韓国国内で大ヒットしていながらも日本未公開の優れた韓国のエンターテイメント作品を紹介するシネマコリア2004。上映作品のうち3本が初監督作品でありながら、その優れた完成度で我々を楽しませてくれる。チョ・グンシク監督の『品行ゼロ』もそんな一本だ。
 男子校の品行ゼロ(お行儀最悪)生徒ジュンピルはいわゆる番長として学校内に君臨する。しかしこの番長ジュンピルの可愛らしいこと!好きな女の子の前ではもじもじして何も話せなかったり、ちょっとおとぼけでドジっぽいところが従来の番長像と違って抜群に面白い!80年代を舞台に、ジュンピルと仲良くなる優等生のヨンマンや子どもっぽさ全開の子分たちとのやりとり、ジュンピルに密かに思いを寄せる女子高の女番長ナヨン、眼鏡をとったら超美少女の優等生ミニ、ジュンピルのライバル・サンマンなど、出てくる登場人物みんながどこか愛らしく、彼らの織り成すドタバタが漫画チックに描かれる。
来日中のチョ・グンシク監督にお話しを聞いてきた。






—— 第一作目というのはその監督のその後の作品をもっとも端的に表すといわれますが、こういった青春映画を初監督に選んだ理由は?
「映画に限らずクリエイターというのは、成長期に経験したことをどこかで表現したいと思っているものなんです。私も成長期に色々感じたことを映画で表現してみたかった。また、映画をとおして自分のこれまで通ってきた道を整理してみたという意味もあります。」

—— 青春というのは誰でも通過する時期です、作品には監督の実体験も含まれているのでしょうか?
「もちろん私が経験したこともありますし、聞いたことも含まれています。資料からイメージを奮起したり、人から聞いて思い出したこともありますね。」

—— リュ・スンボムさんは初めて本格的な主演作となりますが彼の起用はどこから?
「「ダイバット」というオムニバス映画ではじめて彼を見たときから、彼をつかって映画をつくりたいとは思っていたんです。でもこの作品の企画段階では主人公は彼ではなかった。実際に企画が進んでいって、リュ・スンボムさんと話しているうちに彼を主役にしてみたくなったんです。」

—— では彼の存在が、この“番長なのにすごく人間らしい”という個性的なキャラクターをインスパイアさせたのでしょうか?
「やはり彼から受けた印象を生かそうと思って、そういうシナリオにしましたね。リュ・スンボムさんに限らず、他の役者さんも演技に関してはそんなに経歴は長くはないんです。だからといって自分があれこれなんでも指示するのは違うと思うんです。彼らがもともと持っている魅力をうまく生かして演技に反映させるようにしました。」

—— ジュンピルの仕草は髪の毛をなでつけるきめポーズなどありますが、演技に関してはほぼお任せですか?
「具体的な細かい点での演技指導は一切していません。彼が私に対して気軽に話しやすい雰囲気をつくることに気をくばって、プレッシャーを与えないで楽しくやれるように心がけましたし、彼の良いところを最大限だすようにして、逆にちょっと・・・って思うところは私がカバーするように努力しました。」

—— コン・ヒョジンさんのスケ番もすごく魅力的でしたね。日本には東映の女番長シリーズやら一連のそういったジャンルはあるんですが韓国にももしかして・・・?
「韓国ではスケ番モノ自体そんなに多くないです。でも、私が学校に通っていたころは実際にそういう女の人がよくいたんです(笑)。当時、この映画のコン・ヒョジョンが演じたみたいなタイプが必ず1人や2人はいましたね。」

—— 漫画の影響をすごく感じました。ヒロイン・ミニの“眼鏡をかけた美少女”っていうのも日本ではオタクアニメの典型的キャラなんですよ。
「日本の漫画に限らず、すごく漫画は読むほうです。冒頭にカツアゲされている子どもをジョンピュルが助けるシーンでは「攻殻機動隊」(押井守)をちょっと真似ています。映画というのは子どもたちの夢やファンタジーを表現するのがテーマになっているので、必然的に漫画的な想像力を取り入れることになりました。最後の方にすごく現実的なケンカのシーンがありますが、それはそういう漫画的な世界の中でのリアルなシーンとして全体のコントラストとしてあります。」

—— 一番印象的だったのはジュンピルとミニのキスシーンです。2人のドキドキ感が苦しいくらいに伝わってきましたよ!
「キスシーンの場面では現場もすごく緊張してました。ちょっと前後するけどこのキスシーンも名前は忘れちゃったけど日本のアニメのワンシーンに影響されてます。」

—— 監督自身のお気に入りのシーンと大変だったシーンは?
「一番大変だったのは、最後のジョンピルとサンマンのケンカのシーン。コンテも作らずに実際に彼らがケンカをしているようにやってくれということでお願いしました。リアリティを出せるように。これまでキスシーンもそうですがほとんどは綿密に絵コンテどおりにシーンを撮影していますが、このシーンだけはなんにも作らず本当に彼らにその場でやってもらったことです。カメラも固定しないでハンディでやりましたね。だからこのシーンがやはり一番気に入ってもいます。」

—— すごくサービス精神旺盛で観客を楽しませようという思いが伝わってきますが、映画をつくる上で一番大切にしていることは?
「人を笑わせる、楽しませる。私が経験してきたことを語る場合は、私と同じだけ観客の人にその感情を味わってもらえればと思います。次回作はラブストーリーです。いまシナリオ執筆中ですが撮影までにはもう少しかかりそうですね。」

執筆者

KAORI WATANO

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公式サイト:シネマコリア2004
作品紹介