今年で10年を迎えるシネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)。
2004年度にスタートし、映画制作を通して数々の映像制作者の人材発掘を行ってきた。劇映画企画を全国から募集し、助成金や制作協力という形でバックアップを行っている。

 ゴールは作品の「完成」ではなく「上映」であるという観点で「CO2上映展」開催し、2011年度からは【大阪アジアン映画祭】の【インディ・フォーラム部門】での上映というより多くの観客に作品を届ける形に発展を遂げて来た。長期的な視点として2011年度からは、映像制作スタッフ育成のため実践的なワークショップを定期的に開催している。
完成作品の権利が制作者のものであることも大きな特徴である。その後の劇場公開や国内外の映画祭出品など自由な展開が可能となっている。

 一方で、企画募集から上映まで本年度は約9ヶ月という短いスケジュールやバックアップ体制など、運営的な課題も毎回意見が上がっている。

 今年の【大阪アジアン映画祭/インディ・フォーラム部門】の上映に向けて、助成監督にCO2に参加しての感想や意見、作品の見所などを伺った。












——それではまず、CO2に参加しての感想を企画・脚本の段階からお聞かせください。

草野:私の場合、企画をプロットへと練り上げていく作業でつまずいて。でも、そこでいろんな人の意見を聞いて、話が思わぬ方向に転がっていったのでよかったと思います。今回、プロットは初めて完全に第三者に上げてもらい、それを基に話し合いながらストーリーを固めるというやり方でした。

——プロットを組み立てる時点でつまずいた点はどんなところですか?

草野:プロットを進めていく際に、相談に乗ってもらっていた方と、意見が分かれるところがあって難しかったですね。キャラクターの欲望を重視しようとする意見に対して、私自身はもっとグレーなところがある方が真実味を帯びるんじゃないかと思っていて。

 脚本で高橋知由さんに入ってもらうのは、元々私自身が提案したことです。相談に乗ってもらっていた方々とプロットを固めるために何度も話し合いはしましたが、スケジュールのリミットがあったので、固まる前の状態で高橋さんに入ってもらいました。高橋さんが私の意図を上手く汲んでくれて、そこからプロット、そして脚本を書き上げてくれたという流れです。第三者が入ったことでいい方向に進んだ気がします。

——撮影の中で上手く行った点はどんなところですか?

草野:自分が何を面白くてやっているのか見えなくなってきた時期があったんですけど、自分がやりたいことを一旦整理して。富岡事務局長と高橋さんと交えて話し合った時に、“ここが面白くて、ここが楽しめる”というポイントを出せたので、モチベーションを上手く戻せたというか。見失っていたものが戻ってきた感じがしました。

——監督する上で気をつけようと思っていたことはありますか?

草野:プランは特になかったんですけど、頑固にならなようにしようって思ってました。“人の話をちゃんと聞いて、且つわがままであろう”と思っていました。
普段の生活では人の目や時間を気にしてしまう方なので、気にしないでとにかく作品のことを考えるようにしようと。やってみると思った以上にワガママになれましたね(笑)。

——CO2に参加してプロジェクトそのものの課題は何か感じましたか?

草野:制作過程は親身になってもらって今も頼りにしているんですけど、宣伝についてのノウハウをもっと同時に学べたらいいなと思いました。劇場公開のこともそうですが、私が東京の人間で大阪アジアン映画祭で上映するに当たって、どう宣伝して行こうというのが真っ白だったので、そういう指導が何かあればなと思いました。

——いよいよ上映ですが作品の見所を教えてください。

草野:2人の女性が核になっていて、すごく小さな不安や孤独が、場所が変わることでどう変化していって、2人の間で孤独や不安がどう交わるか?というところを見て欲しいと思います。その空間がどういう場所なのか、頭の片隅に置いて観てもらえると嬉しいです。

——この作品を撮ってみて“映画を撮る”ことに対して考え方が変わったところはありますか?

草野:元々、確固たる自分を持って生きているとか、そのために映画を撮っているというのはなくて、私の場合は“映画って主張があって撮るものではない”と確信が持てました。

 現在の主流では映画が自己表現なものになっていますが、私の中で映画は、自己表現の手段や私を主張するための道具ではなくて、それでいいんだなという実感が得られました。

 色々な人の手を借りて、1人じゃ撮れないものをCO2で撮ったこともありますし、内容も社会性がある訳ではなく、普通の人たちの生活の延長みたいな話ですが、それでも映画はいいんだなと思いました。

★高橋知由・・・『不気味なものの肌に触れる』(監督:濱口竜介)などで注目される若手脚本家

【大阪アジアン映画祭/上映予定】
●3/12(水)18:50 シネ・ヌーヴォ/ゲスト登壇
●3/14(金)14:00 プラネット・スタジオ・プラス・ワン/ゲスト登壇
●3/15(土)19:00 プラネット・スタジオ・プラス・ワン/ゲスト登壇
●3/16(日)16:30 プラネット・スタジオ・プラス・ワン/ゲスト登壇

執筆者

デューイ松田

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