辛口評論家も頬を揺るます今秋邦画の大本命「GO」が20日、いよいよ封切りを迎えた。コリアンジャパニーズの青春を描き直木賞を受賞した小説の映画バージョンは押しも押されぬ旬の映画監督(行定勲)と押しも押されぬ旬の俳優(窪塚洋介)のコンビとくる。舞台挨拶が行われた丸の内東映では監督、主演の両名ほか、柴咲コウ、山崎努、大竹しのぶ、原作者の金城一紀が駆け付けた。窪塚ファンの女の子連中“カワイー”の嬌声が飛び交うなか、彼は言う。「この『GO』をきっかけに、(今年は)自分の生まれた年と同じくらい、新しい世界を見たような気がします。自分の生きてる世界のことをどんどん知りたくなって、そっちに進もうとしている自分にこの映画が“GO”と言っている気がしました」。これに続くは「だから、皆も…」と言いかけ一瞬逡巡した彼に会場の女の子が“GO!”と助け船を出すちょっとイイ感じの場面。当の窪塚洋介も「GO!」と叫び返し、爽やかかつ座りのいい締めを迎えたのだった。この日の舞台挨拶、もっと詳しくはNEXTをクリック!!(敬称略)










同名小説は映画化権の争奪が繰り広げられたほどだったが、原作者の金城一紀が出した条件は、30代の監督、脚本家を使うこと、そしてヒロインを柴咲コウに演じて欲しいということだった。「映画化することは多少なりとも原作は壊れるものですよね。どうせ壊すのなら若い感性で壊して欲しかった」と言う。「柴咲さんは桜井(ヒロイン)のイメージにぴったりだったんです」。ここで会場から「杉原(窪塚洋介の役名)は?」という抜け目ない声があがるや、金城さんは「ぴったりです。スミマセン」と謝るのだった。
作者の熱いラブコールに関わらず、柴崎コウは自分とは違うタイプと思っていたとか。「私、桜井みたいに可愛くないし。どうしたら可愛く見せられるのか心配でした。で、監督にいろいろ聞いたんですけど、“こういう感じで”って実際に桜井みたいに動いてくれて、それが可愛くて可愛くて…(笑)。私がやるより、ずっと可愛かった(笑)」。これまで女性を主人公にした作品が多かった行定監督、やはり女性の見せ方は女性よりうまいのか!?とはいえ、窪塚洋介も監督の感性に相通じるものがあったらしい。「僕と監督とは同じ杉原が見えていたんですよ。“この場面がどうしてもわからないんですよ”って相談すると“いや、僕もそう思ってたんだよ”って(笑)」。
さて、杉原の両親を演じるは山崎努と大竹しのぶ。「いやー世の中にいい映画と言い小説はあった方がいいねぇ」(山崎)と言うだけに、映画の出来映えに大満足の様子である。「役者が思う“多分、こうなってるはずだ”というのはそうなってないことが多いんです(笑)。今回は撮影中からいい予感がしてたんですが、思った通りになりました」(同)。息子を殴るは蹴るはその癖ほろりと泣かせることを言う、劇中親子の掛け合いは絶妙だ。実際の現場でも「窪塚くんとはばっちり気があった」とのこと。一方、パパがパパならママもママで、大竹しのぶ演じる母親は息子をバカ呼ばわり、脳天をぶっ叩くシーンは予告篇CMでもお馴染み。「子供の友達にね、『GO』、観たいんで券下さいって言われたんですよ。そんなものはね、自分で買って観るんだよっ、バカって言ってやりました(笑)」。
 「GO」は韓国での公開もまもなくで、11月9日から開催される釜山国際映画祭に正式出品も決まっている。ちなみに行定勲監督は昨年も同映画祭に参加し、「ひまわり」で国際批評連盟賞を受賞。今夏は永瀬正敏主演の「贅沢な骨」が公開され、こちらの方も好評だった。現在、2本の新作が待機中のうえ、「GO」のレビューは大絶賛の嵐。監督は「すごく嬉しいことですね。自分の映画をここまでたくさんの人に観られたこともなかったですし…」と言う。「映画は観客の方に観ていただいて初めて完成するもの。初日っていつでも緊張しますね。シンプルなタイトル『GO』に託されているように、観た方それぞれが何を目指すのか、何処に行くのかを感じて頂ければ」と語った。 
 

執筆者

寺島まりこ