オーストラリアに移住してから28年…驚くことなかれ。身長161cmにして体重は95kgに。89年「戦場の女たち」でパプア・ニューギニアの日本従軍慰安婦をテーマに映画を撮り、メルボルン国際映画祭ドキュメンタリー部門をグランプリを受賞。その後結婚・出産・そして離婚とドキュメンタリー二作目を間に完成させながら10数年の月日が流れ、本作「THE ダイエット!」で映画監督として「これ程面白いものはない!」と自らを被写体にしてしまった関口祐加監督。
敗戦という苦い経験をした関口監督の父親が「戦勝国であるアメリカの強さの源は食文化にあった。自分の子供には大きく強くなってほしい。」という思いから母親が作る和食よりもハンバーグやポップコーンなどのジャンクフードを好んで食べていた影響で子供のころから食べることが大好きで大柄な少女だったそうである。オーストラリアに渡ってからは、自分の体格が並程度であることを知り歓喜して食べる。また、外国から移り住んできた身として食文化を進んで受け入れることで現地人との交流を深める…つまりオーストラリアの脂っこい肉肉しい食事を食べる。結婚生活に行きづまりピザを食べ続ける。ついには愛息子と一緒に走りつづけることがままならず、医者から「このままだと生きていけない」と宣告されダイエットの一大決心!ダイエットを単なる食事療法や減量という領域ではなく、精神面から取り組むことで見えてきた答えとは?
文字通り自ら体を張って本作を撮影した、明るく気さくで笑顔の素敵な関口監督が語ったインタビュー・レポート!!




まずは関口監督ご自身の事をお聞きしたいのですが、何故オーストラリアに移住なさったのですか?
一番初めは移住するつもりはなくて、みなさんと同じように留学しました。いまでこそ主流になりましたが当時オーストラリアに留学する人はめずらしくて、人が行かないところに行こうと思ったんです。一緒に住んでいた大好きな叔父がよく海外に行くのを間近に見てましてね。彼は南極まで行ってまして、影響をうけましたね。後は実家が横浜で海の近くに住んでいましたから、地平線の向こうに行ってみたいなと思っていました。

その後28年間オーストラリアに住んでいらっしゃいますが…
ずるずるとね。オーストラリアに居続けた大きな理由の一つは映画に出会ったこと。20代後半で今後自分がどうやって生きていこうか悩んでいた時にドキュメンタリーに出会って、「これだ!」と思いました。そういう出会いって男でもないですよ。強烈な出会いでした。その時みた映画でパプアニューギニアの人が物のように扱われているシーンがあったのですが、それを見てすごい憤りを感じました。その時このまま国際関係論を勉強して論文をかいても、人を本気で憤らせたり感動させたりは出来ないと気づいてしまったんですよ。映像の力に見せられたというかなんというか。

この「THE ダイエット!」を撮ることになった経緯は?
アン・リー監督から「コメディの才能が、ある」と言ってもらったことがあって、作品の方向性が決まったというのはありますね。とは言っても一体何を撮ればいいのか分からないじゃないですか。この「THE ダイエット!」という映画は、悲惨な結婚生活を送ってピザを食べていたときにひらめきましたね。これが2000年の話で完成したのは2007年ですからね。

監督として何故ご自身を被写体として選んだのですか?
まずコメディを取りたいというのがありました。後は我々ドキュメンタリストはすけべですから、被写体の中身をもっと見てみたい。この人が何を考えているのかもっと踏み込みたいと常に考えている訳ですよ。でもそれって、その人のプライバシーに踏み込むことになるじゃないですか。でも自分を被写体にするとモラルの問題を心配しなくてすむんですよ。どんどん自分をさらけだせますから。ホームビデオではなくてこれはドキュメンタリー映画ですから人に見てもらうものにしなくてはいけない。だから難しかったのは一体どこまでさらけ出すのか、ではなくて、むしろ、どこで止めるのかが第三者が見て一番面白い形になるのかという点が難しかったですね。

自分に踏み込んでいくという事に関して不安はなかったのですか?
それはありましたよ。ドキュメンタリーの面白い所は何が撮れるか分からない所で、覚悟はできていても不安はありましたよ。この作品は色々な意味で勉強になって、今では初めて映画人としてプロの仕事が出来たかなと思ってますね。

もうすぐ日本でも公開を迎えますが心境は?
それはね、二作目が日本で公開されていないだけに嬉しいです!故郷に錦を飾ったという感じですね。この映画の中でも自分のアイデンティティは日本人であるということなので、この映画で日本に帰ってこれたのは嬉しいですよね。

ダイエット・セラピーという手法で精神面からダイエットに取り組んでいる点が非常に興味深かったです。
ダイエット本とか世間にはたくさんありますけど、「何で食べてしまうのか?」という精神世界に行かないとダメだなと思っていました。そこで意気投合したのが劇中にも出てくるダイエット・セラピストの先生なんです。ドラッグやたばこ中毒は問題になりますけど、食べ物だけは取らない訳にはいかないじゃないですか。それなのに食べ物がいかに乱用されているかという事はあまり重要視されていないんです。食と精神は関連している部分があって、そこにスポットをあてないといけないと思ったんです。

実際にダイエットをしていた期間は?
2006年の11月から2007年の5月あたりの半年間ですね。

その後もダイエットは続けていらっしゃいますか?
それはね、要はこの映画はいわゆるダイエットはダメよっていうのがテーマなんですよ。私も今回ダイエット・セラピーでどうして暴食してしまうのか自分で理解できてからは暴食しなくなりましたしね。後はヘルシーだからという意味ではなくて、自然と自分のアイデンティティである日本食に行き着いたというのも大きいです。

痩せたい綺麗になりたいというのは女性の永遠の願望だと思うのですが、そういう女性にこの映画をみてもらいたいというのはありますか?
女性の永遠の願望なんですかね?日本なんてみんな痩せてるじゃないですか。世界中の肥満な人は生死に関わる重大な問題なんですけどね。そういう意味では若い女性だけではなくて色々な方にみて欲しいですね。

執筆者

峰松加奈

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