ミッドシップ、コムストック・グループ配給作品『ベル&セバスチャン』がいよいよ9月19日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショーとなります。

日本で「名犬ジョリィ」としてアニメ化もされたセシル・オーブリーの世界的ベストセラ—を、自然と犬に人生を捧げるニコラ・ヴァニエ監督が戦時中のアルプスを舞台に、より奥深い人間ドラマとして実写映画化。冒険家でもあるヴァニエ監督ならではのアルプスの美しく雄大な景色と、大自然と共に暮らす人間の営みへのあたたかな眼差しがスクリーンを満たします。

この度、ニコラ・ヴァニエ監督のオフィシャルインタビューが到着いたしました




Q:本作の原作「アルプスの犬と少年」のテレビドラマ版にはどのような思い出がありますか?

子どもの頃、あのシリーズに完全に夢中になっていました!当時すでに動物や自然、山が大好きだったので、ドラマはしっかりと心の底に刻まれました。長じて私が犬と自然に人生を捧げたのも、偶然とは言えません。ですから、このプロジェクトのオファーがあった時、私はあのドラマを思い出して、ほとんど怖気づいていました。ですので映画化は挑戦でしたが、それが嫌ではありませんでした。多少なりとも不安でしたがね。かつてテレビドラマに呼び覚まされた強烈な感覚に影響を受けていたので、何としても成功させねばと思いました。

Q:主人公の少年セバスチャンを演じたフェリックスはどのように見つけたのですか。

セバスチャン役には2400通近くの応募がありました。キャスティング・ディレクターも、あれほどの熱狂は見たことがないそうです。そのうち200人を書類選考で選び、カメラテストと演技テストで12人ほどに絞って、そり犬を飼っているヴェルコール山地に連れて行きました。そして候補者が3人に絞られた時点で、私は自分がどの子を希望しているかすぐに分かったのです。一見、他の子のほうが可愛く見えても、何が何でもフェリックスがいいと主張しました。演技経験の有無は私にはどうでもよいことでした。私はフェリックスの個性が気に入ったのです。賢くて勇気のある子ですが、じっくり時間をかけて受け入れてもらうようにしないと、たちまち牡蠣みたいに閉じちゃうんです。人を戸惑わせるような変わったところがある中に、彼ならではの繊細さがありました。

Q:ベルを演じる「役者」を見つけるのは大変でしたか。

まず約百匹の犬が、いくつかの重要な基準に照らし合わせて候補に挙がりました。その中から7〜8匹を選んで調教し、最終的に3匹を残しました。スターとなった雌犬のガーフィールドと、代役の2匹です。犬たちはそれぞれ、動きのあるシーンや静かなシーンに合った性格をしていて、場面によって使い分けました。一方、犬がクローズアップされる時は、全部ガーフィールドです。

Q:ロケハンはどのように行われたのですか。

ロケハンこそ、製作費を大幅に削減できた点なんです!というのも、私が山々を歩き回るのに費やした30年間は、この映画のロケハンをやっているようなものでしたから。なので、撮影したい場所が正確に分かっていました。仏伊国境近くのアルプスに位置するオート=モーリエンヌ・ヴァノワーズの谷です。

Q:撮影で一番難しかったことは何ですか。

乗り越えられないと思ったことは、山中の撮影であれ、犬の扱いであれ、ひとつもありませんでした。一番苦労したのは、子どもの演技指導です。映画の大きな部分が、あの子がこの冒険を最初から最後まで生き切る能力にかかっていました。
最初から信頼はしていたものの、7歳半では何が起こるかわからないので慎重に行いました。一番驚いたのは、私が期待していることをフェリックスが理解する能力でした。演じすぎず、適切な演技の提案をし、常に巧みにやってのける。それが撮影現場の全員に素晴らしいエネルギーを与えてくれました。映画の台本の質と演出以外にプロジェクトの鍵となったのは、まさにフェリックスだったのです。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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