『ある愛へと続く旅』ジェンマ役、ペネロペ・クルス オフィシャル・インタビュー
ペネロペ・クルス×エミール・ハーシュが贈る、
この秋もっとも深い感動の物語!
愛した記憶を巡って、いま真実のあなたに会いにゆく─
誰もが驚嘆! 母なるペネロペ・クルス
『バニラ・スカイ』(’01)『ボルベール <帰郷>』(’06)『それでも恋するバルセロナ』(’08)など華々しい活躍をみせるスペインを代表する世界的女優ペネロペ・クルス。本作では初々しい学生時代から高校生の息子と向き合う母親まで、女性としての長い年月をリアルに体現した。恋する女性の笑顔、愛する人を失った悲しみ、真実に向き合いもう一度深い愛を知った時の涙…観る者を共感させずにはいられないその演技に誰もが驚嘆する。共演は『イントゥ・ザ・ワイルド』で鮮烈な印象を残したエミール・ハーシュ。正義感と優しさにあふれるカメラマン、ディエゴは彼の新たなキャリアを決定的なものにした。
Q:『ある愛へと続く旅』の原作「VENUTO AL MONDO」についての感想を教えて下さい
ペネロペ:私が今までの人生で読んだ中で、一番強烈で美しいストーリーでした。映画『赤いアモーレ』の原作「動かないで」を読んだときと同じように感動しました。「動かないで」は飛行機の中で読んだのですが、涙がこぼれてきて、あの物語とあの主人公に取りつかれたようになったんです。今回「VENUTO AL MONDO」を読んだ時も同じように感動しました。物語は全く異なりますし、主人公のイタリアとジェンマも昼と夜ほどの差があります。でも私は彼女たちに同じ情熱を感じました。勇気をもち、小説を映画化ができて本当に良かったと思います。このような物語を映画化するのは本当に難しいことですから…この原作本は傑作です。
Q:今回自分がジェンマ役を選び、演じたことについて教えて下さい
ペネロペ:何年か前、おそらく3〜4年くらい前から、監督のセルジオとこの本の映画化について話し合ってきました。女性としても女優としても、自分の息子が生まれる前ではなく、子供を持ってからこの映画を撮れたことは、とても面白い経験でした。なぜならジェンマが今どの時点にいて、どの時点には決して達することがないかがより理解できるからです。そうでしょう?私のこの人生経験がなかったら、この主人公ジェンマの気持ちを違う風に理解していたと思います。それは、違うだけであって、彼女をより良く理解したとかより悪く理解したとかいっているわけではありません。ただ違う印象を持っただろうと。経験しなくても理解はできるかもしれませんが、私は彼女がどの時点にいて、どの時点には決して達することができないかを判ったうえでこの役を演じることができたので、よかったと思います。
Q:セルジオ・カステリット監督についてはいかがですか?
ペネロペ:彼は素晴らしい人です。私の知る中で彼は最高の俳優の一人だと思いますが、映画のセットで監督としても素晴らしい人です。俳優がどうやって役に入っていくかのプロセスをよく分かっている人です。そして、そのプロセスを非常にリスペクトしてくれます。俳優が真実を発見するまで自由にやらせてくれます。私はよくセットで監督にお礼を言っています。だって、演じる上で何でも試させてくれるからです。リスクを冒したり、うまくやらなかったり、うまくやったり、どんな風にでも試させてくれます、何も怖がらずにね。そして同時に自由を与えてくれますし、どんなことにも気付いてくれます。私にとって『赤いアモーレ』も『ある愛へと続く旅』でも。どちらの作品も刺激的な経験だったので、どちらの方が刺激が強かったとは言えません。でも、この映画の方がおそらく長丁場でしたね。とても素晴らしい経験でした。また彼と仕事をするのが待ち遠しいです。
Q:共演した俳優さんたちについての感想を教えて下さい
ペネロペ:皆さん素晴らしい才能の俳優さんたちです。エミールやアドナン、サーデット、皆そうです。それに脇役の人たちも。この映画の配役は絶妙で、セルジオは一人たりとも間違った選択をしませんでした。彼らのおかげで素晴らしい映画になったと思います。
Q:この映画で演じたジェンマについての感想を教えて下さい
