1947年、独立前夜、混迷を深める激動のインドで歴史に翻弄された人々を鮮やかに描いた感動の人間ドラマ『英国総督 最後の家』が8月11日(土・祝)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーいたします。

二つの国が生まれる時―英国領インド最後の6か月、真実の物語
主権譲渡のため任命された新総督のマウントバッテン卿、その妻と娘は、デリーの壮麗なる総督の屋敷にやって来る。500人もの使用人を抱え、大広間と迎賓室がそれぞれ34部屋、食堂は10部屋で、映写室も備えた大邸宅だ。そこでは独立後に統一インドを望む国民会議派と、分離してパキスタンを建国したいムスリム連盟によって、連日連夜論議が闘わされた。一方、新総督のもとで働くインド人青年ジートと令嬢の秘書アーリア、互いに惹かれあう2人だが、信仰が違う上に、アーリアには幼いときに決められた婚約者がいた…。

この度、マウントバッテン卿を演じた主演のヒュー・ボネヴィルのインタビューが到着致しました。

Q:『英国総督 最後の家』は監督のファミリーヒストリーを元にしたリアルなストーリーですが、役のオファーがきたときの感想を聞かせてください。
A:まず、役の話を頂いた時は、このマウントバッテン卿と僕は似ても似つかないと思いました。仮にエレベーターに顔を挟んだとしても、ああいう面長な顔にはならないと、これはご本人(マウントバッテン卿)の娘さんにも言ったのですが、あなたのお父様は映画スターのような非常にハンサムな方ですが、僕はそうじゃないから、いかがなものかと思っていました。監督からは別にこのマウントバッテン卿を真似できるような人、あるいはルックスが似ている人を探しているわけではなくて、その精神性を表現できる、そしてそのストーリーを語ることができる人を探しているというお話を頂きました。

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Q:これまでイギリス人として歴史上の人物として思い描いていたマウントバッテン卿と、本作が描くマウントバッテン卿というのは、同じ印象でしたでしょうか。それとも違いましたでしょうか。
A:僕らの世代は、マウントバッテン卿はイギリス領インドの最後の総督であった、これは皆知っていることで、そして彼は王族の中でもかなり重要な立ち位置にいて、たとえばフィリップ殿下を今のエリザベス女王(2世)に紹介する役目を果たした、ですとか、イギリスの王族の中でもとても際立ったある種煌びやかな存在で、父親的な存在でした。またチャールズ皇太子の好きな大叔父であったということもありますし、そういったイメージは昔からありましたが、彼が第二次世界大戦の最中にどういった仕事をしていたかなどはもちろん詳細には知りませんでしたし、そのインド統治の終盤でどういった仕事をしたのかは知らなかったので、その資料を読み進めていく中で、この時期、この時代にはこういった時代の一幕があったのか、この人はこういう人だったんだと改めて見えてきました。

Q:チャーダ監督は、徹底したイギリス的な礼儀正しさと公正さを具現化した男性としてマウントバッテン卿役にボネヴィル氏をキャスティングされたそうですが、脚本を読まれて、クランクインまでにどのような準備をされましたでしょうか
A:この人物に関しては、正直に申しあげると、資料を読めば読むほど分からなくなってくるんですね。そういう準備の過程の中で思い知ったのは、“やはり歴史には一つの客観的な事実というのはないんだ”ということだと思います。ある物語やある歴史的事実を色んな人が語っている訳ですが、その人がシンさんっていう人であったり、ジョンストンだったりパテルだったり、色んな人が書くわけですけれども、その書く人によって色んな視点があったり色眼鏡で語られるわけですから、分からないものだと思うのですが、マウントバッテン卿に関しても然りで、彼がどういったアイデンティティを持った人なのか、やはりなかなか紐解くのが難しく、人によっては「あの職には就くべき人でなかった」「能力は十分になかった」という人もいたり、あるいは「あんなとてつもない状況に投げ込まれて、ベストを尽くしたんだ」っていう人もいたりで、やはり真実がどこにあるのか分からない。ただ役者として意識するのはやはり、人となりがどうたったのかというところなんですけれど、これに関してはご遺族の方とお話しをしましたし、総督を務めたあとの晩年のホームムービーを見せてもらったりしたんですけれど、そういうところから色んな特徴をつかんだりしました。一つわかるのは、非常に虚栄心がある方なんですね。プライドがとても高い方なんです。そして、考えるよりもまず行動だ、という主義を貫いた方。僕に言わせるならば、彼はベストを尽くしたんだと思います。劇中でも誰かが言っていますが、「インドは既に燃えたぎる船なんだ」と。そういう中でベストを尽くしたんだと思います。彼が戦時中に愛用していた帽子を、僕も被ってみると、娘さんがアングルを直してくれるんです。お父さんはちょっとこう斜めに被る癖があったと。その方が映画スターっぽいからということで。
ここで歴史的に一番意識しなければならない重要なことは、あの時点まで英国の占領下にあったインドは、様々な派閥に分かれていたわけですが、ムスリム連盟がジンナー、あるいはネルーがいたりして、その三者あるいはその三派が一緒になって話すということがそれまではなかったんです。だから彼がその三派をとりもつことができた初めての人だということ、これは大事なことだと思います。ただ、解決策は他にあったんじゃないか、とか、分離独立は少し早まったのではないかという声はあるにはあると思います。

