「最初彼とやると聞いた時は、ちょっとヤバイと思いましたけどね」(哀川)、「彼は本物だから、万一こっちが(技を)止める範囲に入ってしまい、当っちゃったらどうしよう…というのは常にありましたね」(加藤)。日本のアクション映画に多数参加している二大俳優に、そんな脅威?の念を抱かせた男の名はケイン・コスギ。彼にとって待望のアクション映画初主演作となる『マッスルヒート』が、この度完成。CG等によるエフェクト効果がバリバリなアクション・ムービーが全盛の今、敢えて全編、特殊効果に頼らず、スタントなしで人間の肉体のみで表現できる限界に挑戦し、本物のアクションを披露する情熱のエンタテインメント作品を目指した本作は、香港でジャッキー・チェン作品のアクション監督をつとめたサム・ウォンがアクション監督として参加、『弟切草』等の下山健が映像処理的な小細工無しで、人の息遣いや痛みが伝わってくるアクション映画に仕上げた。9月25日、監督をはじめ主要キャスト及び香港から来たサムらによる、完成披露記者会見&試写会が開催された。

$navy ☆『マッスルヒート』は、2002年10月26日(土)より全国東宝系にてロードショー公開!$











Q.ご挨拶をお願いします

下山天監督——今日はこんなに皆さんに来ていただいて緊張しております。この映画は、観るほうにもかなり体力を強いる上がりになっていると思いますので、今日は覚悟して見てください。
最初サム達のチームと始めたときには、撮影スタイルの違いというのが明確にありました。ただ、彼らも日本の良さを汲み取ってもらい、こちらもアクションを撮る上では彼らは世界を舞台に仕事していますので、これは日本映画を変えてもいいんじゃないかという部分が随所にあって、それを早い時期にどっちのやり方と言うことも泣く、日本・香港合同による我々だけのやり方でアクション・シーンが組み上がっていった感じで、満足です。それこそプラス・アルファが出過ぎるくらいで、俳優の皆さんには生傷の絶えない現場でしたが。

ケイン・コスギ(ジョー・ジンノ役)——日本に来て、今年10年目です。やっとアクション映画が出来まして、すごく嬉しいし是非ファンの皆さまに見て欲しいし、これからもっともっと頑張って世界のアクションスターになれるよう頑張りたいと思います。
劇中では15メートルからの飛び下りシーンがありましたが、現場で初めて飛び下りる船が動いてるのを知りビックリしました。今回は通常のトレーニングに加えて、映画に入る2ヶ月くらい前から新たに中国武術のトレーニングも行いまして、なるべく新しく見た事の無い技を練習しました。
最近の映画はCG等使ってますが、今回はそうしたものは何も使わず身体一つだけですので、そのあたりを是非見て欲しいです。

哀川翔(桂木亜久里役)——この映画は今も話がありましたが、ケイン君がものすごく頑張って、ホントに寝てるのかな?と思うような撮影をしてました。自分が現場に行くと、とても回りに気を遣いながら、自分の出番で無い所も真剣に様子をうかがってるわけですよね。その姿勢には、やはり感動するものがありました。また、今回のこの映画は、下山監督の思いが充分伝わる素敵なものが出来上がったと思っております。皆さんも、これから映画をご覧になるわけですが、じっくりそのへんを楽しんで帰ってください。
銃撃場面は多かったですね。朝から晩まで撃ってましたから。ワンシーンで66発撃ってます。アクションもそこまでやるかってくらいやらせてもらいました。とても素敵な作品に出れたと思っています。

橘実里(桂木亜加音)——今回アクション映画という自分になかった分野に挑戦させていただきました。すごく本格的な皆さんと、本格的な映画に出演できたことを誇りに思います。初めてのアクションはやはり大変でしたが、本格的なベテランの方々揃いなので、手取り足取り教えてもらいました。すごい迫力があるので、楽しみにみてください。

金子昇(石橋憲役)——アクション映画なんですが、今回僕はパンチ一つ打ってません。まぁ、寂しいような感じもするんですが、役的にそれがすごくはまっていてよかったのではないかと思います。曲のあるキャラにしたいなと思いまして、できるだけ僕が今まで演じてきた役とは違う方向にやりたいと思って役作りをしました。今日試写ですが、何回観ても楽しいと思いますので、公開日も是非また観に行ってください。

加藤雅也(黎建仁役)——会場を見渡しますと、かなり女性のお客さんが多いようで、アクション映画というと男性が多いのが普通な中で、こういう傾向はヒットするのではないかなという感じがします。今回最初に台本をいただいたときに、「これ、僕が跳び箱飛ぶのか?」とマネージャーに聞いたんですけど、そうではないということなのでやることにしました。ケインが主役と言うことで、身体を鍛えなければいけないと。ケインの身体は本当に凄いんですよね。甲虫みたいで。僕らはいくら鍛えてもそこまではなれないから、何処でケインガ裸になるかは凄く心配だったんですが、なかなかタンクトップを脱がないんでこれはいけるなと思いました。ほぼエンディングで初めて脱ぎまして、それまではほぼ互角のように見えましたが、そこからは負けました。皆さん、そういうところも楽しんで見てください。

