映画ジャーナリストの大高宏雄ほか、映画界のうるさがた(!?)が選出する日本映画の裏ベストテン「第10回日本映画プロフェッショナル大賞」の発表・授賞式が14日、池袋の新文芸坐で行われました。今年の受賞者は以下の9人。新人奨励賞:三輪ひとみ、伊勢谷友介、新人監督賞:緒方明、特別賞:沖浦啓之、監督賞:阪本順治、主演男優賞:千原浩史、主演女優賞:田中麗奈、作品賞:黒沢清、ムービー・キング・オブ90‘S:三池崇史。毎年のことながらまたまたニクイ選考だったようで…。受賞者のうち、千原さんと三池さんは残念ながら欠席となりましたが、代理人がまた豪華。黒沢監督には花束贈呈にわざわざ“あの”お方も駆けつけてくれました。







新人奨励賞を受賞したのは「発狂する唇」の三輪ひとみと「金髪の草原」の伊勢谷友介。「三輪さんの不安げな表情は『青春残酷物語』の桑名みゆきを思い起こさせる」と語るのは進行を務めた大谷宏雄。当の三輪ひとみは「脚本を読んだ時は絶対無理だと思いました。何故って映像でもちょっと卑猥なんですけど文章で読むともっと卑猥だったんですよ(笑)」。「金髪の草原」で自分を20歳だと思いこむ80歳の老人を演じた伊勢谷。難しい役を軽やかに演じた手腕に評価があがったのですが…。「おじいちゃん子だったんですよ(笑)。監督から下手でもいいって言われてたのでそんなに努力はしなかったんですけど」。将来的なビジョン、目標とする俳優の問いに「うーん、ない(笑)。あんまり映画観ないんです」とさらり。

新人監督賞には「独立少年合唱団」でデビューした緒方明。新人とはいえ、ドキュメンタリー番組など業界では演出センスに定評があるベテラン。十数年、現実と向き合う作業に追われつつ、「阪本(順治)とかね、松岡(錠二)とかね、色んな監督がデビューするのを眩しく見てたってのはありますね」。脚本家と2人、企画を練った本編は仙頭武則プロデューサーに見初められ…。気になる次作は?「ドキュメンタリーをやってきたので“日本人とはなんなのか?”という点に興味が行くんですよ。今後もそういう作品を撮っていきたい」と語ってくれました。
特別賞は沖浦啓之監督の「人狼」。緻密な映像設計とノスタルジアを呼び起こすティストとを絶賛された同作は舞台設定が30年代。「自分としては記憶すらしていないので掴みにくかったんですが、調べていくうちに愛着が湧いた。知ってる人は懐かしい、知らない人には面白い、というのを目指しました」。
“的確な演出力で俳優たちを生き生きさせる手腕に長けた”阪本順治は「顔」で監督賞を受賞。昨年来、日本アカデミーほか、数々の賞を総ナメにしてきただけに「日プロってひねくれた選考委員が多いじゃないですか(笑)。だから呼ばれるとは思ってもみなかったんですけど…」。俳優を設定しないと脚本は書けないと言う阪本監督。次作は「自分の中に降りていくような映画ばかりだったので…社会性のあるものを撮ってみようと思ってます」。






主演男優賞は「HYSTERIC」の千原浩史なるも、入院中のため欠席。代理に監督の瀬々敬久が出席。「キャスティングの前に彼のライブを見に行ったんですけど笑いの中にリリカルなセンスがあってですね。かっこいいとは思わなかったけど(笑)、ああいうヤツ好きなもんで」とコメント。主演女優賞は「はつ恋」の田中麗奈。「私自身、大好きな作品なんで嬉しいです」。大高宏雄いわく“スクリーンになると別の輝きを出す”女優。最高の賛美と取れる評価ですが彼女自身は「うーん….。自分ではよくわからないんですけど。どういう場面で自分が変わっていくのか、いろんなことにチャレンジしたいですね」。
作品賞は「カリスマ」の黒沢清監督。本編の脚本は10年以上前、サンダンスで賞を取った時に書いたもの。「誤算だったのは実現する直前に“カリスマ美容師”が流行ってしまったこと(笑)」。受賞に付き、なんと主演の役所広司さんが花束贈呈に。青山真治監督と黒沢監督との違いを聞かれて、「青山さんは音楽をイメージしながら撮っている気がします。…黒沢さんは音楽というより、沈黙をイメージしてるような」。これには監督も思わずうなづいていたのでした。ちなみに黒沢監督は10周年特別賞ムービーキング・オブ90‘Sも代表受賞。90年代に活躍した同賞・団体編では立教セントポール・プロダクションは言わずと知れた監督の母校、立教大学の映研なのでした。
同賞の個人受賞は三池崇史監督。京都で本格ミュージカルに取り組んでいる監督は会場に来られなかったものの、代理は大杉漣とまた豪華。託されたメッセージには「身に余る受賞で感激。しかも、代理を大杉さんに務めてもらえるという喜びで打ち震えております」と三池節を感じさせる文面でした。大杉漣いわく「僕は現場で余計なことばかりやってしまう俳優ですが(笑)、三池監督はそれ以上のことを考える監督ですね」。

執筆者

寺島まり子

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