当日、『リリィ・シュシュのすべて』が公開されるシネスイッチ銀座ではたくさんの人が集まっていた。期待の高さが窺い知れる。舞台挨拶は上映後に行われた。壇上に上がったのは岩井俊二監督、主演の市原隼人さん、伊藤歩さん、忍成修吾さん。上映後という事で岩井監督が語った、あるシーンについての秘話とは?
本作はインターネット小説としてスタートした。岩井監督と一般の人たちとのやり取りによって物語は変わっていく。その最終形態が本作と言える。ネットで参加していた人も、噂を聞いて来た人も、多くの人が待ちわびた初日公開日。その模様をお伝えしよう。

※『リリィ・シュシュのすべて』シネスイッチ銀座にて公開中。






劇場前には長い列が。ネットで展開していた時から期待していた人、TV等で噂を聞き駆けつけた人、様々な人が期待を胸に集まっていた。
そして作品は上映され、その余韻に浸り、静まり返った場内。そこへ現れたのが、岩井俊二監督、市原隼人さん、伊藤歩さん、忍成修吾さんであった。岩井監督がまず口を開いた。
「ようやく公開という事で、皆さんに観ていただいて大変光栄です。この映画は今日はじめてお披露目なんですけど、2000年4月にインターネットノベルという形でスタートして、この場内にもいると思いますが、たくさんの皆さんと一緒に物語をつくってきた経緯もありまして、今日からというより、長い道のりの果てに、いよいよ最終コーナーを曲がったという感じです。だから、みんなと一緒にここまで来たなという気持ちです。なかなかこういう物つくりは珍しいので、貴重な体験をさせてもらったな、と思っております」
続いて主演の市原さん。「さっき後ろで観ていたんですけど、すごいみんなの顔が気になりました。でも観てもらえて嬉しいです」少々照れた様子の市原さんでした。
ヒロイン役の伊藤歩さん「この映画は皆さんとすごく近い存在というか、こう、みんなで作ってきた作品です。現場は楽しく、そして映像は厳しいという感じです。さっき私も二度目を観て、新しい発見があったので、皆さんもわからない所があったら、また観に来てください」
最後に忍成修吾さん「僕もさっき後ろで観ていました。友人と来たんですけど、その友人の顔を見て笑いそうになってしまって、この場の落ち込んだ雰囲気と違いギャップがあってちょっと困っています」彼も市原さん同様かなり照れていました。彼の発言はその照れ隠しなのかも。
撮影中のマル秘エピソードとして、岩井監督がこんな事を教えてくれました。
(以下の文にはネタばれがあるので、まだ作品を観ていない方は観てからどうぞ)




「一番大きな事として、メイキング放映とかでも隠していたことがありました。実は彼女(歩むさん)が坊主になるシーンなんですが、そこはショック感も激しいんで、言わないでおこうとしたんです。ただちょっと隠しすぎたようで、彼女は彼女の友達からは、「あれどうせカツラでしょ?」、と言われたようです。せっかくやったのに(笑)。あれは最初から彼女に要請する時にその事を告げていたんです。坊主にするよ、と。すると「いいスよ」と割と軽く返事が返ってきたんで、あまり気にも止めてなかったんです。けど、やはり女の子にとって髪を切るというのはけっこうヘビーだったようです。周りの子達が大泣きしてしまって、しばらく撮影が中止になってしまいました。だからまぁ、この場を借りてあれは本当でした、と言いたいです」
その当の本人の歩むさん「監督が楽しそうに、ニヤニヤしながら私の髪を切りました」と言った後、「髪を切ること事態は何でもなかったんですけど、シチュエーション的に入り込んでしまって大泣きしてしまいました」となかなかの大器を感じさせる発言。
またこの他撮影中に印象的なシーンなどがあったかと問われ、市原さんは「いじめられるところ」であり、忍成さんは「沖縄ロケが大変でもあり、楽しくもありました」と語ってくれました。

執筆者

永見 憲宏

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