人生の再生を描く『クレールの刺繍』新星ローラ・ネマルク 単独インタビュー!
昨年のフランス映画際横浜で上映され、カンヌ映画祭では国際批評家週間グランプリを受賞した注目作『クレールの刺繍』が9月3日より公開される。
望まない妊娠を機に、不安を抱きながら日々暮らすクレール、息子を事故で亡くし、人生に傷ついているメリキアン夫人。寡黙に生きている2人が共通の生き甲斐の“刺繍”を通し、心を通わせていく様を描く。
抑えた語り口、奥深さのある映像の中で、一際目を引くのが主人公クレールを演じたローラ・ネマルク。赤い髪に、スッと通った目鼻立ち。『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』で映画デビューをし、本作が映画初主演となるローラ。不安な日々の中で前向きに生きようと変化していく17歳のクレールに血を通わせている。
☆『クレールの刺繍』は9月3日(土)よりbunkamuraル・シネマにてロードショー!
——日本にいらしたのはフランス映画際以来2度目ですね。印象は変わりましたか?
写真などでも見ていますし特に変わりはありません。日本と言われて思いつくのは『ロスト・イン・トランスレーション』ですね。フランスですごいヒットをしたんです。
——そんな日本で『クレールの刺繍』が劇場公開されます。
本当に嬉しく思っています。フランスと日本ではやはり文化に違いはありますが、それでもきっと『クレールの刺繍』は同じ感動を与えることができると思いますので、ぜひご覧になっていただきたいです。
——ローラさんは本作で新星と呼ばれる存在感を見せていました。クレール役はオーディションで決まったのですか?
キャスティングで選ばれました。その前に監督が私の作品を見てくれていて、クレールのイメージにぴったりだということで選ばれたんです。それだけでなく、キャスティングの前にシナリオをもらっていました。その時点ですでに本はとても完成度が高く、付け加えるものがないくらいでした。そのおかげでクレールの役柄が理解できましたね。そして病院のシーン、メリキアン夫人とのシーン、ギョームとのシーン、弟とのシーンなど重要なポイントを選んでクレールの心理的な面を理解して、監督ともたくさん議論をしました。
——どんなことを考えながらクレールを演じましたか?
私の頭の中には常にクレールがいました。頭の中で考えずに、本能的にというか。撮影当時は15歳でしたが同年代に属するということ、そして私自身がクレールと似た性格を持っているということも助けになったと思います。
——似た性格とは?
わりとはっきりとものを言うところですね。でもクレールの方が強い女の子だと思います。
——大きくなったお腹を母親に見せるシーンがとても印象的でした。
クレールは強い女の子ですが、人に判断されるのを嫌っていたり、自分を守っているようなところがあります。でもお母さんの前では判断されるどころか、考えてももらえなかった。でもそのことで自分のお母さんでもそんなに完璧な人間じゃない、わかってくれないところがあるんだからと理想化することをやめた。そうやってショックを受けたからこそ自分も母になろうと決めたんだと思います。
——新鋭のエレオノール・フォーシェ監督、セザール賞受賞女優であるアリアンヌ・アスカリッドさんとのお仕事はどうでしたか?
言葉で表すのは難しいですね。いろんな経験ができました。私達3人は率直に意見を言うという共通点があって、100%の信頼感があったからこそ様々な議論ができました。この作品で映画について、人生について学んだとしかいえません。撮影チームはとても若くて、寛容で、映画への意欲に溢れていました。肉体的にも精神的にもつらいものはありましたが、周りの方からいろんなものをもらって、内容の濃い体験ができました。
——クレールにとって刺繍が支えのように、ローラさんの支えになっているものを教えてください。
映画と家族と友人ですね。
——現在大学に通われていて、仕事との両立が大変だと思うのですが。
家族、友人、映画を見に行くことが優先で、そしてその後に仕事がありますね。今大学では哲学を専攻していますが、それは仕事でだけでなく、日々の生活にも役に立つと思っています。
——最後に観客の方にメッセージをお願いします。
クレールと夫人の感情を感じてください。そして皆さんに気に入ってもらえればと思います。
執筆者
yamamoto