◆ジェームズ・ハント (クリス・ヘムズワース):マクラーレン
直感型のドライビングテクを誇り、奔放な性格で誰からも愛される天才レーサー。

◆ニキ・ラウダ (ダニエル・ブリュール):フェラーリ
分析型の隙のないレース運びとメカにも才能を発揮する、冷静な判断力を兼ね備えた秀才レーサー。

キャラクターも正反対、全くタイプの違う走りをする二人は、常に比べられ、何かと衝突をしてきた。そんな2人がトップを争った1976年。トップを走っていたラウダはニュルブルクのレースで激しいクラッシュに見舞われ、絶望的な怪我を負う。再起不能、と思われていたラウダは、わずか6週間後、衝撃的な姿で再びサーキットに上がる。シリーズ最終決戦の舞台は日本の富士スピードウェイ —— 彼らはライバル以上のつながりを感じながらアクセルを踏みこむ——。

「ポニーキャニオンアクション映画 Blu-ray&DVDキャンペーン“男の絆”」(9月末終了)の一作品、『ラッシュ/プライドと友情』を元レーシングドライバーの長谷見昌弘氏が詳細解説! 実は長谷見氏は映画の舞台である1976年の日本GP(正式名称は1976年F1世界選手権in Japan)に出場した経験があるレジェンドで、実際のニキ・ラウダ、ジェームズ・ハントと激闘を繰り広げた日本人ドライバー! 日本人は周回遅れとバカにされていた時代、予選1回目で4位! ラウダ、ハントを追ってポールポジションを狙うも予選2回目で大クラッシュと、壮絶な記録を残した名レーサーだ。その長谷見氏、「当時、安全という言葉はなかったと思いますね」と、劇中の大迫力のレースシーンを専門界の視点で太鼓判! 実は同作に長谷見氏がモデルだろうHASEMIという日本人のレーサーとして“出演も果たしている(?)”長谷見氏が、男の胸熱ドラマ『ラッシュ/プライドと友情』を熱く語ります!



Q:感動の人間ドラマ、『ラッシュ/プライドと友情』を今回、ご覧になって、いかがですか?
 
実際のレースのシーンに、マシンですね。よくそろえたなと思います。このふたりもよく似ている(笑)。ハントとラウダにソックリ。彼らの性格も我々が得ている情報の通り、上手く表現できていると思います。ただ、国内レースの感覚で言いますと、F1の世界の女性関係にはビックリしました(笑)。僕の場合は貯金、読書、親孝行でしたが(笑)。それと、歓迎パーティーの席でハントは実際に裸足で来ていたので、それが今回の映画に出てきた。僕は映画の中には出てこなかったですがね(笑)。全体的によく再現したなという印象です。

Q:レースシーンが大迫力という評判を集めた作品ですが、プロの視点でいかがでしたか?
 
いや、よく出来ていました。特にラウダがクラッシュするコースのシーンは何回も観ましたが、ホンモノかCGかよくわからないほど、本当によく出来ていましたね。この走行シーンに関しては、よく出来ていると思います。僕たちの国内レースでも、毎年ふたりは仲間を亡くした。でも、レーシングドライバーは誰一人として、怪我するとさえと思ってない。だから走れるわけですね。僕自身クラッシュした際は、終わったと思った。それ以前にガードレールに向かって行く時に、終わったと思いましたよ。猛スピードでガードレールに斜めにぶつかりましたが、幸い投げ飛ばされて無傷で助かった。車はグチャグチャですが。

Q:それだけの大事故を経験した後は、トラウマになってハンドルが握れなそうですが(笑)。
 
クラッシュした車が、すぐ出来上がった。マトモには走らなかったですがね。僕の信念ですが、クラッシュしたら早く乗る。そうすればトラウマなど、なくなっちゃいます。2〜3週じゃ思い出しますが、10週もしていれば忘れちゃう。レーシングドラバーの性ですね(笑)。

Q:本作の主人公で、実際のジェームズ・ハントとニキ・ラウダの印象は、いかかでしたか?
 
もちろん、ミーティングなどで一緒になることはあるので、僕自身生で何度も見たことがあります。サーキットに全員が集まった時に、ラウダは全チームのパドックを回ってマシンをチェックしていましたよ。日本人のマシンもよく見ていました。いわば“素人”が作ったマシンをね(笑)。彼以外は、バカにして、見もしなかったですね。あれは、たいした男ですよね。僕からですか? いや話しかけられないですよ。チャンピオンですからね(笑)。

Q:ライバルということを意識した時、ご自身にとってのライバルは、どなたになりますか?
 
顔と言葉には出さないけれど、もっと強烈なモノを持って戦っている同志のこと、それがライバルですかね。僕たちのいる場所はタイム、タイム、タイムの世界で、それは現代でもそう。言ってみれば、その時に隣にいるレーサーがライバルですよ。予選が終わって、残った2〜3人がライバルとなるわけですが、いつも張り合っていた同志で言うと、僕と星野(一義)。同じ日産チームなのでたえず一緒で、たえず同じレースに出ていた。今でもチーム監督同士で、まだ競い合っていますよね(笑)。もう、60年近いライバル関係ですよ(笑)。

Q:最後に『ラッシュ/プライドと友情』を未見のファンに一言メッセージをお願いします!
 
当時のレースは危険でしたが、現代のレースは危険じゃないです。マシンの安全性が高くて、世界中のサーキットも安全になりました。その1976年当時との格差を観てほしいですね。今のサーキットと比べて観てほしい。当時、安全という言葉はなかったと思いますね。70年代初頭までシートベルトもなかった時代なので。ちょっと専門的な視点ですかね(笑)。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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