豪華女優たちの、艶やかな競演!
仏映画界の若き巨匠が、圧倒的映像美とクラシック音楽と共に描く、スター女優の光と影。

──2014年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で喝采を浴びた本作は、きらびやかな世界に生きる大女優の葛藤と孤独を、スイスの大自然を切り取った美しい映像と、シャネルの特別協力による華やかな衣装、ジュエリー、メークアップ、そして壮大なクラシック音楽とともに優雅に描き出す。主演ジュリエット・ビノシュの圧倒的な存在感と名演はもちろん、クロエ・グレース・モレッツ、クリステン・スチュワートという若手人気ハリウッド女優たちが、華やかに艶やかに競演。本年度セザール賞では、クリステン・スチュワートが米国人女優として初の助演女優賞を受賞し、一気に演技派女優としての評価を高めたことも大きな話題を呼んでいる。

$red Q:この作品を書いたきっかけについて教えてください。 $

アサイヤス監督:ジュリエットからインスピレーションを受けて作った作品です。今回の作品を作るにあたってはまずは『夏時間の庭』の世界的成功があるのですが、しかしジュリエットは、あの作品の中では大きなパズルの中の一つのピースに過ぎず、欲求不満があったのだと思います。私たちは長いつき合いでもありましたから、『夏時間の庭』での協力関係をさらに突き詰めて、また一緒に仕事をする価値がある事ではないかとジュリエットが考えたのだと思います。そして、彼女の方から私に電話がかかってきました。私たちは昔『ランデヴー』という作品で俳優と共同脚本家として出会いました。それからとても長い時間が経過したという事に気づき、めまいがするような気がしました。私は、その“時間の経過がもたらすめまい”について映画が作れるのではないかと考えました。





Q:主人公のマリアのキャラクターは、どのように決めたのですか?

アサイヤス監督:マリアとジュリエットを切り離して考えることはできないのですが、マリアはジュリエットを巡るキャラクターとして私が空想して作り上げた人物です。実際にはマリアとジュリエット本人は、似ている所もあれば違うところもあるでしょうが、ジュリエット自身もこの役を演じることを楽しんでいたと思います。マリアの役は映画を観る人が「ジュリエット・ビノシュはきっとこういう人だろう」と想像するジュリエットのイメージに似ているのではないでしょうか。ジュリエット自身も完全にマリアと同じではないけれども、そうなったかもしれない人物として楽しく演じ、自分を作品に投影してくれたと思います。

Q:クリステンとクロエの起用について教えて下さい。

アサイヤス監督: クリステンは確かに『トワイライト』の成功とメディアによって有名になりましたが、彼女はユニークな存在感のある稀有な女優だと思っていました。ショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド』の時から、端役でしたが存在感を示していました。彼女はとてもカメラ映りが良い、アメリカ映画の女優としては稀有な存在です。ハリウッドの大作に出ている彼女にとって、ヨーロッパのインディペンデント映画はリスクかもしれません。その代わり、私は彼女にはこれまでの映画では与えられなかったものを与えてあげられるのではないかと思いました。人工的に作り出された役柄ではなく、彼女自身のインプロビゼーションができる十分な時間を与えました。それは人工的に作り出された登場人物とは違うものとなり、今回の私の演出によって彼女のキャリアのある一時期に発見があり、自分が想像しているよりももっと長く女優としてのキャリアを伸ばしていけるのではないかと思いました。クロエに関しては、当初成熟した大人な若い女性を探していたのですが、何よりも彼女には狡猾さがありました。役より実年齢がかなり若かったのですが、彼女に会って、彼女でいこうと決めました。結果的にはそれぞれの役で最初に選択した二人が出演してくれて、(キャスティングは)大成功したと思います。

Q:現場でのジュリエット・ビノシュとクリステン・スチュワートのコミュニケーションはどのような感じでしたか?

アサイヤス監督:ジュリエットとクリステンはそれまで全く会ったこともなかったのですが、撮影の初日と2日目で冒頭の列車のシーンを撮りました。撮影を重ねるにつれて、彼女たちの間に徐々に信頼や友情や敬愛の気持ちが芽生えていったようです。もともとクリステンはジュリエットの生き方や仕事ぶりを見ていてリスペクトしていたそうです。ジュリエットとクリステンの関係がうまくいくことがこの作品にとって重要なポイントでしたから、準備の段階では不安になり、私は危険を冒しているのではないか? という気がしてきました。もしも、ジュリエットとクリステンの気が合わずに二人の間に緊張が漂ったら良い映画にはならなくなると心配しました。ところが実際には全くそんなことはなく、脚本を書いた時と違うものになったのは彼女たち自身の演技と力動性のおかげです。クリステンにとってジュリエットは、自由と精神のバランスを保ち続けてきた女優であり、そのメカニズムとビノシュのキャリアの道程を学びたいと思っていたようです。かたやジュリエットがクリステンの中に見たものは、若いけど映画に対する情熱があることです。お互いに刺激しあい、いい意味での競争心がありました。私はそんな二人を観察し、二人の関係が進展するのをドキュメンタリーのように撮影しただけです。

Q:クリステンはセザール賞も受賞し、演技が高く評価されていますが、リハーサルはどれくらい行ったのでしょうか?

アサイヤス監督:私はもともと全くリハーサルを行わないのです。セリフを言うときの自発性がリハーサルによって失われることを恐れています。俳優たちが初めてセリフを言う時には、もう現場のカメラは回っています。もちろん女優たちは、それぞれが自分で稽古をしてくるでしょうが、インプロビゼーションを大事にしています。クリステンはセリフ覚えが良く、その日の朝にセリフを覚えてきていました。

Q:監督はご自身の立場はどのようなものと考えていますか?

アサイヤス監督:私は脚本家でもあるので、監督と脚本家を同一のものだと考えています。自分が書いた脚本で、女優の人間性を探求する事ができますので、彼女たちが私の脚本から何を感じて、どう演じるのだろうかと、とても興味深く見ています。私が心掛けているのは映画は集団芸術であるということです。一方的に指揮するのではなく、共同作業であるので、現場にいる者全員が貢献できるような環境をつくること。俳優がしっかりと呼吸できる現場の環境をつくることも監督にとって大事なことだと思います。

Q:女優さん達皆がハリウッドで活躍していますが、本作のセリフについて、彼女達はどのような反応を示していましたか?

アサイヤス監督:三人ともこの映画がとてもユーモアのある作品だと理解していました。また、全員ハリウッドでの映画の経験があるので、ハリウッドが昔よりさらに産業的な側面を強めて、拘束も多く、自由にクリエイションする余裕がないことを知っています。皆が苦しんだとまでは言わないまでも、その重圧は感じていると思うので、そういったことに対して皮肉な距離をとっていることを楽しんだのではないでしょうか。なかでもクリステンは、映画を巡るメディア産業に斜めの視線をもたらしていることを楽しんでいたようです。

Q:マリアのように年を重ねて孤独を感じる女性に対してはどう思いますか?

アサイヤス監督:人生には様々なチャプターがあって、まさにマリアは大きな変貌の時にあります。女優として自分にはもう演じられない役があるのだということを受け容れることは苦しいことだと思います。女優という仕事は、実生活では感じなくてよい苦しみに直面しなければいけない辛い仕事であると同時に、実生活ではそれを逃れられもするので、マリアにとってはその点が希望にもなるのではないかと思います。

執筆者

Yasuhiro Togawa

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=53779