第57回ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映され、観客を圧倒した北野武監督初の日英合作「BROTHER」が2001年新春、いよいよ全国公開となる。中野サンプラザで行われたライブ&披露試写会の合間を縫い、監督以下、主演のオマー・エプス、真木蔵人、日英両プロデューサーの森昌行、ジェレミー・トーマスは12月7日、記者会見を開催。「内容は殆ど真珠湾攻撃だよ(笑)。山本ってやつと加藤ってやつが出てきて。山本五十六と加藤隼で真珠湾攻撃のパロディになってる(笑)」と軽口を飛ばす北野監督だが、一方で「あっという間にできてね。いいもの出来る時は何の苦労もしないもんだな」とやや照れながらのコメントも残した。



「BROTHER」の撮影は殆どがロサンゼルスで行われた。ユニオンの問題など当初は不安も多かったと言う北野監督だが「結局、どこで撮っても映画のルールっていうのは一緒。ゲームのルールと同じだな」。キーパーソンは自身が演じた日本のヤクザ山本、その弟に北野作品2度目の出演となる真木蔵人、そして彼らの親友デニーにオマー・エプスが扮している。「2人のおかげで撮影もあっという間。俺自身は何もしなくて大丈夫だった」(北野監督)。全米でも注目されているオマー・エプスは全シーン、1テイクのみ。ラストシーンはリハーサルもなし、いきなり本番ですんなりオーケー。映画中、高い評価を受けているシーンのひとつだが監督は撮影に立ち会えなかったという。後で見て「自分の監督としての勘は優れているなと。やっぱ、俺は偉いなと(笑)」。オマー本人は「あの時、そんなに時間がなかったんですか?結構軽い気持ちでやっちゃったんですけど」と返し、続けて「でも、たけしさんと仕事してすごく刺激を受けました。日本映画とか、アメリカ映画とか区別したがる人に言いたいのはこの『BROTHER』に未来があるってこと」。真木蔵人は「僕としては同じ世代、20代を映画館に呼びたくて頑張りました。ヒップホップやってる友人と一緒に試写を観たんですが彼はすごく興奮していましたね」と言う。

本作は12月半ばからフランスで一足早く公開される。300館というメジャー作品並みの規だ。1月には他ヨーロッパ、4月には全米公開の予定。プロデューサーのジェレミー・トーマスは壇上で監督に向かい「さまざまな言語による殺人的なインタビューをこなしてくれてありがとう」と頭を下げた。来年もプロモーションに合わせ、北野監督は出来る限り現地に向かうとのこと。「21世紀に相応しい、日本映画の枠を超えた作品と確信しています」、オフィス北野の代表兼プロデューサーの森昌行はそう語る。
(撮影/中野昭次)

執筆者

寺島まりこ