それぞれに今の自分と未来に絶望を抱える4人の病んだキャラクターの切実さがおかしくも愛おしい、とびきりキュートで切ない新世代の突然変異的恋愛映画がここに誕生!

恋愛にまつわる人と人とのコミュニケーションのあり方を「男女の性器が入れ替わる」という斬新なアイディアで映画化したのは、1986年生まれの超個性派新人女流監督・木村承子。恋とセックスについての根源的な問いを、現代ニッポンならではのユニークな感性で投げかける。

エキセントリックな発想にストレートな感情表現と爆発的な行動力を持つ女子高生のツブラには注目の新進女優・我妻三輪子が抜擢。彼女に巻き込まれる生物教師には青山真治監督作品の常連としても知られる斉藤陽一郎。これまでのクールなイメージを裏切る怪演を披露。さらにこの2人と四角関係を作るツブラの同級生コンビを、映画・TVドラマ・舞台まで幅広い活躍を見せる佐津川愛美と、『ヒミズ』(12)で大ブレイクした若手実力派の筆頭・染谷将太が演じている。

音楽は、レトロフューチャーなサウンドで若者層を中心に絶大な人気を誇る「病的にポップでガーリー」なトラウマテクノポップバンド“アーバンギャルド”が担当。荒唐無稽な作品の世界観を時に支え、時に追い上げ、本編と切っても切れない見事なシンクロ率を見せている。

第21回ぴあフィルムフェスティバルのスカラシップを得て、長編デビュー作を撮り上げた木村承子監督、そして伸びやかな肢体とコケティッシュなルックスで観る者を惹きつける本作主演の我妻三輪子にインタビューを敢行した。






−−「男女の性器が入れ替わる」という発想はどうやって生まれたんですか?

監督:(PFFスカラシップの)脚本コンペに勝つためには、一番やりたいものでないと勝てないと思ったんです。だったらずっとやりたかった女子高生の恋愛ものと、今までやってきた処女喪失ものをやろうと思って。そんなときに読んだ本に、「女の人の体は一生変わり続けて、すべてを呑み込むように出来ている」と書いてあって、それがショッキングだったんです。だったら独占欲が強すぎて、相手を呑み込んでしまうような欲求を持っている女の子の話にしようと。だったら何を呑み込むのか……。当然アレでしょという流れでした。

−−その発想の飛び方が面白いですね。

監督:人に見せないようなところを自分のものにしたいというか、離れないようにしたいというか。自分の体を一部取られたら、相手から離れられないじゃないですか。それが幸せかどうかは置いておいて。ただ、性器交換をやろうとは思いましたが、それだけだとエグすぎるので、もっとポップなものにしたかった。ここまでポップな映画になったのは三輪子ちゃんのおかげです。

−−ツブラという役は、かなり風変わりな役だと思うのですが、オファーがあったときはどうでした?

我妻:台本だけ読んだ段階ではいろいろ分からないことが多すぎて、正直、どうしようとは思いましたね。不安というよりも、単純に疑問ということなんですが。ただ、オーディションの時に監督とは一度お会いしていて、直感的にきっといい人だと思っていたんで、そういう意味での不安はなかったですけどね。

−−ツブラという役について、我妻さんとどのようなやりとりがあったんですか?

監督:ただひたすらシュミレーションを繰り返しました。転がってもらったりとか、いろんな動きをいっぱいやってもらって、徐々に映画のような感じになって。脚本の時点ではツブラはこんなポップな感じじゃなかったんですよ。もうちょっとドロドロしていたというか。もっと明るいものを撮りたいと思って、毒抜きというか、もっと明るくなるようなシュミレーションをいろいろしました。三輪子ちゃんで本当に良かったなと思いました。

−−最初の方ははツブラの恋心やウキウキが伝わる演技でしたしね。

監督:私もあそこはめっちゃ好きなんですよ。

我妻:恋しちゃってルンルン、みたいな感じでと言われましたからね。

−−ツブラはどんなキャラクターだと思いました?

我妻:自分の正義とか、貫き通しているものが人とはちょっとベクトルが違うけど、あそこまで自分がぶれないのはすごいなと思います。

監督:ツブラは過剰でいいですよね。私は過剰なものが好きなので。

−−マドカ先生役の斉藤陽一郎さんとの共演はいかがでした?

我妻:最初に斉藤さんにお会いした印象が超オシャレだったんですよ。私の思っていたマドカ先生って、超ダサかったんでどうしようと思いました。

監督:だから衣装合わせの時も、斉藤さんカッコ良すぎるから、シャツインにして、意識的にダサくしてもらいました。

我妻:カッコ良さを隠したら、可愛くなるというミラクル(笑)。

−−『恋に至る病』というタイトルにちなんだ漠然とした質問で恐縮なんですが、恋って病気なんですかね?

監督:病気ですよ。熱病ですよ。まあ、病気だと気付くのはだいたい終わった後ですけどね。思い返せば病気だったなと思うような。うまくできる人はいいけど、うまくいかない人は病気になる。

我妻:恋は奇病だから、結局、心が健康でなくなる気がする。

監督:まぁ、健康になるために毒をもって毒を制すという感じで。

−−ところで木村監督が追い求めているテーマは、処女や童貞なんですか。

監督:それはずっと引っかかってやっているテーマで。人が隠すところほど見たくなるというか。恥ずかしいところを見せるし、見てあげるよという関係性にすごくあこがれがあるんです。

−−染谷将太さんの役も、斉藤陽一郎さんの役も、童貞以上に童貞というか。純粋培養された童貞という感じがします。ああいう男子たちってどう思います?

我妻:たぶん守ってあげなきゃとか、あたしじゃなきゃダメだと思わせることがうまいタイプなんだと思うんです。みんなどこかで欠けているんだと思うんですけど普段はなかなか見えないじゃないですか。きっと私は欠落したところが丸見えな人って好きなんですよね。マドカ先生みたいにあそこまで丸出しな人を見ると「埋めたい!」と思います(笑)。それが愛なんですかね。

監督:今、いいこと言った(笑)。

執筆者

壬生智裕

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