阪神淡路大震災で一人娘を亡くした夫婦の23年間を描いた映画『れいこいるか』(いまおかしんじ監督)。

夫の太助を演じた河屋秀俊さんは京都出身。『HANA-BI』(監督・北野武/98)、『顔』(監督・阪本順治/00)、『下妻物語』(監督・中島哲也/04)、『恋の罪』(監督・園子温/11)、『64—ロクヨン』(監督・瀬々敬久/16)『東京アディオス』(監督・大塚恭司/19)など数々の映画に出演してきた。

どうしようもなく不器用な夫は、どんどん先を歩く妻の姿をどのように見ていたのだろうか。舞台挨拶では、「太助に近いところがある」と語っていた河屋さんにお話を伺った。


――舞台挨拶で、21年前に初めていまおか監督とお仕事をされた際に、現場が凄く楽しかったとお話しされていましたが、どういったところが楽しかったんでしょうか。

河屋:とにかく台本通りに撮らないで、その場その場でみんなに考えさせて、ハチャメチャをやらせるんですよ。予測不能なことが他の現場ではほとんどないので、そこに尽きますね。

――今回の現場は、その時と違いはありましたか?

河屋:昔よりはハチャメチャじゃないんですけど、とにかく「もう一回やってくれ」「もう一回」「ちゃうなぁ、もっと違うのをやってくれ」って(笑)。楽しさは同じで。凄くやりがいがあって、色々なことを試してもらっている。そんな現場でした。

――太助さんについて、どのような男性だと思って演じられましたか。

河屋:自分は、自粛期間中もあまり人に会わず買い物に行くぐらいで、それが全然苦にならない人間なんです(笑)。孤独であり、孤独が好きな人間であり、女っ気がない。その辺が自分と太助の共通点ですね。実は、太助も浮気をしていたんじゃないかと思っているんですよ。たまたま地震の時に女性と一緒にいなかっただけで。だからあまり妻のことも責められないんじゃないかなって。自分が思う裏設定は自分の中で留めておいて、潔白な人間じゃないだろうとは思っています。

――彼らの23年間を見て、太助さんの伊智子さんに思い対する思い、感情と言うか。どういう愛し方だと思いましたか?

河屋:愛し方ね。(しみじみと)今言った裏設定は別として、やはり許すしかないって言うか。上から目線になってしまいますが、許す。責めない。愛情なのかどうか分からないですけど。そんな心情だったんじゃないかと思いますね。

――23年間の変化は、どのように思いながら演じられましたでしょうか。

河屋:会いたいっていう気持ちと、会わない方がいい、その辺があって。奥さんに対する気持ちより、死んだ子供に対する思いを結構考えていたんですよ。娘の苦しみを背負って生きていかなきゃならないっていう思いと、でも死んでしまった娘の分も楽しまなきゃならないっていう気持ちが大きかったですね。その気持ちを奥さんにぶつけることで、関係性ができてくるんじゃないかなと思いました。

――それもあってイルカのぬいぐるみをずっと。

河屋:そうですね。

――最後に観客の方に、特にここを見て欲しいという部分がありましたら。

河屋:震災で子供を亡くした夫婦の物語ではあるんですけど、震災だけに限定されたものではなくて、普遍的に大事な人を亡くした人たちの物語だと思っています。誰もが親しい人たちを亡くしたり、愛している人を亡くしたりっていう経験があると思うので、そういった人たちへのメッセージを感じてもらえればと思います。


元町映画館 8/28(金)まで。
[舞台挨拶]
8/21(金)17:20回上映終了後田辺泰信さん、上野伸弥さん

シネ・ヌーヴォ 8/28(金)まで。※8/15(土)からシネ・ヌーヴォXにて上映

京都みなみ会館 8/14(土)~8/27(木)まで。

執筆者

デューイ松田

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