大阪市淀川区の第七藝術劇場で10/14から公開中の『蠱毒 ミートボールマシン』。監督は西村喜廣、主演:田中要次、百合沙。

西村監督はスペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭から帰った後、10/20の松本シネマセレクトでの舞台挨拶を経て、10/21第七藝術劇場にて主演の百合沙さん、出演の村杉蝉之介さん、仁科貴さん、大宮将司さんと共に舞台挨拶を行った。

 

『蠱毒 ミートボールマシン』は、謎の生物に操られたヒトとマシンの複合体、ネクロボーグの死闘を描いた『MEATBALL MACHINE ミートボールマシン』(05/山本淳一監督、山口雄大監督)を原型とする。その世界観を継承しつつ、オリジナル版で特撮・造型を手がけた西村監督が、脚本の佐藤佐吉さんとともに現代社会の労働環境の問題や格差問題にも言及したストーリーに発展させ、更に過激なバイオレンス・スプラッタームービーとして完成させた作品だ。

 

村杉さんから登壇の際にも流れた『蠱毒 ミートボールマシン』のテーマ曲について質問が上がった。

「あのロシア民謡的な感じは一応意味があるんですよね」

西村監督は某超大作の特殊造形プロデューサーを務めた際に赤字になったというエピソードを語り、

「『蠱毒 ミートボールマシン』のテーマは労働です。労働って何なんだろうと思った時にロシア民謡が浮かんで来てこの曲になりました(笑)」

 

村杉さんは「こういう作品に出たいがために役者を始めたようなもんなんです。シッチェス映画祭は僕らの世代では“シトフェス”言ってたの知ってます?ジャンル映画が大好きで、その頃から凄く憧れていて。今回は凄くかっこいい役で出してもらいました」と思い入れを語った。

 

村杉さんが所属する大人計画の公演で訪れたパリで、観客参加型の上映で知られる『ロッキーホラーショー』を体験した際の楽しさを語ったところ、

「絶叫上映とかやりたいね。百合沙がおっぱい出すところで、観客みんなでおっぱい出すとか(笑)」と西村監督が会場を沸かせた。

 

話は『蠱毒 ミートボールマシン』の海外上映の様子に。

西村監督が「反社会勢力の映画なんで(笑)」と称する本作。世界約55ヶ所の映画祭で上映され、平行して劇場公開も行われており、現在はインドのムンバイで上映中とのことだ。

 

百合沙さんからはシッチェス映画祭の報告が行われた。

「シッチェスでは【japan madness】 っていう特集上映があって、夜中の1時ぐらいから始まるんです」

梅澤壮一監督の『血を吸う粘土』、三池崇監督の『土竜の唄 香港狂騒曲』、最後に『蠱毒 ミートボールマシン』がそのプログラムだ。

「始まったのが朝の4~5時で皆さん帰らないんですね。電車もないし」

西村監督は「僕と三池崇監督と梅沢監督と3人で舞台挨拶ですよ。三池さんも“年寄りなのに夜中1時、大丈夫かな”と言いながら(笑)」

「三池さんもそうなんですけど、西村さんも立ってるだけで声をかけられるんですよ “NISHIMURA-SAN,PHOTO,PHOTO!”って。たくさん写真を撮ったり、舞台挨拶で観客にガム投げたりしましたね(笑)。絶叫上映でした。何かある度に“yeah!”、血が出る度に“yeah!”、おっぱい出たら“yeah〜!!!”(笑)」

 

最後に西村監督から観客にお土産が。

「お忙しい中、台風直前の中来て頂いたんで、欲しい人はジャンケンして持って帰りませんか」

西村映造の手ぬぐい3本と、西村監督がドイツのハンブルグ映画祭に行った際に、ニベアの本社で見学者が記念に作ることが出来る写真入りの二ベア缶が紹介された。しかも西村監督、『RE:BORN』の下村勇二監督、坂口拓さんの写真というレアなものだ。

観客とのジャンケン大会が盛り上がったところで、舞台挨拶もお開きの時間となった。

 

第七藝術劇場のあるビルの5Fシアターセブンにて田中健詞監督『パンチメン』も公開中の仁科さんと大宮さん。仁科さんはニベアつながりで
「今『RE:BORN』も京都シネマで上映中で、みなみ会館では石原貴洋監督の特集上映「大阪バイオレンス、3番勝負ニューバージョン」で、僕らも出てる『大阪蛇道』『大阪外道』といっぺんに来ました!皆さん是非よろしくお願いします」と観客にPRした。

 

「今日はご来場本当にありがとうございました。何度おっぱい見ても楽しいですよ。何度でも見てください。ありがとうございました!」

百合沙さんは堂々の挨拶で観客の笑いを誘い、大きな拍手と受けた。

上映後にサイン会が行われ、観客の皆さんとの交流を楽しんだ登壇者一同。

サイン会終了後に村杉蝉之介さんと百合沙さんにお話を伺った。

 

