大きな転換期を迎えたCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)、第7回大阪アジアン映画祭【インディ・フォーラム部門】として3月10日より開催!助成監督インタビュー・『Dressing UP』安川有果監督
今年度から大阪アジアン映画祭の【インディ・フォーラム部門】となったCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)。アジア諸国の監督たちを招いて行うシンポジウム<アジアン・ミーティング>とリンクしたことで、どういった変化を目指しているのか。本格始動したワークショップの目的とは。そして、今年度の助成監督3名の実感とは?
3月10日から行われる【インディ・フォーラム部門】上映を目前に控え、CO2事務局長と上映ディレクター、助成監督たちに緊急インタビューを行った。
第3回:助成監督インタビュー
第8回CO2助成作品『Dressing UP』安川有果監督
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■経験豊富なスタッフとの現場
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——まずCO2に参加したきっかけを教えてください。
安川:締め切りがないとなかなか動き出せなくて…。やりたいことの妄想だけが膨れ上がって現実的には何も動いてないという状態でした。でもどうしても撮りたい話が思いついたので、今年中に撮りたい!と思ってCO2に応募しました。今までも何回かCO2に応募していたのですが、いつもあらすじを最後まで書けないまま応募していました。でも今回はちゃんと結末まで書いたもので応募して、それが選ばれたので嬉しかったです。
——スタッフはどうやって集めましたか。
今までのCO2はスタッフ編成に関してはあまり口出しすることはなかったそうなのですが、今回は既にプロとしても現場で活躍しているスタッフを入れる、ということが前提になっていました。今回の作品にとってどういう人と組むのがいいのか、富岡さんの意見なども取り入れながら、私が直接声を掛けていきました。
どのスタッフも、私よりもずっと現場経験が豊富な方たちばかりだったのですが、私が脚本に時間が掛かり過ぎたこともあって、作品のことについて話す時間があまり取れなかったことが残念で、申し訳なかったと思っています。
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■「葛藤」ということについて考えてみました
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——テーマはどうまとめていきましたか。
富岡さんが、最近の自主映画の傾向として、葛藤、人と人とのぶつかり合いを描かないよね、というようなことをおっしゃっていて、「葛藤」ということについて考えていたんです。
確かに、脚本の本とかたまに読んだりしていたら、「葛藤を描け」みたいなフレーズがよく出てくるんですが、実際自分が生きている実感として、そんなに人と人ってぶつかり合わないよなーっと思っていたんです。というより、皆忙しいし、スピードが求められることが多くて、葛藤している場合じゃない、という雰囲気があるなと感じていたんです。
ちょっと前に流行ったKY(空気が読めない)っていう言葉も、スムーズに流れている場に葛藤を持ちこむような人がいたら鬱陶しい、っていう気分の表れなのかなとも思ったりして。
そんなことを考えているうちに、変なひとり言を発してしまって場の空気を乱してしまうという主人公のキャラクターや、ルーティンワークのように毎日娘にプレゼントを買ってくるといういびつな父親のキャラクターができてきました。
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■祷キララさんの表情に注目してほしい!
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——タイトルはどういう意味ですか。
タイトルの「Dressing UP」は、仮装遊びという意味があるんですが、日常の中のフィクション、ということも今回のテーマにしたいなと思っていて、コスプレや変身の要素も盛り込んでいるのでこのタイトルにしました。でもわかりにくいよって言われてあまり好評ではありません…(笑)
——見所を教えてください。
安川:今まで作ってきた作品は、いろいろうまくいってないけど、このシーンはすごく気に入っている!というところが絶対あったんです。でも今回は、ここを見て!というよりも全体を通して今まで作ったものの中で一番まとまっていて、どういうお話かがちゃんと分かる作品になっているのではないかと思います。ですので、最後まで見てください(笑)
あと、主役の祷キララさんの、たまに見せる凄みのある表情を見てほしいです。
——CO2に参加して体制はいかがでしたか。
安川:時間がない、ということは本当に感じました。脚本や編集にはもっと時間を掛けたかったけど、それも分かった上で応募しているので文句は言えないです。ただこれからCO2に応募しようと思っている方にアドバイスができるとすれば、脚本がほぼ完成している状態で応募したほうがいいよ、ということですね。
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■今まで夢見がちにやってきたけど
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——『Dressing UP』を今後どうやって展開していく予定ですか。
安川:たくさんの人に見てもらえるように、上映活動をがんばっていきたいと思っています。
——今後も映画は撮って行きたいと思われますか。
安川:今回、シナリオ、人集め、準備…と一つ一つ進めて行きましたが、撮影のときに既に息切れしてしまっているような状態でした。出来あがったものを見ても、どうしてもっとこうできなかったんだろう、と悔しい気持ちでいっぱいです。
だから、もっといろいろな力を身につけて、また撮りたい…と思いますが、自分の資金を全部つぎ込んで映画を作る、というのは今回でお終いにしたいというのが正直な気持ちです。
でも今回撮ったことは全く後悔していませんし、助成金をいただいたことで自己資金だけでは撮ることのできなかった内容のものを撮ることができたので、CO2には本当に感謝しています。
夢見がちに今までやってきたのですが、年齢的なことを考えても今が考え時だなと。今度どうしても撮りたい物語ができたときには、企画書やシナリオをいろんなところに持っていって、資金集めなども自分でできるようになりたいです。
あと、仕事として映画や映像に関わりながら食べていけるようになりたいです。
執筆者
デューイ松田
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