SF小説の巨匠ロバート・A・ハインラインの傑作『宇宙の戦士』の映画化にして、クエンティン・タランティーノを筆頭とするファンの熱烈な支持を受けた『スターシップ・トゥルーパーズ』。シリーズ化されて好評を博している、その誕生15周年を記念した最新作が日本から世界に向けて発信される!ハリウッドからの熱烈なラブコールを受け、日本が世界に誇るトップ・クリエイター、荒牧伸志が才腕を振るった『スターシップ・トゥルーパーズ:インベイジョン』が、ついにベールを脱ぐ。

ここで繰り広げられるのは1作目の世界観をキッチリと踏襲したドラマで、主人公のジョニー・リコや優秀な女性パイロット、カルメン、サイキックの独善主義者カールといったおなじみのキャラクターが再結集。

『APPLESEED』『APPLESEED:EX MACHINA』で世界を熱狂させた荒牧監督は、ディテールにこだわったデザインや、密度の濃いドラマ作りで広く知られているが、ここでもその手腕を遺憾なく発揮。全編英語のセリフというドラマに臆することなく、シリーズの世界観を継承しながら、まったく新しいスペース・ウォーズを活写してみせた。今回はその荒牧監督に話を伺った。


−−この作品がきっかけにプロデューサーのジョセフ・チョウさんと一緒に“SOLA DIGITAL ARTS”を作られたとか。すると、以前から製作のアナウンスがあった『SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK』はこちらで製作するということなんですか?

荒牧:いえ、『SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK』はこのスタジオを作る前から関わっていた作品なので、別のスタジオですね。『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』と同時並行で作っていて、今の製作状況は半分以上完成、という感じですかね。これもすごい作品になると思いますよ。多分、来年には公開できると思います。

−−1作目で新兵卒だったジョニー・リコが将軍になっていることに驚いたのですが。

荒牧:1からかなり時間は飛んでいるということなんです。気持ちとしては1作目から10年後のような気持ちで作っているんですよ。

−−本作では原作でもおなじみのパワードスーツの登場が話題となっています。

荒牧:パワードスーツがなかったら「宇宙の戦士」(原作小説)ではないという気持ちはあります。ただ、逆に言うと、今までよくそれがなくて、あれだけのことが成立させられたもんだなと感心していますけどね。ですから、今回の僕の使命としては、パワードスーツを着た部隊とバグとの戦いというところだろうなとは思っていました。

−−今回のパワードスーツのデザインで心がけたこととは?

荒牧:かっこいいヒーロースーツではなく、道具的な感じと言いますか。使い尽くされている感じをどうやって出すかということに注力しましたね、エッジな感じというよりは、すごく使いこなされたデザインというところを目指しました。

−−荒牧監督にとって、原作の「宇宙の戦士」がこの業界に入るきっかけになったとか。

荒牧:そうですね。原作の挿絵を手がけた“スタジオぬえ”が描き出したパワードスーツは、デザイン的なエポックでしたからね、当時、アニメではああいうシャープな線のデザインのものはなかったですから。ぼくらにとってはリアルなものとして感じたんですよ。

−−ということは、物語というよりデザインに惹かれたわけですか?

荒牧:そうですね、8割方がデザインに影響を受けましたね。一発でやられました。

−−ところで実写からフルCGアニメにフォーマットを変えた本作は、1作目の続編という意味合いが強いとのことですが、その世界観の踏襲ということで心がけた点はどのようなところでしょうか?

荒牧:(1作目のポール・)バーホーベン版とのつながりみたいなものは、ちゃんとしたいなと思いました。実は脚本家との打ち合わせでロスに行ったときに、ソニーの倉庫というか、アーカイブみたいなものがあったんですよ。そこには一本目のプロップ(小道具)なんかがまだたくさん置いてあるんですよ。ドロップシップのミニチュアなんかもちゃんと残っていたりしますからね。それを見ると迫力があるなと思いますよね。だからそういうことを取り入れたいなと思って、写真を撮ったりして。たくさんの資料になりましたね

−−1作目は人気が高いですからね。

荒牧:今でもあのインパクトはすごいらしくて。今回もこの特報があがったときのファンの反応はすごいなと思いましたね。そういう人たちに、ある程度受け入れられるものを作らないとと思いました。

−−プレッシャーがあったんではないですか?

荒牧:そういう意味でのプレッシャーは毎度のことですからね。基本的には好きなものを作らせてもらっていますから。

−−そう言われてみれば、『APPLESEED』にしても『SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK』にしても、本作もそうですが、荒牧監督はプレッシャーがかかる企画ばかり手掛けていますよね。

荒牧:いやいや、毎回楽しみに取り組んでいますよ。

−−カメラのレンズにバグの血がドビャッと飛び散る映像があったりと、映像に迫力があります。

荒牧:臨場感を出すためのテクニックというか、その場にいるように感じてもらえるようにはしています。ちょっと前の映画ですが『ブラックホーク・ダウン』のような臨場感あふれるドキュメンタリータッチの見せ方という、あの流れだと思います。今回も手持ち風のカメラや、カメラを暴れさせたりとか、あとは、先ほど言っていた血を画面にバシャッとつけるものとか。最初は『ブラックホーク・ダウン』ですけども、最近のゲームには、そういった臨場感あふれるタッチの映像が多用されているので、そういった影響はあると思いますね。

執筆者

壬生智裕

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