ペネロペ:この役を演じてとても幸せでした。でも非常につらく、暗い日々も過ごしました・・・かの地に行かないでこの役を演じるのは無理ですから。私は、ジェンマという役に対して尊敬と愛情を感じています。この原作を読んだとき、500ページもあるのに1日半で読み切りました。そして、他に何も手がつかなくなりました。主人公のジェンマのことばかり考えて。彼女に惚れ込んだんです。なんだかとても変な感じです。撮影が終わったら、ジェンマを手放さなくてはなりません。ジェンマの衣装を脱いだら、またそれを身に着けることはないんです。とても変な気持ちで、寂しくもありますが、一つの過程を完了することは嬉しくもあり、すごく変で、混乱した気分でした。
Q:映画の舞台となったサラエボはいかがでしたか
ペネロペ:サラエボはすごい街です。人々も含めて…。現地に行かなければ、あの戦争のことを理解するのは難しいです。自分の目で場所を見て、どのような位置づけなのかを見ない限り。人々と話さない限り。信じられないような戦争です。私やあなたたちの国からこんなに近いところで起きていたこととはとても信じられません。私の心の中には、今、いつもサラエボがあります。また行かなければと思っています。忘れられないんです。特別な場所で、他とは違うエネルギーがみなぎっています。世界のどんな街とも異なっています。 私はサラエボでとても幸せでした。2回行きましたが、1回目は夏の初めで、2度目は11月でひどく寒かったです。サラエボではとても幸せでした。現地に行くと、まだ病院が破壊されたままだったりするのを見たり、子供を亡くした女性の話を聞いたりすると悲しくなりますが…
Q:この映画では20代から50代へと異なる年齢のジェンマを演じ分けたことについてはどのように感じていますか
ペネロペ:このような年代を旅する役をいただけて、とても光栄です。監督のセルジオも言っていましたが、50代の現在を撮ってから若い頃の役に戻るのは面白かったですね。普通の撮影なら逆なのに・・・。私自身ジェンマについて多くのことを理解するのは面白かったです。それから戦争中の場面や、彼女がサラエボでやっと自分の息子を見つけるシーンなど強烈な場面を撮りましたが、すでに思春期の息子との関係を撮影した後だったので、とても面白い経験となりました。
Q:息子役を演じたピエトロ・カステリットについて教えて下さい
ペネロペ:とても良かったですよ、ピエトロはすごく優秀です。やさしい人ですね。彼と私は撮影中ちょっとおかしな関係にありました。私を見るたびに、彼はびっくりするんです。 だってジェンマは息子を愛していますが、とてもつきまとって離さないような性格の母親だからです。イタリア語でRompi coglioni(口うるさい人)と言うのですが、まさにそれなんです。 彼も彼女を愛していますが、彼女にとっては息子がすべてなんです。私はこの物語が大好き、出演できてとても幸せだと思っています。観る人の心に響く映画に絶対になったと思います。
Q:この映画のラブストーリーの部分については、どのように感じていますか
ペネロペ:とても美しいラブストーリーです。ラブストーリーがうまく作用しなければ、残りの部分も無意味なものになります。なぜなら、この映画は彼女が永遠に失った愛を描いているからです。そして、彼女の人生にはずっとこのことが残っているのです。彼女は人生最大の愛を、悲惨な形で失くしてしまったのですから。ですから幸せな時、希望にあふれている時というのは、監督が言うように、おとぎ話のようでなくてはなりません。その部分がとても素敵です。また友人ゴイコとの関係も素敵です。すごく特別な友情なんです。おそらく別の状況だったら、彼との関係はまた別のものになっていたかもしれませんが、そうはならない。彼女が愛しているのはディエゴだから。素晴らしい素材があり、すべてが描かれているこのような映画の時には、真実を見つける鍵を持っているようなものです。素晴らしい原作本に感謝しますし、監督と奥さんである原作者が一緒に書いた台本にも感謝しています。この映画の台本が一番難しかったはずです。後で撮影することよりも難しいでしょう。あの原作から台本を起こすのは本当に難しいです。私は台本を読んだ時には驚きました。全てが入っていて、何も省かれていませんでした。全ての見るべき心臓部が含まれていて、映画で観なければいけない全てが含まれていたのです。
執筆者
Yasuhiro Togawa