「映画を終えて、人を信じることができるようになりました」(加賀美早紀さん) 『プラトニック・セックス』完成記者会見
タレントとしての人気も高い飯島愛さんによる半自叙伝であり、100万部を超えるベスト・セラーとなった原作を、映画化した『プラトニック・セックス』が完成、9月25日に新橋第一ホテル東京で完成報告の記者会見が開催された。
当日は、松浦雅子監督、ヒロインが愛する本当に愛する敏海を演じたオダギリジョーさん、ヒロイン愛役でデビューを飾った加賀美早紀さん、そして原作者である飯島さんが出席し、作品が完成したばかりの現在の心境や見所などを語ってくれた。会見終了後には、初の映画出演作品で、過激で純粋なヒロインを演じきった加賀美さんに、松浦監督から花束が贈られた。
リアルで細やかな女性像を描くことに定評のある松浦雅子監督、ほぼ同時期に『ダンボールハウスガール』も公開となる。「昨日、テレビ版が放映されこの後、加賀美さんのドキュメンタリー『もうひとつのプラトニック・セックス』、そして10月20日に映画が公開されます。映画の方は映画のために作りました。主演の加賀美さんは、16歳で現役の高校生です。本当にドキュメンタリーのように、女子高校生の皆さんに観ていただきたいと思って撮りました。その違いが大きいです」と、今回の映画版の方向性をアピールした。なお完成した作品が、R-15指定となったことに関しては、「指定を受けたことは現実として淡々と受けとめていますが、R-15ということが単なるポルノと誤解して欲しくはないと強く思います。是非観ていただきたいのは、ローティーンの女子高生という気持ちで作りましたので、今中学生の子も、誕生日になった日に観ていただきたい、兎に角多くの子供達に観ていただきたいです」と、静かにしかし力強く答えた。
1万人を超える応募者の中からヒロイン愛役を掴んだ加賀美早紀さん、不思議な光を湛えた瞳が印象的だ。撮影で大変だったこととして、“夜遅くまでの撮影”“ロケ弁が苦手だった”といった高校生らしくあどけない返事を返しながらも、「はじめる前は、あまり人と話したりしなかったし、いつも自分の中だけで考えていたのが、映画の撮影が終わって色々な人に出会えてからは、話せるようになり人を信じることができるようになったのが、一番大きい」と、この夏の撮影を通して、自分自身が変っていったことを真摯に受け止めているようだ。撮影が終わり、高校の制服を着た時に「似合わなくなった」と思ったということだが、映画ではヒロインの想いとともに、加賀美さん自身の表情の変化もリアルに焼き付けられていることだろう。なお、愛を演じるにあたって、飯島さんからのアドバイスは、「自分が感じたようにやっていいよ」という言葉だったそうだ。
オダギリジョーさんは、自分が演じた敏海というキャラクターと、現実の自分とが共鳴しあえたそうだ。「彼の凄く不器用な生き方が、不器用故に人生を生きて行くには辛かろうという部分が、自分にも少なからずありました。僕はそこを、ちょっと上手く小芝居からめて人生すすめていこうと思うけど、敏海の場合はそこがちょっと足りない気がして」。現役の女高生を相手にしての演技に「始まる時は、何を話せばいいのだろう?」と思ったというオダギリさんだが、いざ撮影が始まるとそうしたギャップは一切感じ無かったとかまた、ご自身もいつか監督をしてみたいというオダギリさん、初めて組んだ女性監督の印象は「いい意味で鬼監督、凄く細かいところまで指導していただいて、それで僕にはいっぱいいっぱい。応えられたかどうかもわかりませんが、優しくすごく愛を観じました」とのこと。
原作者の飯島愛さんは、「映画を観てとりあえず嬉しかったです」と素直に映画の完成に喜ばれている様子だ。会見中も、場慣れしていない加賀美さんをフォローしたり、冗談を交えつつ終始明るい雰囲気を振りまいている。自分の人生を映画で観たことの感想に、「これは私の人生ではないと思います。普通の16・17歳の女子高生が感じたりすることじゃないかなと思うんです、今となっては。作品を観るととても年をとって過去のことになっちゃってますから、本当に加賀美さんと同じ位の女の子達が、一番リアルに感じられることだと思いますから、そのくらいの子たちに足を運んで欲しいですね」と答え、松浦監督ともども配給元の東宝に向けて、「高校生が行き易いサービスをして」とお願いする一幕も。特に懐かしく感じられた場面はと尋ねられ、「もっと酷かったです。もっといやらしい女でしたよ」と、あっけらかんと笑って応える様子からも、作品が持つポジティブな強さが感じられた。
なお、『プラトニック・セックス』は10月20日より、全国東宝洋画系劇場でロードショー公開される。
執筆者
宮田晴夫