『向日葵の丘−1983年夏』主演・常盤貴子オフィシャルインタビュー
1983年の田舎町、小さな映画館を舞台とした涙なしには見れぬ感動の物語。
主演は、2015年前期のNHK朝の連続テレビ小説「まれ」に主演の母親役で出演するなど活躍中の常盤貴子。国民的女優・田中美里(「あぐり」)、藤田朋子(「ノンちゃんの夢」「渡る世間は鬼ばかり」)の3人をメインに。また、それぞれの若き日の三人を400名を超えるオーディションで決定した芳根京子、藤井武美、百川晴香が好演。さらに、津川雅彦、別所哲也、烏丸せつこ、並樹史朗らベテランが脇を固めた。監督は、大林宣彦の愛弟子である太田隆文。
大林宣彦監督「野のなななのか」、本作と主演作が続く常盤貴子のインタビューが到着。
$red Q:まず脚本を読まれた印象は? $
常盤 いいお話だなあと。大林宣彦監督の映画「野のなななのか」でご一緒した大好きなスタッフさんたちと、またお仕事ができるというのは、とっても楽しそうでワクワクしました。
$red Q:多香子という役を監督とはどんな打ち合わせを? $
常盤 特にどう演じようというお話はせずに、なぜか演劇の話をたくさんしていたのを思いだしますね(笑)。監督も唐組のお芝居がお好きだそうで、紅テントの前で上演前に劇団員の人たちがする入場制限のモノマネとか(笑)、すっごく上手なの!!楽しかったあ。
Q:ストーリーの中では30年前から現代になり、大人になった多香子を演じたわけですが。
常盤 30年という時間で自分がどう変わるか、30年という時間を経た自分だからこそ思い返すことも増えているわけだし。これが若ければ自分自身の積み重ねも少ないし。現在の自分だからこそ、歩んできた記憶が反映されるということはあると思いますね。私は映画の中でどんな演技をしていこうと計算するのではなく、流れに身を任せるタイプなんです。人生と一緒でその時ぶつかる問題に体当たりしていこうと。今回の多香子でもそうなっているといいんですけど。もちろん作品の内容によって変化はしますけども(笑)。
Q:映画のロケ地となった静岡県島田市は初めてですか?
常盤 はい。とても素敵で特別な場所でした。お茶畑の情景とか世界に誇れる場所ですよね。撮休(撮影がなくキャストらが休みになる日)の日に、劇中で使う電車には一人で乗ったけど、撮影の合間にもう少し時間があれば島田市をもっと一人で散策できたのになあ(笑)。自分の知らない場所をぶらぶら探検するのって楽しいし、歩くことでその町の色んなことを知ることができるから、役にも反映できますしね(笑)。でもこれは言い訳で、「完全に個人的興味だ!!」って気づいてもいるんですよ(笑)。
Q:静岡という場所で撮影されたことについては。
常盤 私の両親も静岡出身で、子供の頃からよく訪れていた場所だったので、繋がりを感じます。余談ですけど、別所さんのお父様が私の祖父とお仕事で同じ部の上司と部下という関係だったそうなんです。別所さんのお父様が現場に遊び来てくださった時に、別所さんもその事実を聞かされて、本当に驚きました。みんな不思議な縁で静岡に集まったような気がします。
Q:そんなロケ現場にご自身の撮影がある前に入られていましたが。
常盤 事前に現場を見たかったので。それは作品の内容にもよるんですけど、舞台となる町を知っていた方がいい場合と、そうじゃない場合もあるし、現場でどんな風にこの作品が作りあげられて私の撮影の日があるのか、見ておけると安心できますし。今回は私の若い頃の役(芳根京子)の雰囲気も見ておきたかったんです。彼女がどんな風に笑うのか、どんな癖を持っているのか、特徴を私が演じる未来に繋げていきたいと思っていたので。幸い彼女には特徴がハッキリあったので、自分へどう反映させていくか掴めたような気がしました。あとは映画を観た観客のみなさんに感じてていただきたいです(笑)。
Q:他の俳優さんたちも、自分の撮影がない日に現場にいらしている姿を拝見しました。
常盤 そういう姿を見ると、役者として「こうありたいなあ」と刺激を受けるし、共演する者としてとても誇りに思いますね。田中美里さんも藤田朋子さんもそう。今、そういう風に役作りのために、撮影日より前に現場に入ってくる役者さんって少なくなってるような気がするんですよね。すごく重要なことだと私は思うんです。私は2人が自分と同じタイプの役者さんだと知れただけで信頼してしまいます。今回そんな3人が同級生役だったということも、映画の中での号泣シーンに繋がるんでしょうね。今考えるとなんであんなに泣いたのかさっぱり分からない(笑)。何かの力が働いたとしか思えない時間でした(笑)。それが映画の持つ力なんだなあと。多分、それぞれの俳優たちが自分の役の過去を埋めて現場に入っているから、それを3人が共有していることでしっかりと同じ過去、同じ時間を見ていられたんでしょうね。すごく不思議で、初めての経験でした。
Q:田中美里さん、藤田朋子さん、別所哲也さんらとのコミュニケーションは?
常盤 今回みなさん初めての共演だったんですけど、周波数が合うというんでしょうか。それが私には一番大きかったので撮影現場で不思議な化学反応が起きたんだと思うんです。撮影していて「なんだ、これは?」って、自分でも驚いてしまうこともあったし。俳優としての在り方、現場でのみなさんの居住まいが「好きっ!」て思ったんですね(笑)。そこには太田監督がそういう周波数を持つ俳優たちをキャスティングしているということも大きいと思うんです。こういう映画のこういうお話、こういう役どころならノッてくるであろうというね(笑)。そこに私たちはまんまと乗せられてしまったんじゃないでしょうか(笑)。
執筆者
Yasuhiro Togawa