“期待を裏切らないアクションですね”『ハード・リベンジ、ミリー』辻本貴則監督インタビュー
20XX年の荒廃した横浜、家族を失い生死の狭間から体に武器を仕込み手術をうけて生き返った殺人師(スナイパー)ミリー、復讐を果たすためジャックブラザーズと生死を賭けた闘いに挑む!
主演のミリーには『踊る大捜査線』などの大ヒットドラマに出演する一方で、『恋人はスナイパー』『真・女立喰師列伝〜荒野の弐挺拳銃』などでは本格的なアクションに挑んでいる水野美紀。また、その水野とラストファイトを魅せるジャックに、元プロボクサーで『ハブと拳骨』『ICHI』などで本格的アクションを行う虎牙光揮。ふたりのリアルファイトも話題だ。
今回はこのハードなアクションを撮った辻本貴則監督にインタビューを行った。
水野美紀さんとは、『女立喰師列伝』に続くコンビですよね。
「あの時はガンアクションが中心だったわけです。でも彼女はもともとボディアクション出身の人ですから、もっとボディアクションをやってもらいたいと思っていました。それもただの喧嘩ファイトというようなものではなくて、命をかけたハードなアクションをやってもらいたかったんですよ。それに彼女は『ストリートファイター』のCMで春麗をやっていましたからね。元々は彼女にストⅡの必殺技をやって欲しかったんですよ。脚本にも書いていましたから(笑)」
逆さで宙に浮きながら、足を開いてヘリコプターみたいに回転するというあれですね。
「ト書きにも『ミリーはテレビゲームのように技を繰り出す』なんて書いていました。実際にそれをやろうとアクション監督と動きを練っていたんですが、そこだけいきなりギャグになっちゃうんですよね。なので、そこは泣く泣くやめることにしました」
女性による復讐者の物語ということで、見る人によっては『キル・ビル』を思い出すかもしれません。
「実はそれ、あまり意識してなかったんです。自分としては『マッド・マックス』だったんですよ。妻子を殺された男が復讐をするという。まあ、元を辿れば『キル・ビル』だって『修羅雪姫』ですからね」
ボスにたどり着く前に何人かの手下と闘うというストーリーラインは、復讐ものの定石ですからね。
「そうですね。まさにそういうことがやりたかったんです」
撮影はどれくらいで?
「実は7日間だったんです」
それにしてはアクションが濃密ですね。
「この映画ではアクションをしっかりと見せたかったですからね。だからラストのファイトシーンは3日かけて撮りました。8分ほどしかないシーンなんですが。本来見せるべきところはしっかりと見せたかったですからね。残り4日で、他のドラマ部分を撮ったというわけなんです」
とはいえ、ラスト以外にもアクションシーンはたくさんあるわけですから、残り4日で撮るのは大変だったんじゃないですか?
「ホント大変でした(笑)。カット割を工夫するなどして何とか。追いかけるシーンをワンカットで撮ったりとか。ただ、水野さんは死体の前に立つだけで絵になりますからね。そのあたりのバランスはうまくいきました。
実はラストの倉庫でのバトルシーンは、日程の都合で一番最初の3日間で撮ったんです。これが意外にもいい具合に作用しました。初日はともかく、2日目、3日目は、水野さんも虎牙(光揮)さんも気力も体力も充実していたので、動きがとてもいいんです。後半のドラマでじっとしている部分は体力が右肩下がりに落ちても、大丈夫でした」
特殊造形には西村喜廣さんが参加されてます。
「雑誌の『映画秘宝』に血まみれになっている西村映像の写真が載ってたんです。それを見たら、この人たちとやりたいと思って。今、日本映画ではあまりやらなくなった、血のりを使った表現をきっちりとやりたいと思ってお願いしました」
水野さんも血まみれになったり、体当たりの演技でしたね
「1テイク目は特殊効果の人も遠慮して、血のりをピチャッ、という程度だったんですよ。はっきり言ってゆるいなと思ったし、遠慮すると逆に失礼だなと思って、2テイク目で徹底的に血のりを浴びてもらうことになりました」
本当に水野さんのアクションは壮絶でした。特に虎牙さんとのファイトシーンでは、顔や髪の毛を掴まれて、ガンガンやられて。女優さんにここまでやっていいのか、と驚いたんですが。
「アクションコーディネーターの園村さんがドSなんですよ。髪の毛を掴んでガツンと。みんなで『ドSだ…』なんて言ってましたよ」
水野さんの武器がまた壮絶ですよね。
「男の子はカシャーン、という音と共に刀が出ると嬉しいんですよ。逆手で刀を持つと、動きに特徴が出ていいんですよね。座頭市のようだし」
水野さんのモンゴリアンチョップは強烈です。
「あそこのシーンは、最初は正拳突きにするか、片手の脳天チョップにするか、モンゴリアンチョップにするか、という3択だったんです。でもモンゴリアンチョップが一番面白いだろうということで。チョップに入る前に助走しているんですけど、そこはあえて指を伸ばしたままで、腕を振って走ってもらいました」
あのシーンはかなり印象に残ってます。
「ちょっとやりすぎかな、と思わなくもないですが、監督のこだわりということで(笑)。この映画の予告編を作ってくださった方は『セブン』のCMなんかも作っていた方なんですけど、その方もモンゴリアンチョップのシーンを気に入っていただいて、うれしかったですね。予告編には一番最初に水野さんのモンゴリアンチョップが入っているはずです」
最後にこの映画をご覧になる方にメッセージを。
「スタントマンを誰も使っていない映画です。こういう人たちが本気でアクションに取り組むとこうなるという。期待は裏切らないと思います」
執筆者
壬生 智裕