10/18(金)より、十三・シアターセブンにて、上埜すみれ×カリスマ女装男子・大島薫主演の妄想ファンタジー映画『歌ってみた 恋してみた』が公開される。

ニートのゆうこはサブカルの街・高円寺に上京、男の娘ひかるの家に転がり込む。二人の共通点は“歌ってみた”の謎の歌い手「タクロー」の信者ということ。バンドマンのそうすけに憧れのタクローを罵られ猛反撃するも、タクローの正体を知る勇気が出ないゆうこ。タクローの正体はいかに!? 様々なサブカルチャーのコミュニティが存在している高円寺にて撮影が行われた本作。サブカル女子、男の娘、バンドマン、百合、怪人、妖精、ストーカーまで登場しカオスが更にカオスと化する。ゆうこの心の葛藤と妄想の行き着く先は?

映画『歌ってみた 恋してみた』は、カナザワ映画祭2018「期待の新人監督」選出、伊豆映画祭2018ではオープニング作品として上映。ユーラシア国際映画祭では『月間最優秀長編映画賞』を受賞した。

音楽活動中にMVの制作経験から、2015年に映画撮影を開始した西荻ミナミ監督。『歌ってみた 恋してみた』が長編デビュー作となる西荻監督に話を伺った。

 

映画『歌ってみた 恋してみた』って?

――この映画を全く知らない人にどんな映画だと説明されますか?
西荻:背景としては、上京した女の子が上京先でいろいろぶつかって、ちょっとずつ成長したり成長しなかったり(笑)。またその中で自分が好きな世界観に閉じこもってるのか、妄想なのか。そういう不思議な映画です。

――冒頭で“歌ってみた”の説明が出ますね。

西荻:まず“歌ってみた”を知ってる人と知らない人がいるんじゃないかなというのがあって、ただ引用して変えさせて頂いてるんですね。作品中にもオリジナルであるかどうかについて言及する部分があって、この作品がすこしわかりにくい話でもあるので、ヒント的なもの置いとこうかなと思ったんです。それが良いか悪いかわからないんですけど(笑)。

上埜さんは生きていく力がある人!

――キャストの魅力について教えてください。まず上埜さんがすごく面白くて、モノローグがちゃんと聴ける俳優さんだなと思いました。

西荻:そうですね! 上埜さんはおっとりしているけども、こだわりがちゃんとある人で。けれど周りともうまくやろうとしてくれて。そこのバランスが絶妙な方。生きていく力がある人だなと思いました。変わった人だと思うんですけど、ひねくれてない。僕自身ひねくれて変だと思うし、そういう人は多いと思うんですけども、上埜さんもゆうこも非常にストレートで変わった人だと思います(笑)。

――ゆうことひかるくんとの生活は非常に楽しそうでしたが、大島さんはいかがでしたか?

西荻:大島くんは紹介で出会って、ゆうこと一緒に生活している女装男子の雰囲気でがイメージできたので、脚本をそれに合わせたという感じでした。大島くんは器用な方ですね。言葉数が多い方ではないので、あまり話をせずにリハーサルに入ったんですが、よく把握をしていて最初からこの世界観を分かっている方だな、すごく才能があるんだろうなと思いました。

――かなりこじらせているそうすけ役の本村さんはいかがでしたか。

西荻:色々演じるのが苦じゃないんだろうな、俳優ってこういう感じなんだろうなと思った一番最初の人ですね。すごく器用で歌も歌えるし何でもできるんです。そうすけには、頑張ってる中で自分に嘘をついたり世間に嘘をついたりしている一番まともな人であってほしい。社会に近い人であってほしいっていう位置づけで演じてもらいました。

