『マーターズ』の悪魔的天才、パスカル・ロジェ監督。
凄まじい激痛演出で極限の恐怖世界を創造した『マーターズ』で、一躍フレンチホラーの旗手となった彼が、アメリカ・カナダのバックアップを得て遂に海外に進出。シナリオ執筆前にリサーチの一環として、数々の難事件捜査に携わったFBIの友人に助言を求め、全身全霊でストーリーを練り上げて『マーターズ』を遥かに凌ぐ“新たな可能性”を秘めた未曾有の衝撃作を完成させた。

パスカル・ロジェ監督に作品創りについて聞いてみた。

$red −−どことなくダリオ・アルジェント風でもあり、ゴアなシーンも少なく前作とは違う題材にしたのは? $
今作も何処作品でも、ゴアなシーンは、ツールの一つでしかなく、それを見せることが目的ではなく今作では、暴力や血が無かったかもしれませんが、バイオレンスという意味では違う言語であったかとおもいます。





−−今回も前作と共通していると言っていいのかわかりませんが、前半と後半とでは、演出のトーンを変えたのは既存のホラー、サスペンス映画と違いを作ったのでしょうか?

意図的に前半と後半のトーンを分けているわけではありません。
アメリカ映画によくある、料理のレシピのように、幾つかの素材を組み合わせて作っているようなスタイルではなく、自分は、ありえないような組み合わせて料理をしてみたいというスタイルで作ってみたくなります。

−−予測できない展開は面白かったです。
昨今の傾向なのですが、かなり早い時期からインターネットで予告編が流れ、ブログなどでも作品の8割くらいの情報が入手できる状態だとおもいます。中には見にいかなくても結末がわかってしまう作品もあるとおもいます。
観客は、予想がわかっていて、結末がわかっていてもお金を払って見に来てくれるわけで、私はそれを裏切りたいんです。
商業的にはかなり賭けになっているかもしれませんが、私は映画好きで映画マニアでそんな思っているような結末の分かるような映画は見たいないです。
フランスでのマスコミ関係の試写でも、一部からは、予定調和の結末ではないということで人気が出ないんじゃないの?なども言われたこともあります。
しかし、今フランスでは公開されて大ヒットになっているということで、いい意味にで観客も予想を裏切られることを期待していたのではないかと思っています。
一部では、予定調和の結末ではない、レシピ通りの展開ではないということで、監督の作品は見ないという観客もいます。それは、しょうがないことだと受け止めています。

−−実際の事件がきっかけでオリジナリティ追求に苦労した点は?
唯一の事実は冒頭に登場している毎年アメリカでは、なんらかの理由で子供が消えているという下りです。これがFBIが発表している数字があります。
映画の冒頭に引用することは、とてもいいんじゃないかと、その1,000人の子どもたちは、あとたかもなく痕跡すらなく消えているので、探していますという掲示を見せることで、自分でも見ていて不信感、不安感を持ちました。しかし、現実には見つかっていないわけで、自分は映画の中で、観客が予想もしない結末を見せてみようと思い、ある意味の答えを用意してみました。

−−キャストに「テキサス・チェーンソー」ジェシカ・ビール、『Xファイル』ウィリアム・B・デイビスの起用のきっかけは?
ジェシカ・ビールに関しては素敵な女優さんで、「テキサス・チェーンソー」のリメイク版における彼女の演技やその中における彼女のカリスマ性に圧倒されてしまいました。自分が考えるホラー映画は、セリフの多いほかの映画に比べて演じるのは難しいと考えています。ホラー映画は日常の動きの中での演技になるので、家の中でソファに座る、部屋をあるくなどひとつをとっても、彼女の演技には視覚的スタイルが素晴らしく思えます。きっとどんな素晴らしい脚本家が書いたシナリオよりも彼女には印象に残る演技があり、いつか一緒に仕事をしようと強く感じました。
それと彼女にオファする勇気を与えたきっかけになったのは、ハリウッドで活躍している彼女の作品を見ていると、かなり過小評価しているとおもいます。中には彼女でなくても出来るような役や彼女の良さを生かしていないなどを感じたので、オファをしてみようと思いました。
すぐにOKの返事が頂け、彼女からもこんなに複雑な演技の仕事を頂けて良かったと言われました。
ウィリアム・B・デイビスに関しては『Xファイル』のファンでそれほど大きな役ではなかったのですが、出演のOKが頂け、彼はカナダ人で撮影もカナダで行ったのですが、1ファンとして出演をお願いしました。

−−前作には地下室が連続して使われていますが、意味はありますか?
意図的では無いのですが、シナリオを書いていくと「また、女性が主人公になってしまった」とか「また、地下室が出てきてしまった」と後で気がつくことが多いです。なぜ、そうなってしまうのか、きっと自分を分析してみないと解らないですね。(笑)
きっと地下室という点は、人間の内面の奥深いというシンボルになっているんじゃないかとおもいます。

−−新たな挑戦は?今後撮ってみないアイディアは?
次回作の構想では、初めて男性を主人公に考えています。映画の始まりもおだやかにラブストーリー的なシーンからを考えており、今、シナリオを執筆している段階です。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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