“僕の頭にあったのはタイトルだけ。でも幸運にもうまくものになった” 『ビー・ムービー』ジェリー・サインフェルド
毎日せっせと仕事に励む働きバチとハチミツを盗む人間とミツバチの関係、そのバランスが崩れたら世界は大きく変わる!?
『ビー・ムービー』は主人公バリーの大冒険を通してミツバチと人間のすてきな関係を軸に描いたファンタジーアドベンチャー。ドリームワークスならではの色彩豊かな世界観に加え、超豪華なボイスキャストがユーモアたっぷりのドラマを繰り広げる。
大冒険に挑むバリーのボイスキャストと製作、脚本を手掛けたジェリー・サインフェルドのオフィシャルインタビューをお届けします!
——本作のきっかけについて
スティーヴン・スピルバーグと夕食を一緒に食べているとき、このアイデアが思いついて、「『Bee Movie』という題のハチの映画はどうだろう?」と切り出してみた【訳注:B movie=B級映画のもじり】。すると彼は興奮して、「そりゃ面白いアイデアだ。タイトルがいい。ジェフリーも気に入るよ」と言った。それからこの企画にゴーサインが出た。でも映画については別にまだアイデアはなかった。僕の頭にあったのはタイトルだけ。でも幸運にもうまくものになった。
——ハチが人間を訴えるというアイデアについて
ハチの物語だったら、何を語るべきか? 話が続きそうに思えたのが、人間がハチミツを盗んでいるという点だった。つまり、ハチは一生懸命働いてハチミツを作り、人間はそこを意識しないでただハチミツを取るだけという点だ。ハチは自分たちのためにハチミツを作っているのに、人間はハチの巣に行って取ってくるだけ。瓶に詰めて、ラベルを貼り、それで金を稼ぐ。ハチはそれでもひたすら働き続ける。だからハチはその点をわかってほしいのではないかと思った。そういういきさつだ。
——バリー役について
僕が演じるバリー・B・ベンソンは、大学を卒業して、やることを探している。まだ何が自分に合っているのかはわかっていない。それでいろいろあって、巣の外に出ることになる。人間の文化を少し学んで、人間の友達ができる。このことで、バリーは横道にそれ、人間界に気を取られて夢中になる。それで彼の人生は別方向に進み出し、ハチの進むべき道から完全に外れる。
——ハチ映画とハチのルールについて
メイキング風景はかなりたくさん撮った。アニメ映画を作るということは、偽の世界を作るようなものだから、その世界の決まり事を作らなければならない。実際に何でも好きなように作れる。今回の決まり事は、変な形、また丸や三角のものはないということ。六角形こそハチの形だ。ハチが六角形を考案した。午後6時以降は寝ているってことで、ブンブン言わせないというルールもあった。たくさんの決まり事を作ったが、結局、物語の最大のルールは、ハチはいつもしゃべっているけれど、決して人間に話しかけてはいけないというもの。その理由は人間とはこれまでも十分問題が起きているから。
——ヴァネッサについて
バリーが女性のヴァネッサと友人になったのは、彼女のアパートで他の客人から殺されそうになったのを助けてもらったから。バリーはそのまま帰る気になれなかった。命を助けてもらった以上、礼くらいは言わないと帰れない。それでハチの掟を破ることになるけれど、お礼を言いたくてヴァネッサに話しかける。命の恩人に礼も言わないのはあまりにも無礼だからだ。
——ヴァネッサ役のレニー・ゼルウィガーについて
前からレニー・ゼルウィガーの大ファンだった。すばらしい女優だ。どんな瞬間も演じられる。ドラマチックな場面も、おかしな場面も、ばかばかしい場面も、微妙な場面も。とにかく驚くべき演技力だ。彼女と数回会ったことがあったが、この役をとにかく演じてほしかった。それに声もいい。たくさんの女優がいて、いい女優にはなれるけれど、たまに声がアニメには向かない人がある。アニメでは声がすべてだからね。彼女に電話して、この企画の話をした。幸運にも彼女も気に入ってくれて、出演してくれた。
——アダム役のマシュー・ブロデリックについて
マシュー・ブロデリックは友人で、とってもおかしな奴なんだ。実にそっけない話し振りだけど、そこが大好きでね。一緒に仕事ができたら楽しいだろうと思っていた。実のところ映画を作るなんて考えてもいなかったから、これは一緒にやれるいい機会だと思った。しかもこういう映画なら俳優も喜ぶと思って。Tシャツ姿でやってきて、いろんな録音はあるけれど、45分間出入りしてればいいんだから。本当に面白い男だよ。とにかく自分の好きな人を集めた。自分が一緒にやりたい面白い連中を集めた。
——人間がハチミツを盗んでいるという発見について
劇中でバリーは、人間が自分たちのハチミツを食べているという大発見をする。それまで何でもなかったハチミツが、この事実を知った途端、行動を起こし出す。まずどうやって人間がハチミツを手に入れているのか、人間はハチミツをどうしているのか、自分はそれを阻止できるのか、突き止めようとする。ハチが心をかけてる唯一の所有物、ハチミツを取られているからだ。バリーは実際に挑み、人間のハチミツ摂取を止める。
——アニメを指導した ジェフリー・カッツェンバーグについて
アニメ映画の作り方を知っているわけではなかった。だからジェフリー・カッツェンバーグに何から何まで教わった。ずっと個人指導してもらった感じだった。何が面白いか考えて、書くことはできるが、その先のことはわからなかった。だからまず彼にアニメ映画製作の特訓コースに入れられて、それから自分で作らされた。この映画ができたのも本当に彼のおかげだ。何たって僕が製作に関われたのは、彼が製作のノウハウを教えてくれたからだ。
執筆者
Miwako NIBE