「シュウちゃん、恋ってすごいね、恋は人をこんなに強くしてくれる。」
こんなにも切ない愛の言葉を、最終兵器と化したちせがつぶやくラスト。最終兵器としての出撃が増えていく一方で、心の部分がどんどんなくなっていくちせ(前田亜季)を、必死に受け止めようとするシュウジ(窪塚俊介)の姿。恋をしていくとはこういうことか、と再確認した人々も多いのではないでしょうか。
ただ、恋をしていく中で、大きく違う点はやはりちせが機械であるという点。機械と心は、相反するもので、決して交わらないもの。この複雑な役を「私にとっては挑戦でした。」と語る前田亜季さん。DVD発売直前、『サイカノ』を演じさらに俳優として飛躍の年となりそうな前田亜季さんにインタビューしてきました!










—須賀大観監督からの演技指導はどういった様子で進みましたか?

「映画の監督さんには、いろんな方法で指導する方々がたくさんいらっしゃいます。須賀監督は、本当に細かい所まで指導して下さる方でした。監督の中で、映像の構想が出来上がっていて、監督の意思を現場監督さんが指示してくれました。例えば、『ここでセリフを言うためにはこう動いて…』というような具合でした。須賀監督のような演技指導をされる方は初めてだったので、最初は不思議な感じがして戸惑いもありましたが、慣れてくると監督のやり方がとても面白く感じられました。」

—共演したキャストの方々と交流はありましたか?
「しほりちゃんも、了くんも年が近いのですごく仲良くなれました。北海道での撮影も泊りがけで、合宿みたいだったので、撮影以外の話もたくさんしました!今でも、仲良くしています。窪塚さんは少し年が離れた“お兄ちゃん”といった感じでした。一緒のシーンも多くて、その日撮影するシーンについて話したりしました。窪塚さんは頭が良い上にとっても面白い方なんです。現場では窪塚さんによく笑わされていました(笑)」

—撮影で苦労された部分はどこですか?
「小さいときからお仕事をしてきましたが、その中でも一番難しい役でした。今思い返してみてもそう思います。撮影に入る前も、もちろん最中も悩んで悩んで…すべてが難しかったです。主役を演じられて、楽しくもあり難しくもありその分思い入れも深い作品です。いろんなことを思い出します。」

—ちせは常にシュウジとの恋と『兵器』としての義務をこなさなくてはならないジレンマを抱えていますよね。撮影中も気持ちの持ち様が困難だったんじゃないかと思うのですが。

「そういうジレンマの部分を演じる前の日、寝る時に『明日このシーンか。』って不安になりました。現場に行ってしまえば楽しいんですけどね(笑)
本当にこの役は始めての挑戦でした。一番泣いた作品です。撮影中に泣くことはあまりなかったのですが、自分の部屋に戻って役から抜けた時に、自然と涙が出てきていました。肉体的にも精神的にもハードな作品でした。」

—戦って強くなっていく一方で、心の部分がどんどんなくなっていってしまう・・・という難しいシーンがありますよね。どういう心理で演じられたのですか?

「本当に難しいシーンでした。ちせは自分の体がどんどん変化していく一方で、心のバランスが取れなくなっていくんですよ。どう演じればいいのか、すごく悩みました。でも、監督の『普通の高校生のちせを大切に演じられていれば、心の変化もわかるよ』と言われて、少し不安がとけました。研究室で、機械になってしまった自分の体のレントゲンを見たりとか、現実世界ではありえないひとつひとつの出来事が、高校生のちせにとって、呆然としてしまうようなことばかりじゃないですか。そんな出来事が重なれば、心もどんどん鈍感になっちゃうよなぁ、って思ったんです。自分の感情を伝えるためにある言葉も意味を持たなくなって、心が死んでく状況にちせはいるんです。ちせの『私はもう人間じゃないの』というセリフのように、自分を機械だと思って、深く考えないようにして演じました。」

—映画:『最終兵器彼女』のメッセージはなんだと思いますか?

「初めて脚本を読んだ時、真ん中に『純愛』があって、なんてあったかいストーリーなんだろう」って思いました。好きな人のために戦うちせって、なんてかっこいいんだろうって憧れました。素直にこういう恋愛っていいなと思いました。普段はとても女の子らしいのに、シュウジのために強くなる姿を演じるのは気持ちよかったです。」

—原作と映画ではラスト違いますが、もし前田さんなら、最後どうやって世界との決着を着けますか?

「最後好きな人を守るために宇宙に行くことを選ぶちせはかっこいいと思います。私なら、映画と同じラストにすると思います。こんな切ない終わり方できれば、起こらないで欲しいですが。(笑)」

—ラスト、ちせが観客に語りかけるシーンのCGは大変でしたか?

「CGのシーンは東京に帰ってきて、オールグリーンバックで3日間撮影しました。衣装もいっしょのことが多いので、衣装を着替える度に台本を見ながら、つながりに注意して演じていました。事細かにチェックしていないと、混乱してきちゃうんですよ。」
 
—泣き虫のちせが泣かなかったラストシーンが印象的でしたよね。

「あのシーンはずっとアップで、いすに座ってるだけなんですよ(笑)なので、表情ですべてを伝えなくちゃいけなくて、何回も撮影しました。本当に、いろんな表情で撮影しました。決意している表情のものとか・・・。そんな時監督に『微笑んでいてほしい』と言われたんです。『悲しい顔とか、決意してる顔よりもすべてを受け入れて、生きてこれて、好きな人と恋をしてよかった、っていう微笑みが欲しい』と。最初は微笑みって難しいなぁって思っていたんですが、これでよかったんだと納得できるものになりました。」

—『サイカノ』に出て学んだことを教えてください。

「今までは、自分も『あぁ、わかる!わかる!』というような役を演じることが多かったんですが、今回は機械であるし、性格的にも全然自分と似てない女の子らしい役だったので、挑戦でした。でも本当に勉強になりました。撮影中、いろんなことを吸収できたし、スタッフの方達の仕事に対する姿勢を見ていて、私も自分のことを真剣に考えるようになりました。自分自身も成長する時に、この作品に出演できてよかったと思います。」

—これからはどんな役に挑戦したいと思いますか?

「いろんな役をやりたいです!いただいた役をしっかり演じて、今できる精一杯の力で演じられたらな、と思います。」

—DVDを待っているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
「私、今日このパッケージを初めてみたんですがすごくかっこよくないですか!?びっくりしました(笑)私が観たことない特典映像もいっぱいあるので楽しんでもらえると思います。DVDは何度でもどこからでも観始めることができるので、時間がある時にじっくり観て下さい!」

執筆者

林 奏子

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