「昨日は失礼致しました。申し訳ございませんでした」。北野武、中野サンプラザで平謝りか!?これは12月7日に行われた『BROTHER』プレミア上映でのひとコマ。最新作を記念して会場では2日かけてのスペシャルイベントを開催していました。ちなみに“昨日”とはライブの日。ビートたけしバンドほか、最新作に縁の深い3バンドの熱演ぶりに観客は圧倒。当の本人は、1日置いて何やら照れくさくなったようで…。舞台挨拶では監督ほか、出演者のオマー・エプス、真木蔵人、大杉漣、加藤雅也、石橋凌、衣装デザイナーの山本耀司、音楽の久石譲が登場。客席には内田裕也ら著名人らの姿もあり、鑑賞後のコメントも付記させて頂きました。





「外国に行って撮った作品だからはじめは心配だったけれど、スタッフ、キャストともよく頑張ってくれた。自分としても気に入った作品に仕上がった」(北野武監督)。舞台挨拶に立った8人の男性は皆が黒装束。トップスに“ちらり赤”の加藤雅也、大杉漣両名も目立っていたものの、足元をイエローで決めた山本耀司はさすがにセンセイの粋。北野作品での衣装デザインを巨匠はこう語ります。「男がこんなにセクシーでかっこいい映画ですからね、服は前面に出ないように、出ないようにガマンしました。それこそ上着丈1センチでも過ぎることのないようにね。私がやったのは細かくて地味な仕事です(笑)」。もう一人の欠かせないスタッフは北野作品6度目の久石譲。「今までピアノとストリングスを中心にしてきましたが、今回は初のフルオーケストラに挑戦しました。ブラスなど硬質な音感を狙ってね。主人公の孤独と叙情を出したかった」。
 北野作品に馴染みのキャストも多いのです。『HANA‐BI』以来の仕事となる大杉漣は「北野組に参加するってことは緊張するんですが、擬似家族みたいなところもありまして…。帰ってきたって気がするんです」。石橋凌は『キッズリターン』にも出演。「予定調和で終わらないから監督の現場は楽しい。ライブ感があり、一瞬一瞬発展していくような感じです」とコメント。加藤雅也は劇中、石橋凌のボス役で登場。“幸せ”の言葉まで使って初参加の喜びを顕わにしますが「凌さんの方がホントは年上なのに台詞の上ではえらそーな口聞いてました。スミマセン」。



真木蔵人はビートたけし演じる山本の弟を好演。本作品で「自分と同じ20代のジェネレーションを劇場に向かわせたいですね」。そして、監督も絶賛したオマー・エプスは「『HANA‐BI』、『ソナチネ』を観て面白い監督がいると思いました。実際、すごいエクスペリエンスになった」。一年前の製作発表で“歴史を作る!”と宣言したオマー。「実際に作ったと思います。これから作品を観ていただければわかるかと思いますが」。
挨拶最後で、マイクは再び北野監督に。“アメリカでの撮影中のエピソードなどございませんか?”と司会者に促され、前へ進んだものの「なんにも、ないです」。会場中の拍手を聞いた司会者、“最後に、北野武ではなく、ビートたけしとしてメッセージをお願いします”。ビートたけしはなんと言ったか。一言、「コマネチ!!」。





おまけ
『BROTHER』上映終了後、著名人のコメントをキャッチ。本作は2001年新春第2弾全国松竹系でロードショーとなります。まだ、観ていない殆どの方、しばしお待ちを!!

内田裕也「良かったよ。でも、今、観終わったばかりだからね。すげー良かったって言ってもインチキくさいし(笑)。なんにせよ、北野作品とは一生付き合うつもりでいるんだ。彼に対する想いは尊敬とジェラシーだろうな」。
安岡力也「普通見せないだろうなって言うシーンもすごいリアルに撮ってたよね」。

トータス松本(ウルフルズ)「良かったですよ。僕、ファンなもんで冷静な評価はできないんですけど(笑)。観終わった直後なので、まだ言葉がまとまらないし。でも、なんていったらいいのかわかんないけど、そういうタイプの映画が一番ほんとは心に残るんじゃないですかね」。

佐伯日菜子「男の人たちばかりの映画なんで、われわれ女の子は羨ましいな、と。BROTHERという言葉の重みを感じました。たけしさんはもう、普通の俳優では出せない存在感がありますよね。あと、寺島進さんの緊張した感じの表情とか、そういう微妙な演技が素晴らしいと思いました」。
(撮影/中野昭次)

執筆者

寺島まりこ