次期オスカーメイヤーは日本語もペラペラ

エドワード・ノートンが監督・プロデューサー・主演を務めた「僕たちのアナ・バナナ」を引っさげ、東京国際映画祭にやってきた。映画デビューたった4年で2度もオスカーにノミネート(「真実の行方」、「アメリカン・ヒストリーX」)され、「ファイトクラブ」ではブラッド・ピットを完全に食っていたノートン。次期オスカーメイヤー確実の天才俳優は何をやっても大当たりらしく、初監督作もNYを舞台にしたラブコメディでは近年ベスト5に入る出来栄えだ。11月2日、帝国ホテルで行われた来日記者会見ではノートン見たしの記者陣でごった返し。四ヶ月に渡る日本在住経験が奏し、「10ネンマエ、ニホンゴ、ヨク、ベンキョウシマシタ。スイゾクカン、オオサカワンノ、スグソバデ、ハタライテマシタ」と通訳なしで答えていた質問もあり、日本人ファンの大量獲得は必至。初来日会見をここに再現しよう。



——初監督作にこうしたラブコメディを選んだ理由は。「僕たちのアナ・バナナ」は今までのキャリアと全く違ったタイプのストーリーですが。
エドワード・ノートン(以下N) チガウ、デシタ(日本語で)。同じような役を何度も繰り返そうとは思いません。実は初監督作でコメディを撮るとは思ってなかったんだけど、前作「ファイトクラブ」が暗かったので気分転換をしたくなった(笑)。具体的に言うなら、学生時代からの友人、スチュアート・ブルムバーグの脚本に惹かれたのがきっかけ。NYを舞台にした作品も撮りたかったですしね。(この後ノートンは日本語訳を聞き、”ジョウズ、デシタ”と通訳を誉める)

——ジェイク役のベン・スティラー、アナ役のジェナ・エルフマン、二人の起用の理由を。
N ベン・スティラーは監督であると同時にコメディセンスのある素晴らしい俳優。ベンの演じたジェイクは初期段階ではベンという名前だったくらいで、初めから彼をイメージして、脚本を書いていたんですよ。アナ役は有名な女優をはじめ、何度もオーディションをしたんですが、ピンと来る人がなかなかいませんでした。そんな時、尊敬するキャスティング・ディレクターから紹介されたのがエルフマン。彼女のことはよく知らなかったんだけど、会ってみて「彼女だ!」と思いました。

——撮影中、他人の演技を指導する難しさ、また、自分で監督をしながら演技をする難しさを感じたことは。
N ムズカシスギル(日本語で)。ベン・スティラーやミロシュ・フォアマンなど監督に囲まれていたことはラッキーでした。現場はベンの家のすぐそばで彼のお母さんがサンドイッチを差し入れしてくれたりと、楽しかったですよ。脚本兼プロデューサーのスチュアートとは18歳からの付き合いでしたし。スタッフ、キャストとの関係性に助けられましたね。

——劇中2人の男性のミューズとなるアナ。現実にインスピレーションを与えた女性はいたのでしょうか。
N 僕とスチュアートには大学時代共通の女友達がいました。もちろん、映画のようにロマンティックな関係ではなかったんだけど。実は、彼女は今回一緒に日本に来ています。「私がホントのアナ・バナナ」と言って喜んでましたね。

——映画のように三角関係に陥ったことは。
N (断固として)ノー。

——これまでウディ・アレン、ミロシュ・フォアマン、デヴィッド・フィンチャーなど才能豊かな監督と仕事をされています。彼らから学んだ映画の技術は。
N ニューヨークの描き方はウディ・アレンに教えられましたね。ニューヨークという街は住んでいない人が撮るとすぐわかってしまう。なんというのか、一歩引いて客観的に撮ることができないんですね。その点、アレンの撮るニューヨークはシーンにすんなり溶け込んでます。ロングショットも彼ならでは。ベン・スティラーとのやり取りはこれを意識してロングショットで撮っています。
 フォアマンの映像は一言で言うとスタイリッシュ。「ラリーフロント」で編集をずっと見ていたのでそれはすごく役に立ちましたね。フィンチャーからはカメラの使い方と照明の使い方、そして何よりマネージメントを教えられました。さまざまな規制や条件の中で最良のものを引き出す監督でしたね。

——劇中、カラオケの使われ方も印象的です。「Jessie’s Girl」にバニーマニロウ。欧米ではマニロウ=ダサいらしいですが、知らずと熱唱するシーンにブライアンの性格がよく出てきますね。
N カラオケ屋の店員が歌う、三角関係の「Jessie’s Girl」は脚本に合っていて使用料も安かったから。バニー・マニロウの「愛に生きる二人」は変えようかと思ったものの、やっぱり使用料が安かった(笑)。

——普段のあなただったら、何を歌いますか。
N 大阪に住んでいた頃はビリー・ジョエルが多かったな。一緒に働いていた高松さんがよく口ずさんでいたんだ(笑)。

——名詞の継ぎ重ねのような台詞が多いですね。デートの約束で「サーズディ、エイトピーエム、ディナー」とか。ニューヨークのビジネスマンに流行っている喋り方なんですか。
N 実際にああいう話し方をする友達がいます。言ってみれば彼女へのオマージュ。ニューヨークのビジネスマンがどんな喋り方をするのか、僕は知りませんので(笑)。

——役柄は多様、カメレオンのように七変化する俳優エドワード・ノートンですが、素顔はいったい、どんな人間なのでしょう。
N 教えません(笑)。自分では言いようがないですね。僕の友達に聞いてください。

——日本に住んでいたときのことを教えてください。
N ナンテイウカ…。10ネンマエニ、ニホンゴ、ヨクベンキョウシマシタ。ゼンゼン、ワスレマシタ(笑)。アメリカノ、カイシャニ、ツトメテイマシタ。…スイゾクカン、
スイゾクカンニイマシタ。オオサカワンノ、スグソバデス。ハタライテイマシタ。(以上、日本語で)

執筆者

寺島まり子

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