『ミッドナイト・イン・パリ』製作チーム再結集!世界の映画祭で観客賞ほか多数受賞!!
アルバトロス・フィルム配給にて、『SERGIO&SERGEI』(英題)が『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』として、12月1日(土)の映画の日に公開することが決定、この度、本作でセルジオ&セルゲイ役を演じたトマス・カオとヘクター・ノアのインタビューが届きました。
1991年、東西冷戦時代の末期。キューバで暮らす大学教授のセルジオは、ある日宇宙ステーションに滞在中のソ連宇宙飛行士セルゲイからの無線を受信する。激動の時代ゆえ孤独と将来の不安を抱える2人は交信するうちに、国境も身分も宇宙も越えて親友になる。そんな時、ソ連が崩壊したことで事態は急展開、セルゲイは帰還無期限延長を宣告されてしまう。家族を心配する親友を救おうと、セルジオは予想外の大作戦を思いつく…。
物語のモデルとなったのは、実在する元宇宙飛行士で“最後のソビエト連邦国民”と呼ばれたセルゲイ・クリカレフ。冷戦終結直後の奇跡のような出来事をファンタジックにアレンジしたのはキューバを代表するエルネスト・ダラナス・セラーノ監督。トロント国際映画祭ほか、世界の映画祭で観客の喝采を浴びた。
歴史に翻弄された2人の運命を交錯させた異色のハートフル・コメディです。

<トマス・カオ インタビュー>
・セルジオという役柄について教えてください。
セルジオはもうすぐ中年になろうという男で、ソ連でマルクス主義を勉強しました。そして娘と母親と3人で暮らしています。そんなとき、突然、ソ連が崩壊し、自分の周囲も激変する。生活を変えるしかないが、まだ心の準備が出来ていない。セルジオのように、あの激動の時代を生き延びるために、生活を変えるしかなかった人は大勢いたんです。

・役作りはどのように?

いろいろと大変でした。90年代は激動の時代だったので、大半の人は痩せていたんです。だから減量するために、トレーニングしなければなりませんでした。それに、ロシア語も勉強しなければいけなくて、ヘクター・ノアと一緒に、シオマラ教授に特訓してもらいました。でも、あの時代について学ぶことに最も時間を費やしました。勉強していくうちに、それまで知らなかった事をたくさん知りました。おかげで、セルジオをさらに理解出来るようになりました。90年代初めの人々の状況や考え方もよくわかりました。今のわれわれとでは、多くの点で違っています。

・ご自分とセルジオとの共通点は?
キャラクターを解釈するとき、まずキャラクターの分析から始めるのですが、必ず、自分の性格と重なる部分が見えてくるんです。危機的な状況にあっても、誰かを助けようという意志や勇気を持つことは、僕も最も重要なことだと思う。セルジオが絶対に守りたいのは、イデオロギーや政治ではないのです。自分の家族と、人としての誇りなのです。娘はまだ6歳で、母親はもう働けない。だから、自分の手でこの状況を切り抜けるしかないのです。そして自分に出来ることで、何とか切り抜けていく。僕にはセルジオの置かれた状況を理解出来たし、当時の人々がそれぞれどう対処していったのかにも、考えをめぐらせました。それをベースにして、セルジオのキャラクターをふくらませていきました。僕なら違ったやり方をしていたかもしれないと思う点もありますが、セルジオが下した決断も、考え方や行動も、僕にはすべて納得がいきます。

・セルゲイとの友情について教えてください。
セルゲイはソ連の宇宙飛行士で、ソ連崩壊時は宇宙にいました。ミール宇宙ステーションにいたのですが、祖国が混乱状態にあり、セルゲイが宇宙にいることはほとんど忘れられていたんです。セルジオは思いがけず、アマチュア無線を通してセルゲイに出会います。2人は共通点が多く、たちまち意気投合するのです。セルゲイは宇宙にひとりきりで孤独で、置かれた場所は違うけどセルジオも似たような孤独を感じています。2人はマイクとヘッドホンを通して、自分たちが置かれている状況を語り合い、なぜそうなったのかを一緒に考え、家族や夢についても語り合いました。心を通わせ合い、美しい友情が育んでいくのです。本作ではそのプロセスが丁寧に描かれています。

