韓国映画史上初のヒロイン・アクション『花嫁はギャングスター』。非情で命知らずな男達の世界にいき自分自身も女性であることを忘れ生きてきた主人公ウンジン。武器をもった男達が多勢で襲いかかっても誰も彼女を倒すことはできない。誰よりもクールでセクシーな女組長・ウンジンだが、唯一の肉親であり余命いくばくもない姉の「あなたのウェディングドレス姿がみたいわ」という鶴の一声で、急遽花婿探しに奔走することになり・・・。
 韓国での公開では『猟奇的な彼女』を抑えての歴代動員数5位という爆発的大ヒットを記録したこの作品。『キル・ビル』や『トゥームレイダー』などハリウッドでも大勢の男性を女性が一人でやっつけてしまうヒロインアクションはその痛快さで最近の流行にもなっているが、この作品ではその圧倒的な戦闘能力に加え、“結婚”という女性ならではの要素が入ることによって、よりドラマティックにかつスリリングなものに仕上がっている。
 監督は早稲田大学大学院で映画製作を学び、その後本国でテレビ番組のプロデューサーをつとめていたチョ・ジンギュ。本作で念願の監督デビューとなったチョ監督に作品について、聞いてみました!

※2004年5月8日より新宿ジョイシネマ3、銀座シネパトス他全国ロードショー




—まず監督のプロフィールからお聞きしたいんですが・・・
「韓国の大学を卒業した後、日本の早稲田大学の大学院の映画理論科というところで勉強しました。大学では映画を勉強していなかったので、留学して映画の勉強をしたかったんです。アメリカじゃなくて日本を選んだのは日本映画の雰囲気とか叙情とかが韓国にも合っていると思ったからなんです。そこを出たあとはまた韓国に戻りテレビ番組のプロデューサーを10年間つとめました。そこでは主にバラエティ番組を制作していました。」

—テレビ番組と映画を作る上での違いは感じました?
「違いよりも、バラエティを作っていたことが映画を作るときに色んなことで役に立ちました。ドラマのプロデューサーが映画を作ることもあるけど、ドラマは毎週やるしけっこう作品全部が長いですよね。だから自由もきく。でも映画は1時間半か2時間の中にすべてを表現しなければないですよね。セリフもインパクトあるものを選ばなきゃいけないしね。ドラマをやってた人が映画をつくるとちょっと無理があるかなって思うこともありますね。私はバラエティだったけど、バラエティ番組っていうのは何分間に何回笑わせなきゃいけない、とかそういうのがあるから映画を作る上でもそれはすごく残ってました。」

—日本で映画製作を勉強した監督からみて、日本と韓国の映画の作り方の違いって?
「日本は意識みたいなもの、伝統的なものや守らなけらばならないものが多くてそれに沿ってみんな映画を作ってると思う。韓国はもっと楽で自由に作っていると思います。」

—今回が初監督ですが、この作品を初監督作に選んだ理由は?
「日本から韓国に帰って番組制作をしてたわけですが、生活が安定されてしまってだんだん冒険心がなくなってきていたんです。そうすると映画監督にはなれないかもって思ったんです。そんなときにこのシナリオが入ってきたんです。女がヤクザのボスってすごく新鮮だと思いました。日本ではけっこうそういう設定ありましたけどね。でも、セリフとかがちょっと気になるんでシナリオを70%直していいっていう条件で監督することに決まったんです。主人公が結婚するっていうのもこっちで決めた設定なんですよ。」

—アクションの主人公なのに、結婚して、そして妊娠までするのって珍しい設定ですよね。女性が主人公ということですごくそのアンビバレンツさが効いています。
「他の作品『トゥームレイダー』とか『エイリアン』とかはかっこいいと思います。でも韓国や、日本もそうだけど、“家族”というモチーフをすごく大事にするんです。それを入れることでドラマが生まれ、この映画の力にもなってると思う。」

—強い女性がお好き?
「家内がそうだったら困るけど、社会的にはそうなってほしい。僕はフェミニストとはいえないけど、女性というものが好きなんですよ。女性は男性の未来なのでは?と思っています。」






—主演のシン・ウンギョンさんはクールな主人公で鋭角的な魅力でした!
「自分の中では彼女でいきたいって決定してたんだけど、彼女はなかなか承諾してくれなかった。映画の内容が子供っぽいってね。でもシナリオを何度も直して頼んだんです。最後に直したシナリオを見た彼女はようやく決心してくれましたね。」

—高額な保険をかけたり、アクションも大変だったそうですよね。
「アクション監督がちゃんといるんですけど、そこに美学的な面を考えるのが監督の役目。アン・リー監督の『グリーン・ディスティニー』のアクションシーンもすごく美しいでしょ。戦いというよりまるで昆虫がデートしているみたいなね。ケンカ以上のなにかをそこで見せなきゃいけないと思います。だからアクションに雨を加えてみたりしましたよ。」

—ヤクザ物っていうと拳銃がかかせないですけど、この映画では印象うすいですよね。ウンジンの武器もシザーナイフだし。
「日本もそうだけど、韓国はそれ以上に銃への規制が厳重で作ることも海外から入ってくることも難しいんです。彼女の武器のハサミっていうのは、シナリオを直して設定した部分なんです。カットしたシーンでは彼女がハサミで男性の大事な部分を斬るっていうのがあったですよ。社会に対しての警鐘を鳴らすっていう意味でね。」

—冒頭の雨の中のウンジンの伝説的なシーンは、『火山高』や『チング』のパロディでは?
「雨は黒沢明監督の『七人の侍』を意識しているんです。このシーンは他の監督にも影響与えているようで、『MUSA』も寒くて雨は使えなかったけどそうみたいですよ。黒沢監督の映画は今みても全然古くないんです。今でも観て勉強しています。」

—黒澤映画だったんですか!他にももしかしたらそういうパロディってありますか?
「子分の一人が死ぬシーンは伊丹十三監督の『タンポポ』で役所広司が死ぬところを借りてます。あの映画もすごく好きなんです。あとは丘の上での決闘シーンは、『姿三四郎』から借りています。いい映画からはちゃんと勉強しているんですよ!」

—パート2も製作されていますが、監督はそれにはノータッチですね。
「僕はパート2が作られているとき、別の新作を作っていたんです。「オッケドンム」というタイトルですっごい面白いですよ。1時間40分の上映時間の間に120回は笑いますよ。」

—「オッケドンム」はオリジナル脚本ですか?
「これもオリジナルではありません。僕はこれからも自分ではシナリオ書かないと思います。シナリオは別の才能ある人にまかせます。自分のアイデアだけでは限界あると思うんです。」

—最後に監督から一言!
「この映画は韓国映画史上で最高の記録をもっています。日本の皆さんにも是非観て笑ってほしいです!」

※2004年5月8日より新宿ジョイシネマ3、銀座シネパトス他全国ロードショー

執筆者

綿野かおり

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