日本きっての超多産監督であり、世界がその才能を注視する三池崇史。数多の三池作品のなかでも、スタイリッシュな映像と奇想天外なラストシーンで人気の「DEAD OR ALIVE」シリーズの最新作が、この『DEAD OR ALIVE FINAL』だ。本作は、オール香港ロケにCGを多用して作り出した西暦2346年の横浜が舞台のSF映画。独裁者によって人口統制され、出産が禁じられた世界で、反政府勢力のゲリラたちとともに過ごすようになった戦闘用レプリカントと、独裁者に忠実な警官の生き様を描いている。
 キャストは、パート1から引き続いての哀川翔と竹内力コンビを除いては、ヒロインのジョシー・ホー、テレンス・イン以下ほとんどが香港のチャイニーズ・アクター。言語も、日本語・英語・広東語が入り乱れたアジア無国籍ムード。香港で撮っただけに、アクションも本格的ワイヤーアクション&クンフーアクションで魅せまくる。
 公開を前に来日したジョジー・ホーに、この快作の撮影現場でのエピソードを語ってもらった。2年前から日本語を学び、プライベートでは何度か来日しているというジョシーだが、公式の来日は今回が初めて。スクリーンとはまったく違うロングヘアで、ワイルドというよりキュートな印象。インタビューは、撮影から5ヶ月ほど経った頃だったが、いくらなんでも髪が伸びるのが早すぎる……と訪ねたら、今はエクステンションを付けてロングヘアにしているだけとのこと。では、現地で前衛的と言われている彼女に登場してもらおう。

『DEAD OR ALIVE FINAL』
1月12日(土)より渋谷シネ・アミューズにてレイトロードショー




——今回、三池監督の映画に出演されたわけですが、監督の印象から聞かせてください。
「三池監督はひじょうにおもしろい監督で、他の人とは違った何かを作れる人だと思います。そういう監督の作り方、表現の仕方がとても好きです。私自身も他の人と違ったことをやりたいとすごく思っているので、三池監督と一緒に仕事をして、彼から何かを学びたいという気持ちがありました」
——どんな映画になるのか、オファーがあったときに想像できましたか?
「想像できないんですよ。監督がどういうふうに撮るかおっしゃっていたし、だいたいのことは知ることができたのですが。CGを多用した作品なので、現場で『もうちょっと遠くを見る感じで』とか言われて、目の前にある大きなビルを後でCGでまったくないように消してしまうとか、そういうことがあるんです。そういうところで想像しきれない部分があります」
——監督が撮影した後で別のアイデアが浮かんで予定と違う映像になったところがあると言われてましたが。
「そういうことはよくあったみたいです」
——撮影中の監督とのコミュニケーションはどんなふうにしてとったのでしょうか?
「カメラマンとかスタッフの中には英語が話せる人がいたので英語とか、あと通訳が2、3人いたので通訳を挟んで。けれども、通訳を通してでも、監督の言いたいことを把握するのはひじょうに難しいことでした。あとはボディランゲージを使って会話するんですが、そういうときは監督を一生懸命に見て、監督の表現したい世界に入り込めるように努力しました」
——演出の仕方は、今まで一緒にお仕事をされてきた香港の監督とは違う部分がありましたか?
「何が違うかと言うと、香港と日本というまったく異なる文化・まったく異なる世界だと思うのですが、ひじょうに細かく言えば、三池監督は香港の監督にくらべてかなり大胆なんです。もうひとつ、三池監督はバランスを取ることができる方だと思います。とても前衛的なところがあるんですが、映画の効果などに関して、ユーモアの感覚とCGをミックスしています。ですから、それで出てくる効果がひじょうによくなる。たとえばひじょうにシリアスに撮ってしまったらダサいものになってしまうようなものが、彼の独特のユーモア感によっていい効果を出すようになっています」
——芝居の指示とかは、いろいろ言ってこられたのでしょうか?
「ひじょうに細かかったです。監督が私に要求したのは“自然に”ということでした。監督は、シーンとシーンの撮影の間にも私たちに時間を与えてくれました。3分とか30秒とかのひとつの演技に違和感があると、監督自身がこんな感じでと演じて見せてくれました」