・セルジオと娘との関係について教えてください。
セルジオにとって、自分の娘は光なのです。娘を演じたアイリンも、この作品にとっての光なのです。アイリンとの共演を通して素晴らしい時間を過ごせました。

・セルジオという役を演じた感想は? どんな喜びや苦労がありましたか?
今回の役はとても苦労しました。でも俳優冥利に尽きる苦労でした。そういった苦労を含めて、俳優という仕事なんだと思います。キャラクターが希望をなくしているときは、自分も気が滅入るし、キャラクターが嬉しいときは、自分も喜びを感じる。物語が展開するにつれて、セルジオの心も大きく変化します。内面的な変化が大きい。あの非常時に、セルジオは周囲にいた大半の人々と同様に突然の変化に対して、何の心構えも出来ていませんでした。セルジオは控えめな性格ですが、深いキャラクターです。ダラナス監督のおかげで、セルジオをよりいっそう理解出来ました。ダラナス監督はあの時代をただ生き抜いただけじゃないのです。さまざまな出来事から刺激を受け、学んで、危機的状況にどう対処するか考えて生き抜いたのです。僕はまだ幼くて、当時のことはあまり覚えていません。だから当時のことを学ぶために、猛勉強しなければなりませんでした。

・ダラナス監督はどのような監督でしたか?
とても厳しい監督で、とことん集中することを求められました。リハーサルは少ししかやらないけれど、深いところまで掘り下げる。ダラナス監督はまるで修道士でした。すべてを取り仕切り、間違うことが絶対にない。今回の仕事は、まるで学校のようで、とても貴重な経験になりました。この映画を観て、観客がどんな反応を示してくれるか楽しみです。

・セルジオの世代は、本作で描かれた「非常時」に絶望したと思われますか?「社会主義」は再構築されたと思いますか?
社会主義が再構築されたかどうかは、僕にはわかりません。セルジオの世代は、確かに非常時を生き抜きました。でもセルジオより後の世代も、前の世代も、とても絶望していたと思います。あの時代を生きたどの世代の人々も、多くのことに失望したと思います。

<ヘクター・ノア インタビュー>
・セルゲイ・アシモフという役柄について教えてください。
彼は宇宙飛行士で、1991年から1992年までミール宇宙ステーションに滞在していました。ちょうどソ連が崩壊した時期ですね。プロ意識も責任感も強く、宇宙飛行士という仕事に愛着を持っています。セルゲイは、自分はこのまま宇宙に取り残されてしまうのではと不安を感じていました。いつ地球に戻れるのかも、いつ家族に再会出来るのかもわからない状況でした。宇宙飛行士も軍人で、軍事訓練を受けていました。だから、何としても自分の任務を遂行しなければという気持ちが、セルゲイにはあったのです。でも一方では、上官から「ミール宇宙ステーションの稼働を続けろ」と直接命令が下っても、自分の命を守りたい、家族のもとに帰りたいと願う気持ちがあって、葛藤に苦しむ場面もありました。そしてキューバ人のアマチュア無線家のセルジオとの友情が、すべての鍵を握っているのです。

・この役のオファーを受けたとき、どんな気持ちでしたか?
僕のキャリアの中で、一番大きなチャレンジだと思いましたよ。セルゲイはロシア人だ。だからロシア語をマスターしなければいけませんでした。それに無重力空間にいるので、ロープで吊るされることに耐えるため、体力をつけなければなりませんでした。眠れなくなるほど、オファーを受けるかどうか悩みました。そしてある晩、ベッドに入って、「あしたダラナス監督に電話して、この役に求められるものを自分が持っているのかわからないし、自分に演じられるのか自信がない」って言おうと思ったのです。それでウトウトしていると、悪夢にうなされて目が覚めたのです。そのとき、僕はこう思いました。「一体、何を迷っているんだ? 監督が信頼してくれて、この役を演じる機会を与えてくれているのに、なぜ自分を信じようとしないんだ?」って。翌朝目を覚ましたとき、それまでとは違ったエネルギーが湧いてくるのを感じたのです。俳優としてのキャリアを積み始めてからずっと、僕はチャレンジを求めてきました。今回こそ、その最大のチャンスだ、最も大切なチャレンジだ、と感じました。

