このたび、古代ローマ帝国下のイギリスにてローマ軍第九軍団5000名の兵士が忽然姿を消したという史実をもとに書かれた歴史小説の名作「第九軍団のワシ」(岩波少年文庫刊)を原作に、アカデミー賞受賞スタッフが映画化を実現した歴史ミステリー大作『第九軍団のワシ』が3/24(土)より渋谷ユーロスペースほか、全国順次公開となります。
ローマ人とブリタニア人、征服者と服従者という対立する立場で運命共同体として行動を共にし、第九軍団消失の謎と失われた旗印“黄金のワシ”の奪還に挑む主人公2人を演じ、初共演を果たしたのはチャニング・テイタムとジェイミー・ベル。本国公開時には、憎しみや猜疑心を超えた2人の友情が大きな話題となり、一部ではゲイ・ムービーとしても噂になるほどでした。昨今人気が高まるブロマンス(ブラザー・ロマンス)・ムービーとしての見方も楽しめるという声も多いです。



役柄とお互いの印象について
チャニング・テイタム(以下、テイタム):
ジェイミーとのシーンでは、心を開かずにはいられない感情のつながりみたいなものを感じたよ。ジェイミーが生涯の友となったのは確かだね。僕たちが演じたキャラクターは、2人とも行く先を見失い、心の傷と孤独を抱えている。一生夢見てきたものが突然奪われた時、人は何を支えに前に進んで行けばいいのか、運命に導かれ、その答えを探す旅に出たマーカスとエスカは、旅路を通して立ち直るための癒しを与え合うことになる。そして名誉や友情、信頼について学ぶんだ。

ジェイミー・ベル(以下、ベル):
マーカスとエスカが出会う剣闘試合のシーンでは、2人とも自由を奪われ心のよりどころを探している。やがて旅に出た彼らは、己に救いを与えるものは同時に敵ともなり得る、ということを学ぶんだ。この映画は壮大な史劇という枠組の中で、道を見失い、死を求めて旅立った2人の男の関係を繊細に描いている。エスカのキャラクターについては、野性的な面や揺るぎない精神力、誇りへの執着とそれをマーカスに伝えようとする姿、といった幅の広さにすっかり魅了されたよ。奴隷の身になるまでの最後の数日間などといった、脚本にはないストーリーをあれこれ考えたりもした。何かにつけ微妙なバランスで演じることが求められる役柄だったね。

テイタム: この映画は少年時代の夢を叶えてくれるものになった。貴重な体験が出来て、本当にラッキーだったと思っているよ。崖っぷちに馬を走らせ、剣片手に野原を駆け巡りながら、家の裏庭で遊んでいる子供のような気分になったんだ。

ベル: チャンバラごっこは子供にとってまさしく究極の夢だからね!
マーカス役がチャニングだと聞いて、彼とのコンビなら何かダイナミックでユニークなものを生み出せると思った。リハーサルで実際に彼の演技を見て、役を個人的に捉えているのがとても興味深いと思ったね。役に対する理解の深さもさることながら、2週間にわたるリハーサルを通して徐々に彼がキャラクターに息吹を吹き込んでいく様は、見ていて本当にワクワクするものだったよ。

テイタム: 映画に限って言えば、監督や脚本家、他のキャストとリハーサルをするのは初めてだったんだけど、お陰でその間にきっちりシーンを組み立てることが出来たよ。

ベル: 2人ともダンス畑の出身だという共通点は僕たちを結び付けたし、この映画で求められる肉体的側面を理解し演じる上でも大いに役立ったね。チャニングは元々実践派の役者だから、危険なアクションほど勇んでやりたがっていたよ。そうやってキャラクターが置かれた状況や感情の道筋について理解を深めていったんだろうね。お陰で代役を務めるはずのスタントマンは、やる事がなくて困っていたね(笑)。

役作りについて

テイタム: 撮影に入る2ヶ月前から身体をしぼるために総合格闘技や剣術のトレーニングを始めたよ。アスリートとしての土台がなければ、この役は務まらなかっただろうね。身体の動きや歩き方、話し方に至るまで、肉体的要素はマーカスのキャラクターにとってすごく重要なんだ。乗馬や行進、ローマ式歩兵戦術といった専門的な訓練も大切だったけれど、ローマ軍兵士らしい歩き方をマスターするといった根本的なことのほうが大事だった。サンダルを履くことで歩き方も自然と変わってくるし、声のトーンにしても胸を張った姿勢を保つことで響きが変わり、現代風じゃなくなる。そういった些細なことで、キャラクターと一体になれるんだ。

ベル: 映画の半分近くを馬に乗って演じるというのが、僕にとっては最大のチャレンジだった。乗馬の経験が一切なかったから、6週間かけて週3日のレッスンを行ったんだけど、レッスンを始めて2週間ほどで曲乗りもマスターし、リラックスして乗馬を楽しめるようになったよ。今はこれを活かして西部劇に挑戦したいと思っているくらいさ!
格闘シーンではエスカとマーカスの違いがはっきり出るよう心掛けたよ。優秀な軍隊によって鍛えられた戦士であるマーカスに対して、エスカは鋭い直感と闘志を武器に本能で戦うようなタイプだ。エスカにとって、すべての戦いは名誉と自由、そして家族愛をかけた決死の戦いなんだ。
ローマ帝国による英国支配についても、この時代の英国自体についても、ほとんど知識がなかった。ケルト民族とローマ人の歴史はすごく興味深かったし、侵略者と原住民の両方にとって不可思議な時代だったんだなと感じたよ。

マクドナルド監督について

テイタム: 『運命を分けたザイル』を観れば、ケヴィンが友情を軸にした人間関係を描くのにいかに優れているかが分かるはずだ。この映画は壮大な史劇とは言え、生きる理由を捜し求める2人の男を親密に描いている。2人の主人公に焦点を当てることで、お互いに対して抱いている感情やそれぞれの体験を浮き彫りにするんだ。彼ならこの物語の真髄を上手く捉えることが出来るだろうと確信していたよ。

ベル: 『運命を分けたザイル』は、大自然と闘う2人の主人公を描いている点でもこの映画に共通するものがあるね。ロケーション撮影では様々な自然の要素と闘いながら、とにかくいい映画を作るべく徹底的にしごかれたけど、そういったタイプの監督には敬意を抱かずにはいられないよ。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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