サム・ウォン(アクション監督)——私達はこの作品を撮る前に色々心配もありましたけれど、結果的にこのような形で皆さん一緒にこのように作品を盛り上げていただいて、私も撮影当時の色々な楽しいエピソードを振り返って、話が出来て嬉しく思っておりますし、感激しています。スタッフの皆さんの協力と努力によって、この日を迎えたと思います。自分にとっても、日本の皆さんとの仕事をし、新たな一歩を踏み出したと言えると思いますので、今後も私の作品を御見せする機会があればと思います。
ケインさんは未だ若いですし、将来性では素晴らしいものがあると思っています。将来的にはジャッキー・チェンに迫る大スターになると、私は見込んでおります。また、アクション監督として指導した上でも手ごたえを感じましたし、私が思った通りの技を再現してくれるのは素晴らしいと思います。相手役の加藤さん、相川さんも素晴らしいです。











Q.CG下山監督に、全盛の現在、何故敢えてアナログな作品を目指したのでしょうか?
下山監督——今の映画は、CGだったりスタントだったり、ヴィジュアルでは凄いことが成立していても、観ていてリアルさとか痛みを感じなくなってきていると思うんです。今世の中がデジタルとアナログの変わり目に来ている時に、生身の俳優さんたちの身体を使って、こちらもカメラワークと、作りこみをしない生の肉体のぶつかりあいの映画を作ってみたいと思ったんです。

Q.ケインさんに、今回スタント無しで15メートルのダイブにも挑まれてますよね。
ケイン——昔から憧れのアクション・スター、ジャッキーさんとか、自分もスタントを使わずに全部やってみたいし、特に今回の映画はそういうスタントを自分でやる機会があって嬉しく思っています。怖さとかは全然無くて、スタッフの皆さんが信頼できる人たちで、ちゃんと安全の方はチェックしてもらったので、楽にスタントが出来ました。

Q.哀川さんは沢山のアクション作品に出られてますが、今回は初めてのスタッフが多かったですがいかがでしたか?
哀川——やはり通常日本でやるスタントやアクションの形と、今回は香港からサムさんが来られてやはり手法が全然違うんですよね。去年、香港に行ってやってきたものもありましたから、多少は自分の身についているところもありましたけど、OKを中々簡単に出さないんで。闘うシーンになると、一人に1日かかるんですよ。その妥協を許さないという点で、映画に対する前向きさを感じますし、自分達も簡単にやれるものではないと思ってはいますが、その中で一番いい所を見抜いてくれる、そういう素敵なところがありまして、撮影は過酷なところもありましたが、それが映画なんじゃないかと思います。

Q.橘さんは紅一点のヒロインですが、いかがでしたか?
橘——女であることもそうですが、私一人だけアクションド素人だったので、皆さんの足を引っ張らないように、哀川さんから殴られるところのリアクションとか沢山助けていただいて、勉強させていただきました。本当に安全面では気を遣っていただきましたので、怖くは無かったですね。

Q.一発のパンチも無かったとのことですが、こういうことがやりたかったとかありますか?
金子——アクション映画に出ると聞いた時には、アクションをやれるとやる気満々だったのですが、台本を読んで少しはあるだろうと思って現場に入ると全く無く、でもキャラ的にはアクションが無かったほうがよりよかったのでは?という役をやらせてもらったので、フラストレーションみたいなものはなかったです。

Q.加藤さんはクライマックスで物凄い肉体を披露されてますが、身体つくりとかはいかがでしょう?
加藤——基本的なトレーニングはしてますが、今回はやはりケインが凄い身体をしてるというので、ヴィジュアル的にもこの人なら戦えるということを成立させることは気にしてましたね。ジムもたまたまケインと同じで、頑張りました。最後の闘いに関して言えば、ケインはマーシャルアーツのスペシャリストで、僕はそうではない。まともにやって差が出てしまったら、映画を観てる人も面白くないだろうと思って、何か違うものをとハンマー・アクションを提案しました。でもあれって、地面とかを思いっきり叩いちゃうと、その反動がすごく身体に来るんですね。自分で言っておきながら、やめておけばよかったかな…ってのは思いましたね。

Q.サムさんは、日本のアクション作品をどのように演出しようと思いましたか?
サム——私も完成作を見て、ひじょうに成功したと思っています。と言いますのも、私達スタッフ一同は熱意を持ってこの作品に取り組んできたわけです。アジアでは数々の映画に取り組んできましたが、日本では初めてということでしたが、単なるアクションを見せるのではなく、アートとしてしっかりしたものを皆さんに見せたいと思いました。下山監督も全面的な信頼を寄せ、まかせてくれたことを感謝しております。アクションのみならず、物語の部分もしっかりしていると思います。

執筆者

宮田晴夫

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