本国フランスで賛否両論、やっぱり日本でも賛否両論!「ベーゼ・モア」公開に先駆け、来日を果たしたヴィルジニー・デパント&コラリー・トラン・ティ監督。2人を待っていたのは日本のアンダーグラウンドを代表する女性4人とのトーク・バトルだった。日時は2月9日、夜10時過ぎ、場所は恵比寿のクラブ・みるく。備え付けのスクリーンには本編のダイジェストが映し出され、人の群れが佳境に入った頃、やおら始まったショータイム、ゲストはミュージシャンのエミ・エレノオーラ、コンポーザーの塚本サイコ、女優の渡辺真起子、ウーメンオンリーイベントの仕掛け人として知られるCHIGALLIANOと濃すぎる顔ぶれ。「彼女たちは人を殺しまくってますけど、その先に見えるものは何?何がやりたいの?」。さぁ、この問いに監督はどう答えるのか!?

 
 






まずは肯定派の意見に耳を傾けましょう。「逆男尊女卑というのか、無言の反抗というのか、後半の爽快感ときたら、もう。よくぞやってくれました」(塚本)、「瞬間、瞬間、”わかるぅー”って叫びそうになったのよ。とにかく、ぶっ殺したい、っていうのありますもの」(渡辺)。これに食い下がるCHIGALLIANO。「人を殺すことが爽快感に結びつくのって・・・。それでどうするの、その先に何が見えるの?何を言いたいのかよくわからなくて、2人に聞いてみたかったんですよ」。
 いきなりの反論にもデパント監督はクールな面持ちを崩さず。「音楽のようなものだと捉えて欲しい。聞く人によって感じ方はさまざま。気持ち良く刺激される人もいればそうじゃないひともいる。別に道徳的なことを示したいんじゃないの」。トラン・ティ監督はこれを補足。「2人とも男嫌いとかそんなんじゃないし、殺す理由なんて別にない」。
 CHIGALLIANOはなおも食い下がる。「音楽が、というのもわかるけど。何が一番伝えたかったことなのかなぁ」。「私としてはクールなものを撮りたかっただけ。主演のカレンとラファエラと出会ってオツにすました女優にはできないものが撮れると思ったの」(デパント)。
 エミ・エレノオーラは中立派。「私はわからない、いいのか、悪いのか。でもね、指切っちゃったんですよ。観終わったあと、いろいろ考えるあまり。ネギ切ってるときに指切っちゃった」。この発言には監督2人も思わず笑みをもらす。フランスで上映禁止処分を受けた本作。「フランス映画に対する怒りはない。社会に対する怒りはある。20歳くらいの子たちは行き場がないの。何をぶつけたかったかと言われれば全ての抑圧に対する怒り。支配的なものに対する怒りなのよ」(デパント)。
 白熱する議論にクラブフリークも無言で聞き入る金曜夜。短い滞在でこれだけの対談に付き合うデパント&トラン・ティ監督、反逆児精神は筋金入り、と断言できる。

執筆者

寺島まりこ