふりかえって語るンさん。男気溢れる男優5人の現場であったにも関わらず、「女性5人の現場よりもうるさかった(笑)」楽しい現場だったようだ。
 舞台挨拶の最中も、随所に茶目っ気を覗かせるンさんに、会場の女性ファンからは、「可愛い〜」の嬌声が度々上がる。日本語の“可愛い”の意味が判るか尋ねられたンさんは、首を切る仕草をしてせて「ビンゴ?」。説明を受けたンさん、「自分が可愛いと思ったことは、これまで一度もなかったよ。よく言われるのは、いやらしいとかずる賢いとか(笑)。でも、皆さんありがとうございます」とちょっと照れながら答える。その姿に、ファンの方々の声援は増すばかり。
 今後も、アクション、コメディなど数作品の出演が決まっているというンさん。企画中のものには、『ザ・ミッション〜』ホスト篇!?などもあるとか。御本人いわく「他の4人が忙しいから、しばらくは『ザ・ミッション〜』のプロモで各地を回っているかも」と会場を笑わせてくれたが、今後もその活躍がますます楽しみだ。舞台挨拶の締めの花束贈呈でも、プレゼンターにお礼のキスを返すンさんに、ファンからの嬌声も最高潮。そんな盛りあがりのまま、作品の上映がスタートした。

 なお、『ザ・ミッション/非情の掟』は9月1日よりキネカ大森、シネマカリテにて同時ロードショー公開される。なお、作品中、ンさんが観て欲しい所は、「全部観て欲しいですが、特にと言えば私達全員が出ていないレストラン・オーナー殺害場面。作品を観てびっくりした」とのこと。そのあたり注目してみよう。

執筆者

宮田晴夫

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