『私の頭の中の消しゴム』ソン・イェジン:インタビュー
この物語には、数々の記憶すべき愛の瞬間がある。
最初のキスの柔らな感覚。愛する人が初めて「愛してる」と言った時の吐息。それは幻想的で、強烈にきらめく。しかしその瞬間が大切であればあるほど、その記憶を失っていくこと、そしてまた、その記憶だけに生きていくことは、痛ましい。
「若年性アルツハイマー」という病をテーマに、死よりつらい2人の別れ余儀なくされる若い男女。愛の面影を必死に求める女と、愛の記憶に生きる決心をする男の姿は、生きている喜びと記憶の尊さを実感させ、かつてない心からの感情を呼び覚ます。
圧倒的な存在感を誇り、他の追随を許さない韓国映画界のカリスマ俳優チョン・ウソンと、完璧な美貌と才能と確かな演技力を持つ、新たなラブストーリーの女王ソン・イェジンという最高のキャスティングによる本作は、昨年の韓国での公開時は3週連続NO.1という大ヒットを記録した。韓国映画界のラブストーリーを新たな次元に導き、世界中の人々の心に涙の落ちる音を響かせる。
Qご自身が演じた「スジン」はどんな人物ですか?
27歳ぐらいの女性でとても明るく、純粋で健康。精神的にもすごく健康で楽天的な性格なんです。一人の男性と出会い、愛し、結婚してその後は悲しみがくる。時にはすごく子供みたいに、時にはお母さんのような暖かい面もあり、悲しくもあり、いろんな面をもった女性だと思います。
Q感情の演技の難しい点は何ですか?
アクション演技は一度もやったことがないので、それがどれほどの消耗なのかはわかりません。アクション演技は肉体的な苦痛ともちろん精神的な苦痛もあると思いますが、ものすごく大変だとしても全力を出してやればいいじゃないですか。だけど、メロドラマの演技というのは感情なので、私がいくら全力を出し尽くしても、感情が出ないと駄目なんです。それだけ感情をコントロールしてやっていくということは、大変な消耗だと思います。だからある激情シーンを撮った後は、ほとんど何も考えられなくなって虚脱状態のようにまでなるんです。
Qチョン・ウソンさんと共演されていかがでしたか?
大きな声で言えないんですが、私はかなり後輩じゃないですか。後輩ですが、お互いの呼吸が本当に大事なので、考えや対話をたくさんしたと思います。監督や先輩(チョン・ウソン)やらが集まって会議も沢山しました。そういうところで、先輩はいい話を沢山してくれて。「こういう時はスジンの感情はこうじゃないかな」と自分の足りない部分やそういうものを補ってくれるような気がします。先輩のおかげで自分が出せる演技より、もっとよく見せられるのではないかなと。そういう意味で、ものすごくよかったと思います。
Qスジンを演じてみていかがでしたか?
スジンという人物を、ほとんど自分と置きかえて演技をしたと思います。ある面では、それだけ共感できる部分も多かったと思うし、私よりもすごく純粋で明るく、とても健康な精神を持っていると思いました。そういう面で「いつも、あぁ私もああいうふうだったら」とか「スジンが私の中に入り込んでくれたらいいな」という思いを沢山しました。
今はスジンもチョルスもそうなのですが、思い出すとあまりにも切なく、懐かしい。私は撮影終わってから先輩にこういう話をしました。「スジンはチョルスがとっても懐かしい、と伝えてください」。こう言うと、本当にすごく懐かしがると思うし、忘れられないと思います、永遠に。
執筆者
Kaori Watano