映画『シュガー・ブルース 家族で砂糖をやめたわけ』 アンドレア・ツルコヴァー監督インタビュー
砂糖が健康にもたらす影響やその摂取量についての関心が高まる中、今、誰もが気になる「砂糖」の問題を追及する決定版のドキュメンタリー映画が登場!
妊娠糖尿病を告げられた映画監督のアンドレアは、不安に駆られると共に、生活から砂糖を取り除くことの困難さに直面する。でも、精製された砂糖ってそんなに身体に悪いものなの?キッチンから始まった彼女の探究は、砂糖の秘密と真実を次々に明らかにしてゆく。ビデオカメラ片手に勇ましく砂糖業界にも切り込む彼女だが、一方で働く母親としての悩みは尽きず、子供の発達に妊娠糖尿病が影響を及ぼしたのではないかという懸念もぬぐえない。砂糖産業の発展がもたらした様々な問題に気付いたアンドレアは、家族の協力を得て砂糖の危険性を訴える行動を始める。
「シュガー・フリーは、誰もが自分の食卓で始めることができる無血の革命。」
$red Q:この映画の観客は、砂糖に関してどんな新発見をすると思いますか? $
私が 2009 年頃にリサーチを始めた当時は、砂糖を問題視している人はほぼ皆無でした。この間、私は砂糖が持つ力や、その過剰摂取が人体にどれほど多大な影響を与えるかという事実に、何度も驚かされました。当初は砂糖が、脳の病気(ADHD、自閉症、アルツハイマー型認知症)や心臓病、メタボリックシンドローム、2 型糖尿病と診断される人の爆発的な増加だけでなく、がんにまで密接な関連性があるなどとは思いもしませんでした…。
映画では、その関連性を紹介しています。
Q:映画では様々な国を訪れて取材を行っていますが、そういった経験がこの映画にもたらしたものは?
リサーチや撮影を進めていけばいくほど、砂糖が抱えているのは決して健康の問題だけではないことがわかってきました。砂糖には、政治にビジネス、大金、そして権力もからんでいるのです。砂糖ビジネスの仕組みも知りました。なぜあらゆる製品が、時代を経るごとにさらに甘くなっているのか? なぜ砂糖は店の棚にあるほとんどの製品に入っているのか?
3 大陸、計 8 ヶ国での撮影は、まさに壮大なアドベンチャーでした。どの国でも記憶に残る出来事があり、砂糖にまつわる問題のあらゆる側面を目にすることとなりました。そして映画自体も、探偵ものから恐ろしいスリラーへ、徹底的な調査からアフリカにおける悲劇へと、様変わりしていったのです。
「大切なのは、子供を砂糖漬けにしないこと。」
Q:本作を見た観客には、どんな反応を望みますか?
コペンハーゲン・ドキュメンタリー映画祭のディレクターは、この映画を見た時、彼女が手にしていたコーヒーを最後まで飲まず、お皿にあった甘いものにもそのまま手をつけませんでした。
私はこの映画を、世の親御さんのために作りました。彼らは砂糖中毒というあまりにも一般的で重要視されていなかった事柄について、何らかの問題があると気付いていながら、深く考えるきっかけが無いからです。食品業界は私たちに、砂糖はごく普通な物質で、幸せな子供時代に欠かせないものだと教え込みます。ですが、果たして彼らの言うことは真実でしょうか?この映画では砂糖、病気、そして薬というからくりがいかに効率よく機能しているかを紹介しています。最たる例が、10 代の子供たちです。食品業界は、最も弱い存在であると同時に最も重要な顧客が、お小遣いを手にする 10 代の子供たちであるという事実には口を閉ざしたままです。10 代の子供たちは、忠実な顧客となる集団に育て上げるのに最適な年齢層なのです。
大切なのは、子供の頃から砂糖漬けにしないことです。本来、食物というものはバラエティ豊かで味も多種多様です。もちろん甘さにもいろんな種類があり、精製された砂糖など必要ないということを示すのが重要なのです。
Q:砂糖との 5 年間の闘いの中で、一番驚いたことは何ですか?
何よりもまず、砂糖抜きの食事をしたければ、食生活を完全に変えなければいけないことに衝撃を受けました。
解決策は砂糖を他の何かに置き換えることではなく、料理の方法を完全に変えることだったのです。
砂糖抜きの食生活がもたらした効果の一例として、私の二番目の子が幼稚園を 1 日も休まなかったことが挙げられます。幼稚園の先生たちは何度もその理由を聞いてきますが、いざ私が説明を始めると、耳を傾けてくれません。習慣はなかなか変えられませんよね。実は昨日、21 歳の妹からメールがありました。これから 1 ヶ月かけて、砂糖を抜き、食生活を完全に変えようというのです。これは私が 5 年間もかけて妹を説得した結果ですが、私は彼女がやっと心を決めてくれたことを嬉しく思います。妹は健康問題を抱えていましたからね。今や彼女は、砂糖抜きでも多彩で豊かな食卓を楽しめることに、驚きつつも満足しているようです。
Q:砂糖抜きの生活で、一番大変なことは何ですか?
“この生活に慣れるには時間がかかる”と自分自身に言い聞かせることです。私自身もまだ、新しいものや、未体験の味、見たこともない変わった食べ物を試す必要があると思います。砂糖抜きの生活は、苦行ではなくプロセスだと考えましょう。
Q:その一方で、最大の収穫は?
たくさんあります。子供たちはおとなしくなり、物事に集中してスムーズに取り組めるようになりました。かんしゃくを起こすことが減り、家族の中でも特に子供たちが体調を崩すことが少なくなりました。そして何よりも、家族でテーブルを囲むことが習慣になって、あれこれ会話をしながら家族の時間を楽しんでいます。それに、砂糖抜きの料理はお財布にも優しいんですよ。
Q:5 年前と比べて変化を感じますか?
この映画に出てくる「問題視する人の数はずっと増えた」という言葉がその答えになりますね。
私が取材をした人の中には、メディアの注目の的になった人もいます。とはいえ、根本的に何かが変わったわけではありません。ジャンクフードは単に、“オーガニック”・ジャンクフードにとって代わられただけで、多国籍企業、科学者、食品メーカーらは 40 年前にやっていたことを今も繰り返しています。
あらゆる製品が、時代を経るごとにさらに甘くなっているし、私たちが思う以上に有害になっています。
ですが、そういった現状への対策はそれほど面倒なものではありません。映画で語られるように、シュガー・フリーは誰もが自分の家庭の食卓で始めることができる無血の革命なのですから。
執筆者
Yasuhiro Togawa