ハードボイルドコミックの金字塔「HEATー灼熱ー」(武論尊原作、池上遼一作画)が遂に映画化になった。誰にも媚びず、従わず、自らの主義“気に喰わねェ奴は殴る”を貫くアウトロー。極道社会に突然姿を現わし、強靭な肉体と明晰な頭脳で裏社会の頂点を駆け上がっていく男、それが唐沢辰巳である。「今までの演技経験はほとんど役に立たなかった。唐沢を演じたことは演技というものを根本から考え直すきっかけになりましたね」、こう語るのは当代きっての骨太なヒーローに抜擢された笠原紳司だ。ブレイクのきっかけとなった「未来戦隊タイムレンジャー」(ANB)以来、出演作も目白押しの笠原。180cmを越える体躯に涼しげなマスク、抜群の運動神経、そして、天性の演技センスと大役に挑むに十分な資質を兼ね備えている。監督は横井健司。共演は袴田吉彦、白竜、寺島進、宇梶剛士、遠藤憲一など個性的なメンバーたち。劇中の緊迫したドラマとは打って変わり「現場は和気あいあいとした雰囲気だった」と笠原は言う。

※「HEATー灼熱ー」は2月14日よりテアトル池袋にてレイトショー公開!








——唐沢辰巳という役を演じて。
今までで一番難しい役ではありましたね。唐沢は内の激しさに反比例して物腰はクール、さまざまな感情が渦巻いているのに決して外には出さない男。自分が覚えてきた芝居が一切使えなかったんですよ。下手な芝居をつけるとかえって唐沢という人物が小さくなってしまう気がしたので。頭じゃなくってココ(胸を指して)で演じるっていうスタンスでした。表現をしないという表現方法もあるんだなと。演技というものを根本から考え直すきっかけにもなったというか。

——運動神経抜群の笠原さんですがアクションシーンも含め、撮影はかなりハードだったようで。
殺陣の道場には撮影に入る前しばらく通いましたけど確かにハードでした。朝方四時までアクションシーンを撮って少し休んで七時から大立ち回り(笑)、そういうこともありましたね。

——あれだけのアクションシーンの後でも髪ひとつ乱れませんよね。
そう、アクションをやってシャツの衿が乱れても次の場面ではキレイに直ってる(笑)。メイクさんとも「唐沢の髪は乱れないよ」とか言ってましたね。撮影は真夏だったんですけど「唐沢は汗なんかかかないよ」って言って、常に涼しい面持ちで(笑)。
それに、ナマっぽくならないように些細な動きを入れないようにしましたね。顔を手で触ったりとか、髪に触れたりとかはしないようにとか。ハンドルの遊びを入れてみたい欲求も少しはありましたけど唐沢はこうあらなきゃなって思ったんです。

——ちょっと人間離れをした唐沢に感情移入するのは?
僕としては全く逆の感想なんですけどね。唐沢って男は実はものすごく人間離れした人間くさい男だと思います。仲間に対しての思い入れは人一倍強いし、激しく熱いものを持っている。人間性に関しては逆に感情移入はしやすかったですよ。僕自身、こうありたいなという部分が多かったですし。

——新宿ロケ。トラブルはなかったんですか。やじ馬とか…。
トラブルっていうのはなかったですね。ただ、困ったのは新宿にいるオバ様、オカマ様たちで…。

——ナンパでもされたんですか!?
「ねぇ、店どこなの?」って。本物のホストだと思われた(笑)。カメラを隠しながら撮ってたので撮影だとは思わずに芝居をしている最中に話し掛けてくるんですね。そこは唐沢ですから何か言われても唐沢として対応してたんですけど、一度腕を掴まれたことがあって…。その時ばかりは助監督さんが出てきてカットがかかったんですけどね。

——ほかに記憶に残っているエピソードは?
一度遅刻しました(笑)。僕の出演シーンが朝一番にあったんですけど寝坊して30分の遅刻。で、遅刻ジュースっていうのがあったんですよ。全員にジュースをおごるっていう…。そういう日に限ってやたらと人が多くて。スタッフ、キャストで50人近くいたのかな。ジュース代で6000円(笑)。

——今後はどんな役にチャレンジしてみたいですか?
 人として優しい役をやってみたいですね(笑)。立場的に優しい、いい人の役っていうのもやってみたいですよね。フラストレーション含めてチャレンジしたいです。 

執筆者

寺島万里子

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