トビー・マグワイア×『ラスト サムライ』の監督が贈る
歴史を動かしたチェス頂上決戦の真実

アメリカ合衆国とソビエト連邦が、世界を東西二つに分けていた冷戦時代。武力で直接戦わない代わりに、スポーツも音楽もアートさえも、どちらが世界を制するかという両国のプライドと未来をかけた戦いだった。1972年に開催された、チェスの世界選手権はその最たるものだった。世界チャンピオンのタイトルを24年間も守り続けてきたソ連の前に立ちはだかったのは、IQ187の天才にして稀代の変人といわれたアメリカの若きチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャー。絶対王者、ソ連のボリス・スパスキーとの対局でフィッシャーが繰り出した、驚愕の一手とは—?






Q:目指したのはどのようなことですか?

非常に大きくて重要な歴史的瞬間を背景にした、とても個人的な物語を作ることだった。

Q: 歴史的にも数奇な運命を辿るキャラクターですが、どうして彼の物語を描こうと決心されたのですか?

公の物語と個人的な物語の両方を語るつもりだった。メディアを通して語られた、ある大きなイベント。そのイベントを管理する、あるグループ。そして、秘密にされたボビー・フィッシャーの非常に私的な体験。それらの要素をバランスよく絡み合わせることが重要だった。

Q: 彼を動かしていたものとは何でしょう?

彼は天才、神童だった。チェス競技で尊敬を集め、大いなる誇りと野心があった。だが、彼には子供時代に根差したある種の脆弱性があって、悪いことにそれはとても繊細でもろかった。それら2つのことが突出してせめぎ合い、彼を動かしていたのだと思う。

Q:歴史的背景を見事に描き出していますが、あの時代を再現するのは楽しかったですか?

楽しかったよ。旧式フィルムを使って、昔のカメラで撮影した。当時のニュース映像を真似るのも面白かった。インタビューのいくつかは実際の言葉を使い、ディック・カヴェット本人に来てもらって、ボビーとのインタビューや映像をまとめる手助けをしてもらった。時代物は面白い。タイムカプセルに入るような特別の楽しみがあるんだ。

Q: 冷戦という歴史的背景はいかがでしょう。競技以上の駆け引きがあったのでは?

そうだね。あれは、第二次戦略兵器制限交渉(SALT II)直前の時代だ。僕は60年代初期に育ったが、キューバ危機が起こり、僕たちは机の下にかがんで防御した。アメリカがソビエト連邦を差し迫った脅威と見なした時代だった。そんな時、我々はこのブルックリン出身の若い米国青年をソ連に対抗すべく送り込んだ。我々の心に響く素晴らしいドラマだよ。

Q: トビーが素晴らしいです。彼はどういったタイプの俳優ですか?

天賦の才能があるほかに、仕事に対してとても真剣だ。完璧にリサーチし、準備万端で、集中し、個々のシーンややってみたいことについて話し合うことができる。

Q: チェスの駆け引きが面白いです。この競技は小さなボードの上で起こるのに、サスペンスに満ちています。

確かに。チェスはどのスポーツにも劣らないほどサスペンスに満ちている。素晴らしい選手がいる。精神の強さが問題だと偉大な選手は口を揃えて言う。彼らは才能を手足ではなく、知力で示す。2つの知性の闘いだ。

Q: 互いの心理戦が物を言う?

その通り。「チェスは相手を支配することだ」とボビー・フィッシャーは言った。意志の勝利なんだ。

Q:この映画のあとに、彼の心に何が起こったのだと思いますか?

彼はすでに落ち目だったし、それは避けられないことだと思う。診断の前だが、彼は確かに妄想性障害を患っていたと思う。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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