3年恋人を待ち続けた信じる眼差しの力。映画「永遠の待ち人」北村優衣公式インタビュー
太田慶監督(『狂える世界のためのレクイエム』『桃源郷的娘』)の「永遠の待ち人」が、8月30日(土)~9月5日(金)の1週間、大阪・シアターセブンで公開される。
ドストエフスキーの短編「白夜」に着想を得て、紡いだ新たな物語。前回、本サイトに届いた太田慶監督の公式インタビューを紹介した。
ドストエフスキーの「白夜」がモチーフ。その先の新たなエンディングとは?映画「永遠の待ち人」太田慶監督公式インタビュー
続いて、ヒロイン・美沙子を演じた北村優衣の公式インタビューを紹介したい。
北村優衣は、2022年に公開された『ビリーバーズ』(城定秀夫監督)では、孤島で共同生活を送る宗教団体の信者「副議長」さんを大胆かつ繊細に演じ注目を集めた。
「永遠の待ち人」では、帰らない恋人を3年も待ち続ける美沙子を好演。観念的な世界観の中、愛を信じ、生きる力に満ち溢れた眼差しで主人公を変えてゆく。インタビューでは、その信じる眼差しの強さがどこから来るのかに迫っている。
<舞台挨拶情報>
劇場:シアターセブン
8月30日(土)太田慶監督
8月31日(日)太田慶監督、永里健太朗
「永遠の待ち人」北村優衣公式インタビュー

――本作出演のきっかけをお教えください。
北村:監督の太田さんが、私が以前出演した『ビリーバーズ』を観てくださって、美沙子役にピッタリなんじゃないかとオファーをいただきました。
――ルキノ・ヴィスコンティ監督とロベール・ブレッソン監督の『白夜』は、配信されていないですが、観たことはありましたか?原作は読みましたか?
北村:ブレッソン監督の『白夜』の4Kレストア版が公開されたので、ちょうど1週間前に『白夜』を観に行きました。『永遠の待ち人』と繋がるところもありましたが、『白夜』は若い二人の話なので初々しい青春のように見えました。
ブレッソンの『白夜』のマルトは可愛らしい健気な少女で、待っていたのは1年だけれど、本作の美沙子は3年なので、確固たる信念という違いがあると思いました。美沙子は「愛とは?」「永遠とは?」を突き詰めて考えている人で、マルトと美沙子はそもそも求めているものが違うんじゃないかと思います。

原作も読みました。原作と方向性がちょっと違うから、あくまでも参考にしたという感じです。そちらでも恋人を待っている女の子は幻想的な感じで、そこは本作の美沙子にも近いところがあるので取り入れましたけれど、「ここは一緒にしたい!」という気持ちはなかったです。
――脚本を読んだ時の感想を教えてください。太田監督とは何か話しましたか?
北村:難しかったです(笑)。ただ、太田監督がやりたいことが明確なのはお話ししていて伝わったので、監督のやりたいことをしっかり務めようと、ディスカッションをしました。『ビリーバーズ』が新興宗教の話だったので、演じた副議長という役の一つのものを信じる眼差しは今作でも生かして欲しいと言われました。美沙子は、3年間恋人を待ち続けるという役で、自分の中での哲学があったり、言葉に強い力がある人なので、執念は意識して欲しいという話をされていました。

――演じた美沙子をどのような人物だと捉えましたか?
北村:美沙子は、どんな人か読めなかったです。毎日彼との待ち合わせに行っていて、「仕事は何をしているのか?」と思うので、美沙子という人物を掘り下げるというよりも、太田さんの伝えたい言葉、哲学的な要素を一つ一つ遜色なく偏見なく伝えるということを意識しました。
泰明にとって美沙子がどういう存在であるべきかという方を考えました。
――「彼が来るまでずっと待ちます」と3年間待っている美沙子は理解できましたか?
北村:できないです(笑)。個人的には「3年間同じ人を待ち続けるなんて無理!寂しい!」となってしまうので、無理ですけれど、美沙子は信じたいという気持ちが強いので、そこだけは絶対にブレないようにしました。観ている人も、美沙子がどういう人物かわからないと思うし、一人一人それぞれ捉え方があると思うので、その余白を残しながら、待ち続けるという信念だけは絶対にブレないように意識しました。
――3年間待っている恋人・慎一との出会いのシーンも、美沙子を演じる上でヒントになったのでしょうか?
北村:そうですね。ときめきというか、ドキドキ以上の「運命だ」「この人しかいない」みたいな強い出会いのシーンになればと思いました。そのシーンの撮影は後半だったので、それまではまだ会えていない慎一を想いながら演じていました(笑)。

――哲学的なセリフが多かったですが、日常会話の作品と、どう違いましたか?
北村:違うところばっかりでした(笑)。もちろん頭の良い方はパッと出てくるでしょうけれど、私はそうではなく、自然と会話して出てくる言葉ではないので、やり取りをするのが難しかったです。泰明のどういう言葉を受けて、この哲学の言葉が出てくるのかっていうのは、自分の中でも探りながらやっていました。泰明に言っているようで自分に言っているような言葉なので、そのバランスは意識しました。
――泰明役の永里健太朗さんと共演していかがでしたか?
北村:寡黙な方でした。読めないところがまた泰明っぽくて。謎めいているところがあって、興味を持ったんですけれど、これ以上聞いてはいけないんじゃないかと思って程よく接していました(笑)。
――ロケ地はいかがでしたか?
北村:お台場の近くで毎日朝から日が暮れるまで撮影したんですけれど、日が暮れる時がすごく綺麗で!環境としてすごくよかったです。

――本作の見どころはどこだと思いますか?
北村:泰明と美沙子の出会いから徐々に日が経ち、関係性ができた中で迎えるラストです。泰明と美沙子の関係性が変わっていくところも見て欲しいですし、美沙子の強い意志がどこから来ているのかというのをそれぞれ考えられるんじゃないかなと思います。「自分はこんなに待てるかな?」だとか自分の中での「愛」とか「永遠」とかの定義みたいなものをわかりやすく美沙子は提示しているので、「自分だったらどう考えるんだろう」だとか、思考ができるんじゃないかなと思います。
――読者にメッセージをお願いします。
北村:映画は映画館で観るのが一番だと思うので、大きいスクリーンでこの映画を楽しんでもらえたらと思います。