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Q:エドウィナ夫人を演じたジリアン・アンダーソンさんとのコラボはいかがでしたでしょうか。
A:彼女は本当に素晴らしい芝居を見せてくれたと思います。ご夫妻の映像素材など僕も観ているけれども、彼女はエドウィナのエッセンスを本当に上手く掴んでいて、崇高な芝居をみせてくれる。そもそも女優として本当に知的な女優で、各シーンにおいてポイントをちゃんと分かっていて、非常に勤勉に役にあたるし、それでいて目にきらりと光るなにかがあって、軽やかさもあったりして、ちょっと笑ったりするところもありますし、そういう意味では素晴らしい女優だと思います。監督とジリアンさんと私とでだいぶ話し合ってこの夫婦役に臨んだんですけれども、話し合った成果はちゃんと映画に出ていると思う。このご夫妻は複雑な結婚ではあった、これは誰もが認めるところですけれども、一つ確実に言えることは、インド独立後とんでもない状況になったんですが、二人はベストを尽くすんだという、これだけははっきりしていて、分離独立がなされた後もああやって現地に残った訳で、そういう夫妻だったと思います。ジリアンさんは、あのキャラクターの精神性をうまく活かせて掴めていると思います。もちろん、彼女自身、英国にルーツがあるということがあると思うんですけれども、素晴らしかったと思います。

Q:撮影中に最も印象に残ったエピソードがありましたら教えてください。
A:総督の官邸は現在インド政府が所有している建物ですので、現在はホテルとなっているマハラジャの宮殿での撮影だったのですが、8月末のインドは非常に暑い季節で、エアコンを何台も回していたりして、我々も厚い衣装を着ている中で大変だったんですが、何が大変だったかというとホテルが営業中だったんです。階段を降りた向こう側にプールがあるわけですが、撮影だからといって営業をやめるわけにはいかないと。最初に総督がインドに来て、それを迎え入れるシーンがありますが、赤いカーペットが敷かれ200人のエキストラが構えている中で、プールで泳ぎたいお客さんが2人ほどいたばかりに、いちいちカメラを止めなければならなくて、大変な撮影でした。

Q:最後に日本の観客へ一言、お願いします。
インド・パキスタンの独立の時期というのは、歴史の中でも非常に重要で、色々な物語が語られています。その中でも『英国総督 最後の家』このマウントバッテン卿の話は、重要なパズルのピースになるのではないかなと思います。ぜひお楽しみください!

映画『英国総督 最後の家』は8月11日(土・祝)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

STORY 1947年の6か月間、ルイス・マウントバッテンは、英国領だったインドを返還する為に、最後の総督の役職を引き受けた。彼は妻と娘と共に2階に、下の階には500人のヒンドゥー教徒、イスラム教徒、シク教徒の使用人が住んでいた。2階では政治のエリートたちが、インド独立の論議を行い衝突、世界に多大な影響を与える歴史的な決断がなされようとしていた。彼らはインド植民地をインドとパキスタンという二つの国家として分離独立させ、人類史上もっとも大きく急激な民族大移動を引き起こした。
監督・脚本:グリンダ・チャ―ダ(『ベッカムに恋して』)出演:ヒュー・ボネヴィル、ジリアン・アンダーソン、マニーシュ・ダヤール、フマー・クレイシー、マイケル・ガンボン  2017年|イギリス|カラー(一部モノクロ)|2.39 : 1|106分|5.1ch|英語、パンジャービー語、ヒンディー語|日本語字幕:チオキ真理|
原題:Viceroy’s House|配給:キノフィルムズ/木下グループ|後援:ブリティッシュ・カウンシル        公式サイト:eikokusotoku.jp
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