その作品が数々の映画祭で国際的な注目を集めている小林政広監督。今年の3月に北海道で撮影された新作の『殺し』は、雪に閉ざされた街で殺す者と殺される者との悲哀がまざまざと浮き彫りにされていくフィルムノワールです。11月4日より公開となったこの作品、渋谷・シネマ・ソサエティにて小林政広監督、主人公に殺しを依頼する男役の緒形拳さん、主人公・浜崎役の石橋凌さん、主人公の妻・和子役の大塚寧々さんが来場し、初日舞台挨拶が行われました。





それぞれのゲストの方が、一言づつ挨拶された後、会場のお客さんから寄せられた質問コーナーとなりました。紫綬褒章を受賞されたばかりの緒形拳さんは、北海道での撮影の様子に関して尋ねられると「結構楽しかったよなぁ、つまらなかったか?寒かったっけ。こんなもんでいいかな」と独特の存在感を感じさせますが、言葉少なめ。大塚寧々さんとの共演が続く石橋凌さん。ファンの方から、それが石橋さんの意向なのですかと言う問いかけには、「僕もそうですし、監督の方からでもあります。偶然だったんですけど監督とこの作品の話をしているお店で大塚さんとお会いして、なんとなく決まっちゃいました。」と、運命的というには大袈裟かもしれないですが、面白い巡りあわせを感じさせるエピソードを披露しました。また、男性ファンからの「石橋さんの思う、男のかっこよさと、男のかっこ悪さとは」との質問には、ずばり「この作品をご覧になっていただければ、そのかっこ悪さが出ていると思います。浜崎という男ですが、男の悲しさだとか愚かさみたいなものを、笑っていただけたらと思います。笑っていただいて、最後に幾つか映画のテーマになっているものが、日本の今の現実が散りばめられていると思います。それを、この男を通して観ていただければ判ります。」。カッコ悪さを語る石橋凌さんのカッコよさは、同性をもシビレさせるものがあります。




 最後に、ゲストの方々が作品の見所などを一言づつ、

小林政広監督——この映画は登場人物が極端に少なくて、ほとんどここにいらしている方と深水三章さんの3人ないし4人で展開する話で、役者さんのお芝居にかなりの部分がかかっていますので、そのあたりを楽しんで見ていただければと思います。

石橋凌さん——『殺し』というタイトルで自分が出ていると、いつまた石橋キレるんだ、怒鳴るんだというイメージを持たれるかと思いますが、今回はブラック・コメディで笑っていただきたいなと思います。余白が沢山ある作品だと思いますので、それを皆さんで感じていただければと思います。

大塚寧々さん——いい役をすごくいい感じで出来たと思います。北海道の風景もすごく印象的でした。この前の仕事でも凌さんとご一緒させていただきましたので、そんなに緊張せずに出来たと思います。

なお緒形拳さんは、静に場内を見据えられていました。

『殺し』は渋谷・シネマ・ソサエティにて、好評公開中です。

執筆者

HARUO MIYATA

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