「まわしはね、トイレに行くのも大変なのよ」 『恋はハッケヨイ!』主演シャーロット・ブリテン独占取材
タイトル聞けば説明いらず!?イギリス発「恋はハッケヨイ!」(イモジェン・キンメル監督)はちょっと太めのヒロインが恋に相撲にひたむきに走る、なにしろラブリーな青春映画なのである。ヒロイン演じるシャーロット・ブリテンは太っててもカワイイ、まわしスタイルでもカワイイ、作品の触れこみ通り、コンプレックスを個性に変えた新しいタイプのアクトレスだ。「ディジーは普通の女の子の代表のような存在。ひとりぼっちに傷ついたり、自分自身でありたいと願ったり…。誰もが自分を重ねることができるヒロインだと思うわ」。このほど初来日したブリテン、劇中でもダンナのケンに「絶対、痩せるな!!」と言われていたが、彼女に会った人ならば誰もがケンに賛成することだろう。5月某日、ホテルオークラの一室での本取材は確かにチャーミングなひとときだった。
(撮影:中野昭次)
ーー本作は世界初の女相撲映画だとか。主人公ディジーに抜擢されるまでの経緯を教えてください。
監督のイモジェンが「Get Real」(今秋公開予定)を観て、電話を掛けてきたの。脚本を読んですごくいい映画になりえる反面、逆におかしな方向に進んでしまう可能性もあると思った。体の大きな人をバカにしたような映画になるんじゃないかって…。監督に会ったのはまず、それを確認したかったの。イモジェンは「そんなつもりはないし、繊細に描くから」って言ってくれて、実際、すごく楽しい映画になったわ。
ーー出演以前に相撲の知識はありましたか。
イギリスのスポーツ番組で観たことはあったけど、文化的背景は全く知らなかった。ちょっとおかしいな(笑)、変な格好かも(笑)程度のイメージしかなかった。
実際にトレーニングをしてみて驚いたの。動作のひとつひとつに意味があるし、本当に体力のある人じゃないと出来ないスポーツだと思った。最初は体中が痛くて、痛くて(笑)、痣だらけになってしまった(笑)。
ーー自分のまわし姿を初めて見たとき、どう思いました?
まわしも白塗りのメイクも最初は面白かったんだけど・・・。2日目くらいから嫌になってしまった(笑)。だって、常に何かつけていなくちゃならなくて、リラックスはできない、ジュースを飲むだけで化粧が落ちてしまう、座るのも大変で、トイレに行こうにも行った後は、また20分くらいかけてまわしをつけ直さなきゃなんないの(笑)。
ーーあなたが演じたディジーを観客は愛おしく感じるでしょうね。
ディジーは普通の女性を代表してるわ。内面、行動ともに他人から受けいられたいと望んでいるし、同時に自分自身でありたいという欲求も強いの。若い女性なら誰しもが考えたことがあるようにひとりぼっちじゃないかと寂しく思うこともある。観客は自然とディジーを自分に重ねてしまう。そして、彼女はどんなに状況が悪くてもそれを乗り越えようとするパワーを持ってるの。
ーーディジー&ケンは個人的に言って、最近観た映画のベストなカップルなのですが。ケンのような男性をどう思いますか。
うーん(笑)。ケンはすごく愛らしいひと。でも、実際の私だったら、あんな人といたら気が狂っちゃいそうかも(笑)。夢を見るのは素敵だけど、家賃を払うとか、現実的な側面に躊躇しない人だから。ケンにはディジーのような女性が必要だし、ディジーにしてもそうなのかもしれない。でも、私は彼女ほど忍耐強くはないの(笑)。
ーーリアルなカップルにするため、リー・ロス(ケン役)とは多くの時間を過ごしたとか。
ええ、そうね。リーとはディジー&ケンカップルの歴史を話し合ったわ。2人のなれ染めは劇中には出てこないけど、私たちはこう決めたの。
ディジーは昔、デリカテッセンの店員でした(笑)。ケンはその頃、建設現場にいて、お昼はディジーのいるお店でサンドイッチを買っていました。2人とも誰かと付き合った経験なんてほとんどなかったんだけど、ある日、ケンが勇気を出して声を掛けるの。そうして2人は恋に落ちました(笑)。
ーー最終的にカットされたシーンでお気に入りだったものはありますか。
初めの方に、ディジーがモペットを引きづっているとき、男の子たちにいじめられるシーンがあるでしょ。ヘルメットをとり上げられて泣きながら帰っちゃうんだけど…。後半にもね、ナイトクラブに行った帰りにね、同じ男の子たちに絡まれる場面があったの。でも、その時のディジーは相撲を始めていて、逆に彼らを投げ飛ばしちゃう(笑)。その話を興奮しながらケンに伝える場面まで撮っていたんだけど、全部カットされちゃった。ディジーの成長がよくわかる場面だったと思うんだけど…。だったら、最初のモペットのシーンも削ってくれればよかったのに(笑)。あのシーンだけならあまり意味がない気がする。
ーー相撲に入れ込む女性を演じることはあなたにとってどういう体験でした?
ああしたコスチュームをつけることにはフラストレーションを感じていたかもしれない。でもね、ディジーもそれは同じだったの。初めは抵抗を感じていたし、ケンにも知られたくないと思っていた。心理的にはディジーも私も一緒で、ストーリーが進むにつれ、裸になって感情をあらわにするようになるの。ディジーを通して、自分自身も成長していくのがわかったわ。
執筆者
寺島まりこ