「大統領の料理人」主演カトリーヌ・フロ オフィシャルインタビュー
味わい深いストーリー、めくるめくご馳走、口に運んだ時の衝撃と驚きの痛快さ!グルメの国フランスから、この上なく美味しい特別な1本が生まれました。
フランス大統領官邸史上、唯一の女性料理人として1980年代に2年間ミッテラン大統領に仕えたダニエル・デルプシュという女性シェフの真実を描いた物語です。
主演のカトリーヌ・フロに聞く。
$red Q:この世界の果てとも言える場所での出来事から(撮影を)始めるということは、あなたが役を演じるにあたって意味のあること、重要なことですか? $
A:
この映画は、ここから始まるんです。どう言ったらいいかしら…。
そもそも意味のあるものなんです。ですから、何かしら得るものはあると思います。
大変なのは、結果的に後で起きる出来事、つまり4年後の出来事を先に撮影するということね。
私たちは、まるで世界の果てにいるようです。
ですから、私は彼女が世界の果てに来た姿を想像できます。おそらく、何かを流し去るという目的もあって来たのかもしれません。そう単純でない何かを(流し去るために)ね。
たとえエリゼ宮で多くの感動や出会いなどがあったことを思い返したとしても。
ここは、ある意味、自分自身を洗い流せる場所だと思います。この土地を見て、彼女がそれまでに経験したことを洗い流すのです。
Q:あなたはダニエル・デルプエシュと会って、彼女が世界の果てで経験した特別な出来事について話し合いましたか?
A:
ええ、少しだけ。省略した形で話しました。
私は、その出来事が彼女にとって鎮静剤となったのだと感じました。
そして、そうした出来事が鎮静剤となるような生き方をするには、気骨のある人物である必要があると思います。なぜなら、それは厳しい生活ですから。丸一年も過ごすなんて、大変なことだと思います。
でも、人生の中で時には、自分自身のことだけを考えるために、そういった状況が必要になのだと思います。誰にも頼らず、何も無い所で1人きりになることがね。その人にとって意味のあることだからです。この映画は、そのことも語っています。※ダニエル・デルプエシュ:本作のモデルになった女性
Q:あなたが演じる人物ダニエル・デルプシュ本人の家で撮影を行うことに、どのような効果があるか教えてください。
A:
実在の人物を演じるというのは、曖昧なものです。
彼女にとって困惑するような事でしょうし、彼女の近くで演じるのは、私も困惑します。
なぜなら、私は彼女であると同時に彼女ではありませんし、彼女の実体験と比べて台本は多少、小説に近い形で書かれているでしょう。本当の彼女から来ている部分が沢山あるのと同時に、そうでないものも沢山あるのです。ですから、その選別をしなければなりませんでした。
それはとても不思議な体験です。なぜなら、ダニエル・デルプは強い個性を持つ人物で、私たちが語っているのは彼女のほんの一部分なのですから。
私は、ある程度(演じる人物の)性格の指針となるものを、身につけなければなりません。実在する彼女がいて、そして、彼女から解放されようとする私がいます。
そして、彼女という人物を自分のものにするのです。つまり、ここで私は、自分自身に近づこうとしているとも言えます。
特殊な性格に関する正確なデータと共にね。これは、錬金術のようなものです。演じる時は毎回このような感じです。今回、特別なのは、その彼女がそこに存在するということです。
でも、撮影が進めば進むほど、私は彼女がそこに居ることを忘れるのです。
ある意味、ダニエル・デルプシュのことを、私たちはそこまでよく知っているわけではありません。彼女自身というより、彼女の物語が有名なのです。
私には、そこにあまり感情移入しすぎないようにする義務があります。分かりますか?
私はこの役柄を楽しみ、またそれを真剣に考えています。エリゼ宮で料理をすることになるという出来事がどういうことなのか、理解しようとしています。
おそらく、それは彼女にとって予想外の出来事だったことでしょう。たとえ彼女がすでに素晴しい経歴を持っていたとしても。彼女はアメリカや日本へ行き、研修を受け、フォアグラについて学びました。彼女は野心的で、エネルギッシュで、アイデアに溢れた女性と言えます。かなり模範的な形で、自分の人生を勝ち取ってきた人です。
面白いのは、そんな彼女がエリゼ宮で直面する状況です。様々な人物、男性たちに囲まれて。彼女は、誰のために働くのかもよく分かりません。これらが、この物語の面白いところだと思います。
そこでは、人々が言うことと彼らが実際にやることは、必ずしも一致しません。それは政治の世界であり、多くの仲介者が存在する世界です。それでも彼女は、力強く頑張る、かなり自由な人物です。
ちょっとした反逆者であるとも言えますね。勇気があり、恐れを知りません。ですから…彼女のような小柄な女性が…。あら、ごめんなさい。私、間違えたみたいです。
私の頭の中には、これらすべてが混ざって入っています。今は撮影に入って3週目で、自分がこれからどうするか分かっている部分もありますが、自分自身分からないものもあります。
まさにパズルみたいな感じがしています。私はパズルが大好きです。1000くらいのピースがあって。それが大きな山になっていて。すでにお話したかもしれませんが。絵柄の断片が合うピース同士があって。空と雲の断片が合うピース同士がね。それから、家の部分に取りかかって、煙突の断片が見つかって、家が出来上がる。そんな感じでした。それに関して、感情は必要ありません。それぞれの物が、各自の場所に落ち着いて、全体が一つになって出来上がるのです。
執筆者
Yasuhiro Togawa