——あなたの演じたジュンという女性について、あなたはどういう女性だととらえましたか?
「最初のほうでは、彼女は表面的な強さを持っている人。でも、それは表面的な強さであって、彼(テレンス・イン演じるフォン)に依頼心がある。でも、そこで彼が死んでしまうことによって、もっともっとたくさん考えるようになるんです。そして、哀川翔さんが演じる戦闘用レプリカント・リョウに会い、いろいろ教えられ啓発されるんです。そこから、本当の強さを持った女性になるという感じですね」
——演じ甲斐のある女性?
「そうですね。興味の持てる女性ですね」
——哀川さんは共演者としてどんな感じでしたか?
「すごく朗らかな方なんですけど、ひじょうに落ちついていて人を助けてくれる。私も日本語ができないものですから、いろいろ彼に聞いたのです。いろいろ質問すると、毎回きちんと答えてくださいました」
——実際、画面を見ていると、日本語と広東語で会話をしていてひじょうに不思議でした。
「私は、すごく嬉しかったんです。なぜかというと、私の今までのキャリアのなかでやっと日本で製作する映画に出れて、それも日本語をしゃべらなくていいんだなって。日本語をしゃべらなくてもわかってもらえるんだと思って、すごく嬉しかったんです」
——香港の俳優さんに「日本の映画に出るのはどうですか?」ときくと、皆さん「日本語を勉強しないと、言葉ができないとどうしようもない」とおっしゃるんですけど、実際やってみてそんな不安はなかったんじゃないですか?
「そういうプレッシャーがなくて、すごく楽しくやれました」
——それはとてもよかったですね。では、演じるときは、これは日本語でどういうことを言っているのかということを綿密に打ち合わせていたわけですか?
「脚本をもらって既にわかっていことですし、細かい打ち合わせというよりも、脚本を持ちながら監督や通訳、スタッフと丸く輪になって読みあわせをするという感じでした。そこで『だいたいこんな感じですよね』というふうに確認して」
——撮影中の苦労されたことというと?
「いちばん難しかったのは、やはり私が哀川さんが今何を言っているかを推測するということですね。みんなそうやって人のセリフを何を言っているか推測してやっていたと思います」
——同時録音ですか? 香港映画ではアフレコが多いですよね?
「同時録音です。香港ではアフレコもあるんですが、今はかなりの作品が現場での録音になっています。ただ、予算が少ない映画だとアフレコになったりします」
——同時録音で撮影されることに違和感はなかったのですね。
「はい。私が思うに、同時録音のほうがカッコイイものができると思うんですよ。現場での感情が入ってますからね」
——アクションで苦労した点はありましたか?
「いちばん難しかったのは、泳ぎのシーンですね」
——泳ぎは得意ですか?
「泳ぎとか演技の中で出てくる大変さではなくて、海で苦労したんです。海底の石が滑るんですよ。それで、助監督3人がその石で滑らないようにタオルを置いてくれたり。あと、水の中の石がすごく大きくてぶつかると怪我をするんです。それで、スタッフがみんな大きな石をどけてくれたんですが、作業中に手を怪我して血が出たりということがありました。泳ぎでは、三池監督が私に指示した距離が、実際すごく長い距離なんです。驚きましたが、勇気を持ってやりました」
——あれは香港のどのあたりになるんですか?
「西貢という所です(九龍半島北東部)」





——ジョシーさんご自身のことを少しうかがいたいのですが、プロフィールにカナダの陸軍士官学校とありますね。これは、軍の学校ですね。
「そうです。ですが、本当の兵士になるような学校ではありません」
——普通の学校よりも肉体訓練が厳しそうですね。
「毎日行進したり、そういう運動関係のことは多い学校でした」
——運動などが好きで選んだのですか?
「そうではなくて、母が私をその学校に入れたんです」
——そうですか。アクション映画のイメージがあったので、学歴もアクション好きでそうなったのかと思いました。
「スポーツは大好きです」
——最初から女優を志していたのですか?
「小さい頃は、歌手になりたいとは思ってました」
——CDも出されたことがおありですが、今は、女優としての活動が目立っているようですね。
「そうですね。歌も好きなんですけど、今は演技に対する理解度のほうがぜんぜん深いと思いますし、映画のほうが好きになっていますね。パフォーマンスも歌の世界での観客の反応より、映画での反応のほうが好きですね」
——今まで映画に出てきたなかで、特に思い入れの深い作品はありますか?
「いま、自分の思い入れがある映画のなかにこの作品が入ってきました。気持ちの中ではこの“DOA”がいちばんです」
——今後はどういった作品でどういった役柄に挑戦してみたいと思いますか?
「広くいろいろ演じてみたいと思っているんですが、“今”ということで考えると、自分の個性とまったく反対の役をやってみたいですね」
——というと?
「具体的に言うと、私は考え方とかが普通というわけではないので、考え方とか態度がとても平凡なOLの役がいいですね」
——いま、自分で考え方が普通でないとおっしゃったんですけど、どういうことですか?
「香港では、メディアや友達が私のことをちょっと変わっているというふうに言うんです。極端であるとか、ちょっと前衛的、ユニーク、違った存在、新しいタイプの女性というふうに。ですから、私と違うということになると、伝統的な女性ということになるでしょうね」

執筆者

みくに杏子

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