時を越えた無線によるピュアな恋愛物語として、韓国で2000年の観客動員数第4位に輝く大ヒットになった『リメンバー・ミー』が、日本でもこの秋シネマスクエアとうきゅうにてロードショー公開となる。またこの作品への共感は公開前から国境を超え、日本の映画人の手による、邦画としてのリメイク作品『時の香り〜リメンバー・ミー〜』が年内公開を目指して製作がスタートした。
 7月の30日には、『リメンバー・ミー』でソウンを演じた主演女優のキム・ハヌルさんが来日し来日記者会見が行われるとともに、併せて山川直人監督をはじめ吹石一恵さんら主要キャストが出席して『時の香り〜リメンバー・ミー〜』の製作発表記者会見も開催され、共に透明感溢れる日韓それぞれのヒロインが顔を揃えた。







 『リメンバー・ミー』で1979年に生きる女子大生ユン・ソウンを演じたキム・ハヌルさんは、78年生まれの22歳。淡いピンクのブラウス姿が、この作品と同様のピュアで清楚な感じを振りまいている。日本の印象を「皆さんとても親切で、街並みがとても清潔です」と語るハヌルさんは、今回の来日が4度目の訪日とのことだ。

Q.自分の作品がリメイクされることを、どう思いますか?

——とても名誉なことだと思います。先程日本版の俳優の方たちにお会いしましたが、本当にいい作品ができればいいと思います。また、リメイク版が作られるというのは、日本での反響がよかったものだと理解しています。

Q.作品の見所を教えてください。

——全ての場面が素敵だと思いますが、最後にインとソウンが40代で出会うシーンが、私にはいろいろと感慨深かったです。

Q.これまで、ハヌルさんが出演されてきた『バイ・ジュン』『ドクターK』では、どちらかというと危険な感じの少女役でしたが、今回は清純な女性役でイメージが変っています。今回の役柄についてシナリオを読んでで感じられたことはありますか?また実際に演じるに当たって今までより演じやすかったか、演じにくかったですか?

——シナリオを読んで大変に素敵な話しだと思いましたし、確かにこれまでの2本の作品とは違うタイプの女性ですが、むしろ今の自分に近いタイプだと思えましたし、元々自分が持っている部分に、なんらかの付加価値を加えられる感じがしました。

Q.79年の女性を演じられていますが、どのような点に注意して役作りをされましたか?

——外見に関しては79年の女性をつくることを心がけましたが、内面的な部分に関しては79年のソウンも、今の私達もそれほど変らないと考え、特に意識しませんでした。








Q.共演のユ・ジテさんについて教えてください。

——彼は、『アタック・ザ・ガス・ステーション』で日本でも知名度が高くなりつつあるかと思いますが、彼自身はこの作品の中のインのようなタイプの方で、誠実であり映画に対して非常に深い熱意を持っています。映画を愛しているんです。

Q.日本の俳優でお好きな方、お好きな作品などありましたら教えてください。

——『Love Letter』、『四月物語』という作品と、それぞれに出演されていたの中山美穂さん、松たか子さんが好きです。男性の俳優さんに関しては、未だ日本の男性が主役の作品をあまり観ていませんので、よく存じ上げません。

Q.作品がヒットして周りで変ったことはありますか?また、この作品に出演されて心境の変化などはありましたか?

——特に大きな変化はないですが、ヒットしたということで沢山の方が見てくださったということは意識しています。この作品に出演してからは、私の知らない世代に関して関心が持てるようになりました。また、さっきこちらで流れた予告編を観て、流れる音楽を聴いていても、また気持ちに来るものを感じました。この作品を通じて、自分の感受性が深く鋭くなったように思います。

Q.これから作品を観る日本のファンの方にメッセージをお願いします。

——今、日本の夏はとても暑いですが、この夏が過ぎた頃に『リメンバー・ミー』が公開されます。今のような暑さじゃなく、心の中に染み入る温かさを感じてくだされば幸いですし、同時にフレッシュなもの、心の奥に広がっていくようなもの、そういう感じを感じてくださればと思います。

 なお、『TOMORROW』などで知られるシンガーソングライターの岡本真夜さんもこの作品のピュアな世界観に共感した一人で、日本公開時用のイメージ・ソングを書き下ろすことが決定したそうだ。現在製作中で、8月下旬から劇場の予告編でも流れる予定とのことで、映画と同様こちらも楽しみにしたい。オリジナル作品となる韓国版『リメンバー・ミー』は、今秋シネマスクエアとうきゅうにて公開予定だ。









