常盤貴子の映画第2作目にして、香港を代表するスター、アンディ・ラウの100本目の映画『ファイターズ・ブルース』が、5月19日に公開される。公開を10日後に控えた8日、新宿・安田生命ホールにて主演のふたりを迎えての特別試写会と記者会見が開かれた。
 十余年の刑務所暮らしを終えた元ボクサーが、かつての恋人との間にできた娘との初めて対面・交流に苦しみながら、孤児院を運営する日本人シスターと愛を育んでいく様を描いた佳作。2000年クリスマスシーズンのナンバー1ヒットだ。
 黒のシャツ・皮パンに身を包んだアンディは、精悍そのもの。常盤は、ピンクのスパンコールのワンピースで華やかさが際立ち、映画のなかの活動的なシスターとはまた違った印象。会見は、広東語を披露した常盤を、アンディが「パーフェクト!」と褒めるなど、なごやかなムードで進行した。


 会見に続いて行われた、一般試写での舞台挨拶は、前日から並んだファンもいたという盛況ぶり。
 ファンの歓声に迎えられたアンディは、「主人公タイガーの持っている信念が、私と私の会社・天幕(本作の製作会社。1度倒産の危機に瀕している)を代弁しているからです。それは、目標を目指して諦めないということです」と、100本目の作品としての意義を説明。そのアンディにさりげなくエスコートされた常盤は、「人は過去にいろいろなことを背負って、いろいろなシチュエーションの中で生きていたりするのだけど、環境を変えることによって新しく人生をやり直すことは可能だということを、澪子は映画のなかで体現しています。そういうつもりで演じていました」と。
 この映画のために、常盤は日本語・英語・タイ語・広東語・北京語の5言語でのセリフに挑戦。アンディは、3ヶ月にわたってタイ式ボクシングのトレーニングを受けてから撮影に臨んでいる。クライマックスのボクシングシーンは、そんな二人の俳優魂が熱いところ。「あのシーンは、本当に長い時間がかかった本当に大変なシーンでした。それまで1ヶ月くらい撮影をしていて、この最後のシーンは本当に最後に撮ったんですけど、本当に心配で堪らなかったですね。8日間くらいかかっています。それは、昼間は(そのスタジアムでのボクシングの)ライブを国営で放送しているので、それが終わった後の夜11時からしか撮影ができなかったからなんです。夜の11時から次の日のお昼過ぎまで毎日撮影。だから、体力的にも精神的にもすごく心配だったんですね。だから、私は、もう役そのものの感情になりきってました」と常盤は裏話を披露。
 常盤は、また、「澪子という役を通じて、ひとりの人間・常盤貴子としても(アンディ演じる)タイガーに出会えたことがすごく幸せでした」と語り、会場のファンとともに「アンディさん、100本目の映画、本当におめでとうございます!」と、フレンドリーなムードの中でお祝いの言葉を贈っていた。

記者会見より
●アンディさんが、この100本目の作品のヒロインに常盤貴子さんをお選びになった理由をお聞かせください。
アンディ「常盤貴子さんは、ずっと僕のアイドルでした。以前から共演したかったんです。この映画は、僕の会社が製作だったので、オファーしたところ快く受けてもらえました。作品の出来にも満足しています」
常盤「100本目の記念すべき映画に出させていただけて、本当に光栄に思っています」
●常盤さんにとっては2本目の映画作品で、前作に続いてまた香港の映画ですが、これは意識されてのことなんでしょうか?
常盤「いえ、もともと映画はやってみたいという願望はあって、たまたま香港の映画が2本続いてしまったということなんですけど。作品の内容が今の自分にやってみたいと思える要素がたくさんあったので請けさせていただきました」
●それは役柄がですが?
「それよりも、自分の人生においてやり残していることは何か、それをやったほうがいいのかどうかというのは、全ての人が悩むことだと思うんですが、アンディさん演じるタイガーがその答えを出してくれている。そして、頑張ろうという人には皆がサポートしてくれているということ。人生において何が成功かということを追求した映画ですごくステキだなと思ったので、それがオファーを受けさせていただいた大きな理由ですね」
●お二人は普段はどう言った言葉でコミュニケーションをとられているんですか?
アンディ「アイコンタクトです(笑)」
●アンディさんに伺います。常盤さんの一番の魅力はどういうところでしょうか?
アンディ「彼女のいちばんの魅力はなんと言っても笑顔ですね。あと、とても親しみやすい人柄。昔からの友達という感じでした。会ってみて感じたいちばんの魅力というのは……耳ですね。耳も大好きです(笑)」
常盤「冗談ばっかり言うんですもん。スターさんなのに、すごく和ませてくれます」
#●アンディさんは、まだ独身でいらっしゃいますが、大きなお子さんがいらっしゃる役で、また2人を愛する役でした。その3人に対する愛情表現はどのように工夫なさったんでしょうか?
アンディ「幸いなことに、今回はストーリーがしっかりしていましたので、監督からもいろいろなアドバイスを頂きました。3人の女性に対する自分の気持ちなんですが、ひとりは既に亡くなってこの世の中にはいない女性・過去の恋人です。それから新しい女性と接していく。感情の移り変わりもシナリオにしっかり書かれていましたので、演じるのはそんなにたいへんではなかったです。自分の子供への気持ちは、私には弟と姉がいます。彼らにはいずれも子供がいますし、大勢いる友人たちにも子供がいますので、彼らの子供との接し方を見て、役作りの参考にしました。ですから、全体的にはひじょうにスムーズに演じれたと思います」
●ボクサーを演じるためのトレーニングはいかがでしたか?
アンディ「以前からアクション映画に多く出演してきたので、体作りには励んでいました。ボクシングは、80年代の末ごろから始めました。でも、タイ式ボクシングは私にとって初めての経験ですので、撮影開始の3ヶ月前から始めて、1ヶ月前に本格的なトレーニングを受けました」
●常盤さんに伺います。香港映画では、当日に脚本が渡されて、事前に広東語でセリフを覚えて来ても使えないということもお聞きしたのですが、この映画に関しては?
常盤 そのことは、前回学んだことでもあったので、もう文句は言わないというのは心に決めていました。変わるのはわかっているから。それにしても何かないと不安だし、なるべく多くの広東語の練習をしておくのは決して悪いことではない、いいことだと思うので、「なんでもいいから台本をください」とお願いして、その練習をとりあえずして……でも、ほとんど変わったんですけどね(苦笑)。
●一言ずつメッセージをお願いします。
常盤「この映画は、ひとつの映画でボクサーのサクセス、人生のサクセス、人としてのサクセスを柱に、ラブストーリーを含ませ、もうひとつ親子関係のドラマもあります。多くの方に感動してもらえる映画だと思うので、是非見てください」
アンディ「香港で制作されましたが、世界各地のいろいろな方に楽しんでいただける映画だと思います。スタッフが心をこめて作っている作品ですので、是非見ていただきたいと思います。また、この場を借りて、常盤貴子さんに改めて感謝します。この作品が日本でもヒットするように心より願っています」

執筆者

みくに杏子

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