――マメ山田さんの存在は可笑しみがありましたね。

西荻:マメさんが出てくるということは、僕の中でおとぎ話ですよ、って表現してるのかもしれないですね。ありがたい存在です。

“男の娘”のとらえきれない魅力

――大島さん演じるひかるは“男の娘”ですが、“男の娘”のどういうところに魅力を感じられましたでしょうか。

西荻:まず女装してる男性っていうものは見てきてるんですが、その頃は女装子さんとか例えばニューハーフの方とか色々あったんですけど、その人たちは分かりやすかったんですね。女性になりたいから女装するとか、その格好が可愛いから女装するっていうおじさんとか。分かりやすかったんですけど、若い男性のまま女装して男性のままでいるって言うのがちょっと分かりづらくて、他の女装している人達に比べるとなんかちょっと引っかかるなと思ったんです。例えばキャストにニューハーフの方を使っても、同じような雰囲気になるかと言うと、そうはならなくて、男性のまま女性の格好して生活をしている人の方がちょっと不可解なものが多いと。それで不可解な物語の中に、他のキャストもそうですけども不可解なものをどんどん入れ込んでいるというところで、僕も答えが出てないところではあるんです。

――こんな外見の人はこういうキャラクターだと結論付けるのではなくて、監督が不思議に思われたりするものを、そのまま脚本に取り入れて行ったんですね。

西荻:もちろん思い込みもあるんですけどね。多分例えば女装の人だったらとか、サブカル女子の田舎の子だったらこういう人だ、幽霊だったら、怪人だったらこう考えてるとか、そういう思い込みがあるんですけども、あまりそこまで決めつけずに、その存在と見えてる風景だけで楽しめるものを作りたいなという思いがありました。

キャラクターは今の自分じゃないものを投影した存在

大学進学で静岡県から上京した西荻監督。卒業後フリーターをしながら、寓話を書こうと思いたつ。同時に詩作を始めたところで音楽を始め、その後MVを制作するようになり、ハルノヒレコードを設立。音楽もストーリー性があるものを手掛けてきた。同人誌、MV、本作も含め、西荻監督が手掛けた作品には当たり前のようにキャラクターが登場する。

――キャラクターというのは、西荻監督にとってどういった存在ですか?

西荻:重くなくしてくれるというんですかね。自分の言いたいヘビーな部分があったとしても、キャラクターがあれば許してもらえるんじゃないかとか。あと逆説的なんですけども、そういったものをキャラクターが言った方がリアルだったりするんで面白いなあと。自分の作品で出すのも、作品を読むのも好きですね。

――お好きな作品はどのようなものがありますか?

西荻:宮沢賢治、ねこぢる、さくらももこの『コジコジ』とか、ファンタジーって言いながら、言いたいこと言えちゃう作品が好きですね。『ムーミン』とかね。毒舌さを隠せている作品が好きです。

――今回の作品の中でもゆるキャラが登場したり、色々ありましたけども。

西荻:ゆるキャラが発生するには何かしら理由があるんだろうなっていうところがあって。かわいらしく見られたいんだろうなとか。みんな自分じゃないものになりたいんだろうなとか。例えばゆるキャラ、怪人たち、女装の人とか、ゆうこもそうですけど、“自分で勝手に作っている姿”という意味では、今の自分じゃないものになろうとしていることから発生するものかなと。高円寺っていう町もそうですけど、人が作り上げたイメージがある。この映画もこういう見た目なんで、こうだろうなって思うじゃないですか。本当はそうじゃないよっていうのがありますね。

――最後に観客のみなさんに一言お願いします。

観やすい人、観にくい人はいると思うんですよね。映画として与えて欲しい人には物足りない映画かもしれないですし、もちろんそういう方にも観てほしいですけども(笑)。その反面、全てにおいてものを考えたりするのが好きだったり、マイノリティなものに対しての考えが少しでもある人、クリエイティブなことを生業にしてる人には、少し響きやすく楽しみやすいかなと思ってます。気軽に観て頂ければと思っています。

『歌ってみた 恋してみた』の上映は十三・シアターセブンにて10/18(金)より。西荻監督は連日登壇、トークゲストも多彩!
■10/18(金)
ラミーさん
(UNDERHAIRZ)
@rummy_chocolove

■10/19 (土)
丸尾丸子さん
アコーディオン/口琴/うた
(挿入歌ぐるぐるⅡ作者)
@maruom_x

■10/20(日)
仲良真澄美(なかよしますみ)さん
「洋酒喫茶かんから」店主/占い師
@eskatye

信長書店ヒゲアブラーさん
信長書店の広報担当
@nb_higeabura

執筆者

デューイ松田