 引き続き開催された『時の香り〜リメンバー・ミー〜』の製作発表記者会見には、山川直人監督、ヒロイン百合役の吹石一恵さん、雄二役の斎藤工さん、美樹役の北川弘美さん、香取役の山中聡さん、そして製作・脚本の吉田啓さんが出席した。「韓国版を見てすごい映画だと思い、闘志が涌いてくるというかやる気にさせられました」という山川監督の言葉を皮切りに、出演者の皆さんがそれぞれ一言づつ挨拶を行ったのに続き、製作の吉田さんが企画意図について説明した。『リメンバー・ミー』という素敵な作品を広く日本で広める方法として、また15年前に『ビリー・ザ・キッドの新しい夜明け』を監督した山川監督と再び一緒に仕事をする念願がかなった作品でもあるのが『時の香り〜リメンバー・ミー〜』で、この作品から大きく育っていった新人たちが参加した作品として語り継がれる、さしずめ日本版『セント・エルモス・ファイア』のような作品を目指すという。

Q.山川監督に、この作品はどのような作品にしたいですか?

山川監督——僕自身、韓国版を観てすごく泣けてきたし、第一にまず泣ける映画、ジーンと来る映画にしたいと思います。昨日もリハーサル中から泣いちゃう気分になってしまったし(笑)

Q.俳優の皆さんに、どのような作品になると思いますか?また、リハーサルをされての手応えはどうですか?

吹石さん——私なりの『リメンバー・ミー』にしたいなと思ってますので、韓国版は未だ観ていません。撮影が終わったらすぐに観てみようと思っているんですが。叶わない思いがもどかしくて胸が締め付けられるような映画だと思います。

斎藤さん——僕は試写を拝見させていただいたんですが、ピュアないい映画だなァと感じました。79年と01年の時空を超えたストーリーなんですが、この20年間いろいろなものが変っていて、便利になるに連れ人間の温かさみたいなものが失われていくような気がします。そんななかで、この作品に出てくる無線機は相手の存在をしっかり感じながらキャッチボールする、人間くさいいいアイテムだと思いました。僕の演じる役には僕自身との共通点が結構ありまして、斎藤工が出せたらと思います。

北川さん——私も未だ韓国版は観てないんですが、台本を読んだ時に切なさとかが読めてなかったというのが現状なので、私の場合先に観た方がいいのかなぁ…とちょっと迷ってます。作品の切ない部分を生かすために、2001年を生きる元気な女の子でありたいなと思って、もうちょっと勉強しようと思います。

山中さん——昨日のリハーサルは顔合わせのような感じでした。今日も監督と話したんですけど、色々な種類の演技を監督とやってみてチョイスしていこうという感じのリハーサルでした。未だちょっとクランク・インまで時間があるので、皆さんと話していいものにしていけたらなと思います。









Q.キャスティングに関してオリジナル版を意識されたのでしょうか?

吉田さん——確かにキャスティングの部分で韓国版のイメージを踏襲しました。でも、その中で監督と話しをしていくうちに、オリジナルに負けないくらいオリジナルである方向性が出ています。この作品は、監督、他のプロデューサーそして他のスタッフも含め、皆で作っていく手作りの感覚で作っていまして、キャスティング一つでも、助監督の方から皆で集まって決めています。キム・ハヌルさんと共通する透明感が感じられる吹石さん、弾けたピンポン玉のようなキャラクターをと思っていた美樹役の北川さん、彼のナイーブさが優二役にぴったりの斎藤君、そして若い俳優の中でオフビートな感じが出せる貴重な存在の山中君、それぞれ得難い出会いだったと思います。

Q.吹石さんに、韓国版をご覧になられていないとのことですが、どのように演じていきたいと思われていますか。また、韓国版と同じ役を演じるということのプレッシャーなどはありませんか?

吹石さん——私は79年を生きる女の子役なので、今から見るとちょっと古風かなと思うような所を出しつつ、でも今とのギャップを感じさせないような女の子を活き活きと演じられればと思います。オリジナル版は、観てしまうとどうしても心のどこかで意識してしまうと思いますので、今から撮影が終わって韓国版を観るのを非常に楽しみにしています。韓国版は韓国版、日本版は日本版として楽しめるようになっていれば成功かなと思います。

Q.これから役作りで準備しようと思っていることなどお聞かせ下さい。

吹石さん——79年という時代について勉強しようかなと思っています。

斎藤さん——僕は現代の若者で共通点もあるので、後は思いきりやるだけだと思います。

北川さん——元気な子か、ちょっとつっぱったクールな子でいくか、どちらにしようか悩んでいます。

山中さん——僕はちょっとおっちょこちょいな所があるので、それは出さずにクールで素敵な先輩にしようと、監督とも話しました。

山川監督——それぞれに色々と迷いながら、思いきって演じてもらえればいいと思っています。

 なお、日本版リメイクとなる『時の香り〜リメンバー・ミー〜』は、8月よりその撮影が本格的にスタートし、年内には公開となる予定だ。

執筆者

宮田晴夫

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作品紹介『リメンバー・ミー』