・セルゲイという役には、どんなチャレンジが必要でしたか?
この役を引き受けてから、僕の生活は変わりました。家族や世の中やから離れる必要があったのです。この役を演じるのに不可欠な感情、孤独を感じるためにね。セルゲイは思うように人と連絡が取れないし、祖国が崩壊しているとき、本当にいたい場所にはいられないから。
原語も1つの壁でした。ロシア語は30年以上も前に勉強したことがあったのですが、学校で強制的にやらされたものだったから、ぜんぜん頭に残ってなかったんです。だから、トマス・カオ(セルジオ役)と一緒に、素晴らしい先生についてもらって、一から勉強し直しました。
ロープで吊るされたまま演技をすることも、僕にとって大きなチャレンジでした。ダラナス監督からロープのことを聞いたとき、どうしようか悩みました。僕は腰痛持ちなのです(笑)。安全ベルトをつけてロープで吊るされた状態でスムーズに動けるようになるまで、かなりの訓練が必要でした。まず、キューバで体力作りをしました。宇宙ステーションのシーンはバルセロナのメディアプロのスタジオで撮影したのですが、そこでプロのチームから、ロープで吊るされたまま動く方法を教えてもらいました。この練習で、脊柱がだいぶ伸びてとても驚きましたよ(笑)。

・セルジオとの友情について教えてください。
セルジオとセルゲイは思いがけずアマチュア無線で交信するようになり、たちまち意気投合します。セルジオはソ連でマルクス主義を勉強した経験があるから、セルゲイの経験や彼が現在置かれている状況についてとてもよく理解してくれたのです。友情が深まるにつれて、セルゲイはセルジオになら心を開くことが出来ると感じますが、いくらセルジオが頑張って何かをしてくれても、自分が助かる方法は見つからないような気もしているのです。
ダラナス監督はトマスと僕に、2人の関係をしっかりと考えて演じるようにと言いました。僕たちは、撮影中に2人が顔を合わすことも、一緒にいることも出来ないとわかっていました。だから、2人が無線で話しているとき、それぞれが無線に向かっている姿を想像しながら、お互いどんな気持ちなのかをしっかりと捉えることが必要だったのです。実際、そのシーンを演じたとき、とても多くのことを心に置いて演じなくてはなりませんでした。僕は監督に、「この役は俳優じゃなくて、CGでもよかったんじゃないですか」って冗談めかして言ったことがあるんです。あくまでも冗談ですが(笑)。とにかく監督は、僕が演じやすいようにすべての面において準備をしてくれました。この役を通して、素晴らしい経験が出来ました。

・撮影時のエピソードを教えてください。
ソ連の宇宙飛行士が実際に着ていた宇宙服を着ることが出来たのです。僕には夢のような経験だった。子憧れのヒーローが実際に着ていたコスチュームを自分が着て、子どもに戻ったような気持ちになったよ。その宇宙服を着ていた宇宙飛行士は、僕より体が小さかったので宇宙服も小さかった。だから僕がそれを着るには「身を縮める」必要があったのです。それに、長い間保管されていたので、いやな匂いもした。でも幸運にも、コスチューム・デザインのスタッフはみんな優秀で、僕でも着られるようにうまく調整してくれた。今この場を借りて、スタッフのみんなに感謝とお礼を述べたい。僕のせいで、撮影時間が大幅に延びてしまい、みんなに大変な迷惑をかけてしまったんですよ。分厚い宇宙服を着て、狭いスペースでロープに吊るされていたから、僕はいつも汗だくでした。でも汗がスクリーンに映ってはいいけない。無重力では汗も浮かないとだめだからね。

<STORY>
1991年、東西冷戦時代の末期。キューバで暮らす大学教授のセルジオは、ある日宇宙ステーションに滞在中のソ連宇宙飛行士セルゲイからの無線を受信する。激動の時代ゆえ孤独と将来の不安を抱える2人は交信するうちに、国境も身分も宇宙も越えて親友になる。そんな時、ソ連が崩壊したことで事態は急展開、セルゲイは帰還無期限延長を宣告されてしまう。家族を心配する親友を救おうと、セルジオはある奇策を思いつく…。

監督:エルネスト・ダラナス・セラーノ『ビヘイビア』
出演:トーマス・カオ(セルジオ)、ヘクター・ノア(セルゲイ)、ロン・パールマン
製作:スペイン・キューバ/2017年/93 分/シネスコ/原題:SERGIO & SERGEI/言語:スペイン語・ロシア語・英語
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