<山下将軍暗殺!?密室殺人、容疑者は10人、鉄のアリバイ、衝撃のラスト!?>——現代日本映画カルト中のカルト「シベリア超特急」が2000年1月、スケールアップして帰ってくる!!スーパー・サスペンス・アクション・ロマンというジャンルを生み出したシリーズ第2弾は『虚栄のかがり火』、『戦艦ポチョムキン』、『羅生門』と相変わらず名画へのオマージュが盛りだくさん、淡島千景、加茂さくらほか豪華キャスティングで往年の邦画ファンを泣かせてくれます。投じた製作費は前作の2倍とか、3倍とか!1人5役(監督、主演、製作、原作、脚色)で大活躍する我らがヒーロー、水野晴郎ことマイク・ミズノがこのほど独占インタビューに応じてくれました。「シベ超2」を3倍楽しむ秘話、聞きたくありませんか!?(「シベリア超特急2」は銀座シネパトス、シネマ・カリテで1月13日からロードショー公開)


——「シベリア超特急2」、完成おめでとうございます。物議をかもし出した前作から5年。これまでずっと構想を暖めていたのでしょうか。
水野晴郎「とんでもない。準備期間は1ヶ月しかありませんでした。99年の暮れ近くでしたかね、パート1がTUTAYAのベスト10に入ったりと、急にもてはやされるようになったんです。この現象はなんじゃい、と思って研究していたら、意外にファンがついていることがわかりましてね。だったら2作目を撮るチャンスじゃないかと」

 ——淡島千景さんほか、往年の名優が勢ぞろいしています。短期間でこれだけのキャストを揃えるのは並み大抵のことではないと思いますが。
水野「全員にラブレターを書きました(笑)。今、思うとラッキーでしたね。昨年の12月に撮影をしたんですけど、今年(2000年12月)だったら舞台やなにやらで殆どの方のスケジュール調整が不可能だったんですよ。前作が外人ばかりでしたので、本作は戦争の悲劇を日本人のなかに象徴できないかなと思ったんです」

 ——舞台は列車からホテルへ。謎解きもいっそう複雑になってますね。
水野「列車だと絵的にも前と同じになっちゃいますからね。線路が爆破され、ホテルに泊まる設定にすると密室殺人のトリックも使えるでしょう。僕はね、アガサ・クリスティが大好きなんですよ。小説読んでるときもそうですけど、こんなことできないかな、どうかな、なんてことばかり考えてますねぇ」


 ——撮影で一番たいへんだったことは。
水野「最初の長回しのシーンでしょうね。ブライアン・デ・パルマの『虚栄のかがり火』をやりたくて、けれどスタッフは猛反対したんです。でも…、どうしてもやりたかった(笑)。それで説得して撮ったはいいんですが、もし、失敗したら頭があがらないじゃないですか、『それ見たことか』ってことになるとねぇ(笑)。だからものすごく緊張しましたよ。女優さんにも言われましたけど『撮影でこんなに緊張したの、久しぶりだわ』って」

 ——名画から閃いたシーンもあったとか。
水野「ありますね。長回し(『虚栄のかがり火』)とラスト近くの告白シーン(『羅生門』)なんかがそうです。僕は素人ですから、それを助けてくれるスタッフがいてこそできたシーンです。スタッフは皆、本当に気を使ってくれましたね。『水野さん、もう遅いですから先に寝ててください。僕らが撮っておきますから』とかね、言ってくれるんですよ」

 ——とはいえ監督も2度目となると、進行はよりスムーズに進んだのでは。
水野「それはありますね。パート2の方がうまくなったとも言われます。だけどね、僕はパート1も好きなんですよ。愛おしいんだなぁ、やっぱり」


 ——「シベリア超特急」を撮って、映画の観方も変わったそうですね。
水野「映画評論家をにくらしいと思いましたよ(笑)。発表した当時はボロクソでしたからね。無国籍とかね、よくわからないとかですね。僕にとっては全て意味があってやったわけでして、例えば無国籍ですね、戦争というのは世界の人を悲劇に巻き込むわけですよ。ましてやシベリア超特急みたいな国際線には外国の人が乗っているのは当たり前ですよね。……ですから、自分が映画を観るときも、監督の意図を組む努力をするようになりました。何でもかんでも愚作だと言うのは間違ってるんじゃないかと思うんです。何かを伝えようとみんな一生懸命作ってるんですから」

 ——発表当時はボロクソ。でも、最終的に受け入れられる確信があったとか。
水野「生意気に聞こえるかもしれませんけど自分ではカルトになると思っていたんです。周りは“何言ってんだか”という反応でしたけどね。とはいっても、現実になって最初はちょっとびっくりしました(笑)。「シベリア超特急」は、自分が青春時代に見た映画の作り方、それがベースになってます。若い人たちにとっては、今まで見たことのない作り方だったんじゃないかと思うんですよ。それが新鮮にうつったのかなと、分析していますが」

 ——3作目の構想も着々と進行中。映画作家・水野晴郎の今後のご予定を。
水野「幾つか案があるんですよ。完結編にしてカナダかオーストラリアとの合作にして、配給はアメリカにするか。向こうの列車を使ってね。夢みたいな話ですけどね(笑)。あるいは今度は監督業に集中するかもしれません。山下将軍はあたまとお尻だけにするとかですね。「シベリア超特急」とは別にラブ・ストーリーの企画もあるんです。これも脚本はできてるんですよ。井原西鶴の「好色5人女」をベースにしたものすごいラブストーリーなんです(笑)。海外でのロケも考えてるんですが、製作コストがですねぇ。「シベ超2」が当たれば軌道にのるのかなぁ(笑)。ですから皆さん、どうか、どうか、応援宜しくお願い致します」

執筆者

寺島まりこ