映画『シスターフッド』西原孝至監督オフィシャルインタビュー
ドキュメンタリー映画では、2016年に学生団体「SEALDs」の活動を追った『わたしの自由について』が北米最大のドキュメンタリー映画祭・HotDocsに正式出品、毎日映画コンクール ドキュメンタリー部門にノミネートされ、2017年に、目と耳の両方に障害のある「盲ろう者」の日常を追った『もうろうをいきる』を発表し、実写映画では、『Starting Over』(2014)が東京国際映画祭をはじめ、国内外10以上の映画祭に正式招待され高い評価を得た西原孝至監督が、初めてドキュメンタリーと劇映画が混在したモノクロ映画『シスターフッド』を制作。
2015年から4年間撮り貯めてきたヌードモデルの兎丸愛美(うさまる・まなみ)とシンガーソングライターのBOMI(ボーミ)の生活を追ったドキュメンタリーに、新たに撮影した劇映画の部分を加えて1本の映画にまとめた、“多様性”を肯定する映画に仕上がりました。
3月1日(金)より公開が決まっているアップリンク渋谷にて、2月7日(木)16:00から完成披露上映会が開催されることが決定しました。
W主演の兎丸とBOMIに加え、兎丸も出演する劇映画部分に出演する遠藤新菜(『無伴奏』)、秋月三佳(『母さんがどんなに僕を嫌いでも』)、岩瀬亮(『イエローキッド』)、西原孝至監督らが登壇し、ドキュメンタリーと劇映画が交錯する本作の撮影秘話を語る予定です。チケットはhttps://shibuya.uplink.co.jp/movie/2019/53521 にて販売中です。
西原監督に、企画の成り立ち、W主演の二人をドキュメンタリーの被写体に選んだ理由、劇映画部分に女子大生役と女優役と男性ドキュメンタリー監督役を登場させた理由、遠藤新菜(『無伴奏』)、秋月三佳(『母さんがどんなに僕を嫌いでも』)、戸塚純貴(『銀魂2 掟は破るためにこそある』)、SUMIRE(『リバーズ・エッジ』)、岩瀬亮(『イエローキッド』)の起用理由などをお聞きしました。
・本作の成り立ちをお教えください。
元々は、東京という都市に興味があり、2015年に自主制作で撮影を始めました。世界でも有数の大都市である一方、いま、特に若い人たちにとって非常に生きづらい街なのではないかという思いが漠然とあり、様々な境遇の下、東京で暮らす女性たちの生活をポートレートのように記録することを始めました。同時に、撮影を重ねる中で2017年に起きた#MeToo運動を日本でも目の当たりにし、出演者とディスカッションを重ねながら、劇映画の設定を演じてもらっています。最終的には、4年間かけて撮りためた「ドキュメンタリー」と2018年に撮影した「劇映画」が混在している映画となりました。
・本作で兎丸愛美さんとBOMIさんの2人をW主演として起用したいと思った理由はどこにありますか?
兎丸愛美さんとBOMIさんは、本作の構想を考えていた時に、SNSで見つけました。とても、それぞれの活動に興味が湧いたからです。BOMIさんのライブに足を運んだり、兎丸さんとは企画書を送った上で喫茶店でお話をする中で、私のやりたいことやお二人の興味のあることなどを率直に話し合いました。その中で、とても人間としても信頼の出来る方だと感じたので、是非撮影をお願いしたいと改めてご相談し、了承を頂きました。お二人は、変わった撮影の依頼が来たなと思ったのではないでしょうか。
・兎丸愛美さんは、フィクション部分で演技もされています。普段はモデルをされていていますが、演出していて、いかがでしたか?
普段カメラを向けられていることもあるのかもしれませんが、とても堂々としている印象を受けました。映画の中では、兎丸さんに脚本をお渡しして台詞を言ってもらっている場面と、シチュエーションだけを決めて、自由に話してもらっている場面があります。私自身が普段はドキュメンタリーの制作を中心にしているので、そこで培った手法を試したい気持ちもありご相談しました。
・フィクション部分に登場する女性として、遠藤新菜さんと秋月三佳さんを起用されました。お二人は西原さんが2014年に監督した実写映画『Starting Over』にW主演されていましたが、お二人を再度起用した理由はどこにありますか?
お二人には、前作でご一緒させてもらった関係性がすでにあったので、再びお願いをしました。韓国のホン・サンス監督の作品では、同じ俳優が別の映画でも役を変えてよく登場します。「ホン・サンス劇団」と言われたりもしています。日本でも、是枝裕和監督が樹木希林さんと近作でタッグを組み続けてこられたように、信頼関係から生まれるものがあることは、私がこれまでのドキュメンタリーの制作体験から学んだことです。私もそのような俳優との関係性に憧れますし、秋月さんと遠藤さんとは、これからも別の作品でも是非ご一緒できればと思っています。
・遠藤新菜さんが演じたのは女子大生、秋月三佳さんが演じたのは女優兼モデルですが、この2つの役の設定にはどのような理由があるんですか?
