『ザ・マシーン』『インターステラー』『エクス・マキナ』『オディッセイ』といった本格SF作品の系譜を継ぐ興奮の近未来アクションドラマが誕生。
『スターシップ9』が8月5日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開の運びとなりました。

汚染により死にゆく地球の代わりを見つけるために、エレナは恒星間飛行の旅に出る。故障したスターシップを訪れたアレックス。彼こそが、エレナが初めて接触する運命の人だった。人類を救うために、二人は選ばれた。愛、献身、勇気、希望、決断、それが我々の未来を創るー。

監督は、映画専門誌VARIETYにて『注目すべきスペインの若手映画製作者の一人』に選ばれた俊英で、『ヒドゥン・フェイス』『ゾンビ・リミット』の脚本家アテム・クライチェで、本作が長編監督デビューとなる。出演は『ザ・エンド』(2012)のクララ・ラゴ、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)のアレックス・ゴンザレスといった若手実力派俳優二人を主人公に配し、ベレン・ルエダ(『ロスト・アイズ』(2010)、アンドレス・パラ(『コレラの時代の愛』(2007)ら名優が脇を固める。

Q:子供の頃からジャンル映画が好きだったのですか?
ジャンル映画は好きですが、ジャンルに完全にこだわったりその定義に縛り付けられたような形の映画を作りたいと思っているわけではありません。『ゾンビ・リミット』(13)ではゾンビが出てきますけど、例えばゾンビの出てこないような形で、ゾンビを使った映画とゾンビ映画とは全く違うことだと思うんです。『ヒドゥン・フェイス』(11)の場合は入口は心霊映画のようで幽霊とか出てきますが最終的にはスリラーになります。『スターシップ9』に関しても入口はSF的なアプローチですけど最終的には現実に根差したSFになるので完全なSF映画というジャンルには位置付けられないと思います。ですから私の中では正統的なジャンル映画ではなくて、一種のアプローチというかジャンルの要素は取り入れながらジャンルを横断していくような映画というのを作りたいと考えています。
私の場合はジャンルに縛られないこだわらないと同時に、色んなタイプの例えばゾンビ映画であっても心霊映画であっても最終的には現実に根差した物語を展開したいというのが私の願いとしてあります。

 

Q:コロンビアで撮影したと聞きました。ロケーションがとても近未来的というかSF的だなと思いました。CGなどは使っているのでしょうか?
CGは使っておりません。ほとんどの撮影をコロンビアのメデジンでしました。私の中で思い描く近未来というのは非常に両極化した社会が存在すると思っています。極端にお金持ちの人と極端に貧しい人がいて非常に混沌とした世界が近未来かと思っております。例えば東京と言うのはプラスの面で非常に近未来的な社会だと思います。しかし負の面というのが東京ではあまり見られない、スペインでも対照的な社会層の人々が存在する地域が無いんです。しかしコロンビアのメデジンでは近代的な側面を持つ地域と非常に貧困が集中しているような地域が同じ地域に存在していて、私の思う近未来の姿がビジュアル的に上手く撮れるんじゃないかと思いました。光に少し手を加えたりはしたが、外での撮影に関しては98%そのままの映像を使った。私が思う近未来のビジュアルととてもマッチしていました。

Q:さまざまなガジェットが出てきます。例えば紙が指紋認証のようなシステムだったり、、実現していそうでしていないギリギリのラインの技術が随所に見られますが、そういった部分のリサーチはされたのですか?
東京には全部あるかと思っていますけど(笑)。この映画はSF映画としては予算がとても少なく、撮影期間も5週間半しかありませんでした。だから撮影に入る前にたくさん話し合って調査をしました。もちろん映画に出てくるガジェットについても。ここに出てくるのは技術的には今実際にあっても不思議ではない、未来とはいっても遠い未来や遥か彼方の未来ではなくて、近未来それも現実にかなり近い近未来と言うものを考えていましたので、今あってもおかしくない装置というイメージをしました。
またロケ地のコロンビアのメデジンがロケ地になったんですが、私が描く近未来というのは、日本は幸運な国なのでそういう風にはならないと思いますが、両極端の世界が出てくる社会だと思うんです。金持ちと貧しい人の両極端になるのが近未来の社会だと思う。

Q:主人公のクララ・ラゴさん演じるエレナがとてもかわいくて、純真さや無垢さがとても出ていて良かったです。キャスティングや演出についてお聞かせください。
クララ・ラゴは私が初めて長編映画の脚本を書いた『ヒドゥン・フェイス』にも出演した女優です。彼女の世代の中では彼女が一番の女優だと思っている。なぜかと言うと彼女は非常に自然体で感性がよくて勘のいい、直感のある女優さんだと思います。この脚本を最初に彼女に渡した時に、「役作りが難しい、どこにすがって役作りをしたらいいのか」ということを言っていました。
エレナ役は普通の人間が成長していく過程で体験する愛であるとか失恋するとかいろいろな人との関わりが全くないところで生きてきて、ただひたすらトレーニングを続けているといった感じですよね。人生と言うものがどういうものなのか、人との関わりというものを全く知らないような女性なのでそれをどうやって役作りしていいのかわからないと言っていました。だからこそ彼女の持っている自然さや勘や純粋さが生きるんじゃないかと思いました。自然体と言うのは純粋さという面が出てくるかと思いますし、それで適役なんじゃないかと思いました。それ以外にもフィジカルな面でもこの役には合っていると思います。役作り意外にも彼女の持っている素質があったのではないかと思います。

Q:長編の脚本を2作書かれていますが、初長編監督作品を自分のオリジナルで作るということは、すごく恵まれていると思います。日本では原作ものやマンガの映画化だとかドラマの集大成的な映画などが多くてオリジナル脚本が少ないのですが、スペインではどういう状況なのでしょうか?
初長編監督作品を自分のオリジナル脚本でできたのはホントにホントに恵まれているし幸運だったと思います。日本がそういった状況だということは知らなかったが、それはハリウッドでも起こっていると思います。収益性ありき、収益性が確保できるということを前提に映画を作るという形になっています。スペインに関してはまだそこまでいっていない。確かに自分の脚本で作品を作ることは簡単ではなくて、才能のある人がいっぱいいながらなかなか作品を作れずに終わってしまうことも多いわけですけれども、まだオリジナルの脚本に基づいて映画を作りたいっていうそういった市場がスペインにはまだあります。
難しいことだし、ニッチではあるがまだオリジナル作品を作ることができる市場は存在しています。

Q:日本のみなさんにメッセージをお願いします
私にとって自分の作品は日本で公開できるっていうのは非常にうれしいし、日本の観客に気に入ってもらいたい。この映画のテーマは世界どこの国でも理解していただけるテーマであると思います。東京が大好きになりましたのでまた来たいです。


アテム・クライチェ監督プロフィール
レバノン系のサモラ出身の監督・脚本家。ヴァラエティ誌で2012年に「注目すべき若手スペイン映画製作者」の一人に選ばれている。アテムはサラマンカのUPSAでジャーナリズムを学び、その後キューバのEICTVで監督と脚本コースを学んだ。本作を監督する前に、『ヒドゥン・フェイス』(11)、『ゾンビ・リミット』(13)の脚本を手がける。彼は6本の短編映画を監督/脚本し、多くの国際映画祭から注目を集めた。そのうち最も有名なものは2009年のゴヤ賞にノミネートされた‘Machu Picchu’と2010年マラガ国際映画祭特別審査員賞受賞したGenio y Figura’である。

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