2013年公開の『陽なたのアオシグレ』で話題を呼んだスタジオコロリドによる劇場最新作『台風のノルダ』が公開。
 スタジオコロリドは、ショートアニメ『フミコの告白』で第14 回文化庁メディア芸術祭優秀賞他数々の賞を受賞した石田祐康(26)をはじめ20代を中心とした新進気鋭のクリエイターが集結するスタジオ。
彼らが前作『陽なたのアオシグレ』以来2年ぶりに世に送り出すのは、とある離島、文化祭前日の中学校を舞台にした少年同士の友情物語だ。
監督に選ばれたのは、スタジオジブリ出身で、『陽なたのアオシグレ』でキャラクター原案デザイン、作画監督を務めた新井陽次郎。初監督としての意気込みなどを聞いてみた。

$red −−−スタジオジブリを経て2012年『陽なたのアオシグレ』に参加までの経緯を教えてください。 $

以前から何度か石田くんとは自主制作の人を介して会うなど交流があって、彼の家に行った事もあり、そこで自主制作で一本のアニメを作る過程などを聞いたりしていました。自分はアニメーターという立場しか経験が無かったのですが、会話をしていくうちに1本の作品を作りたいという気持ちになったんです。
スタジオジブリでアニメーション制作にいる頃から、いつか自分でオリジナルな作品を作ってみたいなというアイデアはありましたとは思っていました。
そんな時に、石田くんから『陽なたのアオシグレ』を一緒にやらないかと誘ってもらいました。石田くんの現場に参加したら面白いだろうなと思ったし、自分のためにもなるだろうなぁとも考えて、『陽なたのアオシグレ』に参加することにしたんです。







−−−『陽なたのアオシグレ』でキャラクター原案デザイン、作画監督を担当し、本作では、逆に石田祐康さんが、キャラクターデザイン・作画監督。年齢が近いという点で、お二人のコンビネーションが影響しあう面、刺激をうけるなポイントなどはありますか?

年齢も同じだし、お互い似てるなぁとか感じるものはありますね。
アニメーション制作の企画から完成までの過程については、石田くんから学んだので、そこはとても刺激になりました。

−−−石田さんは、『陽なたのアオシグレ』公開時のインタビューで、第一線のプロの現場で仕事をしてきた新井さんに学ぶ点は多かったという記事を読んだことはありますが・・・。

スタジオジブリでは丁寧に仕事をするということを学んできたので、そういうところが活かされていたら嬉しいですね。

−−−本作のアイデアは?

スタジオジブリに入った頃から、ストーリーを想像した一枚絵をよく描いていました。
今回の作品に関しても、島にある学校に生徒たちが閉じ込められてしまった群像劇をなんとなくイメージして描いたものがあったんです。
その一枚絵を、プロデューサーからこれはいいんじゃないかと提案されて、私僕とプロデューサーや石田くんなどと一緒にアイデアを出しながら内容を作っていった感じです。
脚本は元々無く、打ち合わせをしながら、絵を起こしたりして、構築していきました。

−−−27分という作品の長さは?

実際の本編尺は23分ほどなんですよ(エンディングも含めると27分)。最初に、劇場公開短編作品を作るという方向性ではじまった企画で、制作していくうちに本当に中で実際に劇場公開が決まったんです。なので、元々決まった尺は無くて、作品の長さは、自分の中では18分の『陽なたのアオシグレ』より長い30分くらいの尺で作りたいと思ってました。
制作を進めていく中でより内容を選んで削っていくうちに、今の27分という長さになりました。、スケジュールがはっきりと決まって来て、今度はそのスケジュール内で、尺や内容を決めていったんです。

−−−台風と一緒に現れた少女と二人のスポーツ少年。キャラクター創りについて

キャラクターもなんとなくイメージはあって、当初から謎の女の子に二人の男の子というのは決まってました。
男の子二人は、石田くんと二人で考えていて、こんなのはどう?と自分がアイデアを出したものを石田くんがまとめた感じですね。ノルダに関しては、石田くんのアイデアですが多く反映されています。

−−−メカニックデザインについて・・・

自分で一度は描いてはみたのですがあまり納得出来ず、他のデザイナーさんに依頼をしてみて、最終的に僕と石田くんでまとめたものですました。本編では描かれていませんが、ノルダが住んでいる星が水っぽい惑星だからという舞台設定に合わせて、海洋生物っぽいものになりました。

−−−ラストの演出は、素晴らしかったですね。「友情」というテーマで関係性を強く見せてますね。

打ち合わせをしてプロデューサーや石田君と打ち合わせを重ねて、ミニ絵コンテを描いて、そこから最終に描きたいシーンを抜き出して、パズルのように組み合わせていったんですが、それをつなげる作業が大変でしたがね。後半は逆に自分ではちょっと詰め込み過ぎたかなぁと思ってます。

−−−背景、台風の雲の動きですが、登場のシーンからすでに何かが起きるような自然ではない動きにも見えました

何か普段とは違う異様な雰囲気が伝わるような動きをつけました。
もっと描いてみたかったなぁと思います。

−−−今後について

今回制作してみて、改めて男の子二人の物語っていいなぁと思いましたので、チャンスがあれば、もういちど一度、男の子二人で新しい企画を考てみたいと思っています。
アニメーターとして力をつけたいと思う一方、監督としてやりきれなかった部分は多くあるので、リベンジしたい思いはありますね。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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