青春時代に誰もが感じる“漠然とした不安”や“自分自身への苛立ち”といった感覚を「謎のチェーンソー男」や「セーラー服の美少女戦士」という非日常のキャラクターを巧みに登場させることにより、大胆かつ繊細に表現した小説を映画化。原作は10代後半から30代まで誰もが共感できる新世代のノベルとして反響を呼びベストセラーを記録。単行本は5万部(2001.12.25初版)、文庫本は15万部(2004.6.25初版)の記録を叩き出し、第5回角川学園小説大賞を受賞。毎年角川文庫夏の1冊としてチョイスされる作品である。

メンバー4人全員が歯科医を志す現役医大生という話題のグループ・GReeeeNがエンディングテーマ「BE FREE」を書き下ろしたことも注目だ。

主演の陽介を演じるのは、抜きん出た演技力で、今や邦画界を代表する俳優となった市原隼人。その他、関めぐみが鮮烈なアクションを見せるほか、三浦春馬、浅利陽介など注目の若手俳優が、現代の高校生を圧倒的なリアリティで演じきる。

『下妻物語』『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督と同様、CF界から映画監督にデビューとなった北村拓司監督にお話を伺った。







重層的なテーマを内包している作品で、脚本を作るのは難しかったんじゃないですか?

「脚本だけで3年くらい延々とやってましたからね。完成しないんじゃないかなと思ってました。画面で行われていることはエンタテインメントなんですが、テーマは別にあるという、そのギャップが面白いなと思いましたね」

そうすると、見せ方で注意した点はどういうところになりますか?

「撮影のときはなるべく軽く芝居をしてもらう。しかし表情の部分では芯の強さを持たせましたね」

市原隼人さんは、目の芝居が出来る人ですね。

「市原君は目の力がある役者さんなので、その狙いを理解してもらって演じてもらいました」

それでは市原さんもそんなに難しいところもなく。

「いや、難しいところもありましたけどね(笑)。グズグズした役なんで、市原君もだんだん弾けたくなってくるんですよ。そこを我慢してくれ、ということはありました。彼は頑張って抑えてくれていましたよ。トーンを落として、でもおちゃらけていなければいけないというところが難しかったですね」

トーンを落として、でもおちゃらけていなければいけないというのは、言葉にすると難しいですね。

「例えば絵理(関めぐみ)なんかは、男っぽいじゃないですか。悲しみを抱えて、そこに立ち向かうというキャラクターというのはある種一貫してますよね。渡辺(浅利陽介)も弾けているし、能登(三浦春馬)も弾けている。みんなが弾けている中でひとりだけ、本当に大変だったと思いますね」

前々から関めぐみさんは、本格的なアクションをやるべきだと考えていたので、『キル・ビル』風のオープニングを見た瞬間、いよいよ来たな、と思った次第なんですが。

「彼女もアクションはやりたかったみたいですね。練習もしてくれたし。本人にやってもらわないと、というのは思っていたし。頑張ってくれました」

オープニングの日本刀を持つところがまるでユマ・サーマンのようで。

「そうですね。アクション監督がものすごく優秀な方で。やる内容はアクション監督と一緒に詰めていたので、実際にやることを練習できたのが良かったと言ってましたね。

武器もまた次々と変わって。

「武器は毎回変えたいね、と話していたんですよ。毎回、ただのチャンバラにしたくなくて、メインイベントをそれぞれ決めて、毎回違うアクションにするように気を付けました」

3人の若者たちがまとまってましたね。

「彼らにはそれぞれの関係性だけは話しをしたんですよ。あとは市原君が先頭に立って、まずはみんなで名前を呼び捨てにしようと。市原君と三浦君なんかは歳が随分離れているんですけども、そういうのを見ながら若いっていいなぁ、とか思いましたね(笑)。いい流れになったので良かったですよ」

悪役ということで、チェーンソー男のビジュアルもこだわったんじゃないですか?

「最初は僕がデザインを描いたんですよ。それをブラッシュアップしてもらったという感じですね。心臓を剥き出しにしたいな、というイメージはあって。手に鎖を巻いたりとか、凝ったデザインにしてくれましたね。
 ただ、あのチェンソー男のCGにはみんなヒーヒー言ってました。やるたびに鎖がジャラジャラしますからね。あとはコートも嫌がるんですよ。風でバタバタ揺れるんで。でも、本当にCGスタッフはみんな頑張ってくれましたよ。彼らは『デスノート』や『東京ゾンビ』もやったチームなんですが、彼らが言うには、『デスノート』2本と、『東京ゾンビ』の哀川翔のズラのラインを消す作業と、それらを合わせた作業量よりも、今回の方がもっとすごいと言ってましたね」

それもすごい例えですね。今回はCGとアクションの方々が本当に頑張ったんだろうなと。

「そうですね。アクションを考える前から中に入ってもらってましたからね。一応僕も前もってコンテをあげてきて、それを叩き台として話しあったんです。こういうネタだから、当然CGは多くなるし、CGスタッフからのアイディアも欲しかったし、アクション監督からのアイディアも欲しかった。それをコンテにまとめてくれるコンテマンからのアイディアも欲しかったし、もうとにかく風呂敷を広げられるだけダーッと広げて、現実的かどうか、ということを直にスタッフと話した方が結局早いんですよね。これは出来ないけど、こういうやり方なら出来る、というと、アクションチームから、だったらこういうように出来る、というように、アイディアが出てくるし、だったらCGでこう出来るというように、アイディアがどんどん膨らんでいくんですよ。今回の映画は彼らに負うところが多いですね」

執筆者

壬生 智裕

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