近年携わってきたドキュメンタリー作品で、その2つの被写体を撮らせてもらうことが多くありました。それぞれ別の作品として既に完成しているのですが、その作品内には収まりきらなかった、しかし胸に残る「言葉」が、ドキュメンタリーを制作していると私の中にどんどん蓄積されていきます。その「言葉」たちを今回の映画の中で描くことが出来ないかと思い、学生とモデルを登場させました。具体的には、プロットや台詞の端々に反映をさせています。
・遠藤新菜さんが演じる女子大生の彼氏役で戸塚純貴さんを起用されています。戸塚さんの起用理由も教えてください。
戸塚さんにも、前作の『Starting Over』に出演を頂いています。まだ20代なのですが、独特の力の抜けた存在感があり、とても好きな俳優のひとりです。個人的な話になりますが、彼の出身がどこで、住んでいる家も知っている(いまはもう引越しをされたみたいですが)そういう関係性を持った俳優と仕事を共にすることで生まれてくる何かがあると信じているので、今回も出演をご相談しました。
・モデル・女優のSUMIREさんがドキュメンタリー部分で出演されていますが、出演の経緯をお教えください。
遠藤さんがカフェで友人と話すシーンで出演してもらったのですが、設定だけを決めて自由に話してもらいたかったので、実際のご友人を紹介してもらえないかとご相談したところ、SUMIREさんの名前が挙がりました。普段からプライベートで良く遊んでいる親友だそうで、その関係性を映画の中でも使わせてもらった形です。
・岩瀬亮さん演じるドキュメンタリー映画監督の池田は男性ですが、彼を登場させた理由を教えてください。
ドキュメンタリーと劇映画が混在している映画なので、ともすればストーリーが破綻しかねないと考えていました。ひとり、映画を貫く存在として登場させたいと思い、池田の存在を思いつきました。岩瀬さんの『ひと夏のファンタジア』という主演作が大好きで、以前から是非ご一緒してみたいと思っていたので、今回はこのような小さな制作体制でしたが、本当にラッキーでした。
・実は最初、「なんで男性である西原さんが、女の私以上にフェミニズムについて熱心なんだろう」と思って見始めたんですが、冒頭から女性インタビュアーに同じようなことを言わせていて、面白かったです。大学でのインタビューのシーンでも、西原さんご自身が、池田の隣でカメラを回していますよね?池田は西原さんの分身的な位置づけなのでしょうか?
すべての映画監督は、自分の経験を投影する部分と、創作の部分を交錯させて映画をつくっているのではないかと想像しています。ご指摘の部分はまさにそうで、私自身の経験を反映されている部分もあれば、そうではない部分もあります。池田に同調するところもあれば、全く違う考えのところもありますし、そういう人間の複雑さを描ければと思っていました。
・読者の方にメッセージをお願いいたします。
社会から「こうしなければいけない」という圧力を感じることは、誰しもあるのではと思います。でも、いろんな生き方があっていいと思うし、この映画ではそのことをまず肯定したかったです。自分の幸せに悩んでいる人に、届けばいいなと思っています。ぜひ劇場でご覧ください。
■あらすじ
東京で暮らす私たち。
ドキュメンタリー映画監督の池田(岩瀬亮)は、フェミニズムに関するドキュメンタリーの公開に向け、取材を受ける日々を送っている。池田はある日、パートナーのユカ(秋月三佳)に、体調の悪い母親の介護をするため、彼女が暮らすカナダに移住すると告げられる。
ヌードモデルの兎丸(兎丸愛美)は、淳太(戸塚純貴)との関係について悩んでいる友人の大学生・美帆(遠藤新菜)に誘われて、池田の資料映像用のインタビュー取材に応じ、自らの家庭環境やヌードモデルになった経緯を率直に答えていく。
独立レーベルで活動を続けている歌手のBOMI(BOMI)がインタビューで語る、“幸せとは”に触発される池田。
それぞれの人間関係が交錯しながら、人生の大切な決断を下していく。
【出演】
兎丸愛美 BOMI 遠藤新菜 秋月三佳 戸塚純貴 栗林藍希 SUMIRE 岩瀬亮
【スタッフ】
監督・脚本・編集:西原孝至 撮影:飯岡幸子、山本大輔 音響:黄永昌 助監督:鈴木藍
スチール:nao takeda 音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory
(c) 2019 sky-key factory 2019 / 日本 / モノクロ / 87分 / 16:9 / 5.1ch
公式サイト:https://sisterhood.tokyo Twitter:@sisterhood_film
facebook: @sisterhood.film.2019 instagram:@sisterhood.film