佐藤忠夫氏はじめ、映画評論家が“珠玉の青春映画”と絶賛した「青の瞬間」の完成披露試写会が5月12日、徳間ホールで行われた。同作品は島根県の西ノ島を舞台に、15歳の少年が車椅子の少女との恋、親友との喧嘩や別離を通し、大人になっていく情景を描いたもの。試写会当日はこれがデビュー作になる監督の草野陽花、主演の郭智博、柳沢真理亜らが舞台挨拶。草野監督は「自分にとって、今のベストであることは間違いないです。これを出発点にステップアップしていきたい」と語った。







「青の瞬間」は監督自身の“情けない15歳の記憶”が原点。それを受けたか、主人公・達夫を演じるのは気弱そうなルックスの郭智博だ。今秋には岩井俊二の新作「リリィ・シュシュのすべて」も控えている彼を、草野監督は「一見、体力なさげに見えるのにカメラの前に立つと不思議に凛々しくなる」と賞賛する。一方の郭は「監督はすごく若いな、と思いました。……それだけです」。オーディション時から撮影中に至るまで、「郭くんは僕と絶対に目を合わせないんですよ(笑)。嫌われてんのかな—とか思ってたんですけど」(草野監督)。島根での合宿では食事中誰一人、口を聞かず、笑いも起こらず、シーンとしていたこともよくあったとか。淡々とした監督と主演俳優の関係は舞台挨拶にもにじみ出て、なんとはなしのおかしさを誘った。
達夫が恋する車椅子の美少女を演じたのは1000人のオーディションのなかから選ばれた柳沢真理亜。車椅子を借りて、近所で練習したという彼女は完成試写で「海に入っているシーンとか懐かしくて…。観てたら泣けてきました」。
このほか、当日の舞台挨拶では「近年まれに見る初々しい作品だと思いました」と試写後の感想を語った神谷役の松永毅、ドラマでもお馴染み、本業はテレビ朝日の社員の吉田貴志(本篇では担任の先生を好演)が檀上に上がった。

執筆者

寺島まりこ