 村杉蝉之介「今回はストーキングなしで純粋に恋する男を演じました」

松尾スズキさん主宰の大人計画のメンバーである村杉蝉之介さん。個性的なルックスを生かしたインパクトの強い役柄で映画、TVドラマなどで活躍している。

『蠱毒 ミートボールマシン』では、主人公・野田勇次(田中要次)が憧れの三田カヲル(百合沙)会いたさに通う古本屋の店長・長谷を演じている。

 

――大好きな女性を下から支える役回りでしたが、どんなキャラクターと受け止められましたか。

村杉:いつもはストーカー役が多いんですけど、今回はどっちかっていうとストーキングなしで純粋に恋する男でしたね(笑)。
顔が半分なくなっても恋をする役で(笑)。

 

――西村監督の映画に出演されていかがでしたでしょうか。舞台上でも愛を語ってらっしゃいましたね。

村杉:オリジナリティですよね。よく漫画の映画化ってよくありますけど、西村さんは絵を描くように作っていくのが面白いですよね、全部やるっていうのが。頭の中のものを絵コンテに描いて、臓器も全部作って立体にしてそれをスクリーンで見せる。

ちょっと見れば西村さんの映画ってわかるのが面白いと思います。その上お笑いが入ってるっているのが凄く大切なことだと思っていて。本当に好きな監督なんです。

 

ここで西村監督が村杉さん演じる長谷さんの名シーンについて裏話を。

西村:「アスファルトだもん」ってその場で言いましたよね(笑)。

村杉:あれはどうだっけ。

西村:セリフにはないんですよ。

村杉:でも監督がその場で、台本にないことでも結構演出をされてましたからね(笑)。

このシーンについてはぜひ劇場でお楽しみいただきたい。

 

――これから観られる方に お勧めの言葉などお願い致します。

村杉:今日2回目観て気づいたんですけど、観れば観るほど面白い映画です。情報量が多いので何度でも楽しく観て頂ければと思います。

 

百合沙さん女優としていつかヌードになると思ってましたが、まさかこういう形で!」

映画『教科書にないッ!』シリーズに出演し、『LINKING LOVE』(金子修介監督)が公開待機中の百合沙さん。『蠱毒 ミートボールマシン』では主人公・野田勇次(田中要次)が思いを寄せる古本屋の店員・三田カヲルを演じた。純粋さが故に男に翻弄される薄幸の女性だが、混沌の状況の中で思わぬ強さを発揮する。

 

――『蠱毒 ミートボールマシン』では、ヌードを披露されましたが、ヌードという言葉から想像するものとは全く違うシチュエーションで、とても格好良かったと思います。脚本を読んでどう思われましたか?

百合沙:ありがとうございます (笑)。女優人生の中でいつかヌードになると思ってたんですけど、まさかこういう形でおっぱい出すと思ってもいませんでした。ただ“面白いなー。これならいいな。やりたいな!”と思いました。撮影は、東京・押上のマンションの屋上でやりました。晴天の中、開放的な気分で撮影しましたね。貴重な経験だったと思います。

 

――特殊メイクのある撮影はいかがでしたか?

百合沙:西村監督は撮影中は怖いよってずっと脅されてました。その通り怖いのは怖いんですけど、本当にみんな不眠不休でやってるんだなっていうことに驚いて。血も出ますし壮絶な現場でしたね。私は寝ることが出来たので、周りの皆さんの空気を感じ取って、テンションを合わせながらやりました。

 

――三田カヲルを演じてどんな女性と感じましたか?

百合沙:過去に色々あって 心の拠り所が宗教になっちゃうんですけど、宗教にはまって純粋に信仰している人を演じるのが難しかったですね。自分が信じているものをどう人に勧めるのか。西村監督からも詰められた部分で大変でしたね。ただ純粋に信じる心を自分でも信じて演じてみました。

 

――彼女の辿った人生はどう思われましたか。

百合沙:浮かばれない人生を送って来たと思うんですけど、最後に勇次さんや長谷さん(村杉蝉之介)、世話をしている男の子たちのように自分を守ってくれる人、大事に思ってくれる人が出来て、そういう意味ではいい人生だったんじゃないかなと思います。

 

――田中要次さんとの共演はいかがでしたでしょうか。

百合沙:田中さんは本当に裏表がない方で。待ち時間の間も事あるごとに「あるよ!」って言って笑わせてくれたりして、本当にリラックスして撮影することができましたね。

 

――これから観てみたいと思ってる皆さんにお勧めの言葉を頂ければと思います。

百合沙:西村さんが「これは恋愛映画だ」と言ってました。恋愛映画として楽しみつつ血が出る所もたくさんあるので、楽しく何も考えずに観てもらえたら。私もシッチェス映画祭も含めて何回も観てるんですけど、毎回必ず同じポイントで笑えるし新鮮に観ることが出来るので、何回観ても面白いと思います。

 

――ご自身で気に入ってるシーンはありますか?

百合沙:自分のロデオのシーンと、BoBAさん(田中要次さん)がランジェリーパブ天獄で楽しんでるシーンが一番好きですね!

 

『蠱毒 ミートボールマシン』は第七藝術劇場の上映に続き、兵庫・Cinema KOBEにて11/18(土)から、広島・横川シネマにて順次公開予定となっている。

執筆者

デューイ松田

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=55227